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功績

そして2日後


俺は本陣にいる。

「ここまでは戦線が動きませんでしたが、今日あたりが状況が変わる潮目ですね。マルク殿、例の策を施す準備をお願いします」

「はっ」


「そろそろか、あっちも回復はまだだろう。こっちは回復士はもう大丈夫だ。これで準備は整った。ハンニバル殿、動く時の見極めをお願いします」

「はい。ではタイミングが良い時に仕掛けましょう。もう相手の手は読めましたしね」

「心強い」


「ふふ。私はマルク殿とアルフ殿のご兄弟が心強いですよ。なんせ個の力が突出して高いですからね。戦況が苦しくてもひっくり返せるほどの力を持つ方が味方とは軍師には楽というものです。敵からしたら、嫌でたまらないでしょうがね」


「そうですか。ハンニバル様にそう言われると嬉しいものです」

「ふふふ。では行きましょうか」

「「「はっ」」」


ここ数日は戦況が動かない日々だが、4日目にして、この度の戦はついに大きな局面を迎えそうだ。俺は隊の待機場所に戻ってきた。

「ヤイ、みんなを集めて」

「はっ」


「みんな、聞いて、そろそろあの作戦を行くから準備してね」

「「「「はっ」」」」

「うん、では俺らは俺らへの命令あるまで待機だ」

「「「「はっ」」」」


こうして、俺らは待機する。戦線は今日も開かれた。だがここまでと大きく違うのは王国側の本気度だ。魔族側はまだ、あの策で辛いのかところどころ、統率が取れない。もともと、統率より個の力を重視する魔族側が新たな軍師が入ったから統率を取れていただけで、その指示をうまくできないようにすれば、統率など不可能だ。


徐々に同盟側が押してきた。戦況は徐々に同盟側に傾き始める。こうなると、魔族側は来るはず。


やっぱり来た。魔族側が個人の武力を頼り始めた。強い将軍のようなものが前に出てきた。同盟の各隊は個人の武力に優れた者を前に出して、応戦して行く。これでまた小康状態に入る。そろそろか?


本陣から伝令だ。合図が来た。よし行く。

「第00小隊、合図が出た。出陣」

「「「「おう」」」」

俺らは所定の場所に行く。そして魔族軍の横っ腹に出て、魔法で一撃を当てる。ヤイとリオル先輩、ケビンが前に出て、相手の対応を止め、その間に俺とミカさんが一気に魔族軍の横っ腹から魔法を打ち込む。


トルネードは流石に自軍を巻き込む可能性があるので、サンダーアローの乱れうちを相手の本隊の奥に打ち込んで行く。ミカさんはウォーターアローを乱れ打ちして行く。作戦「感電だ。バカやろー」だ。


ミカさんが先にスピード重視で打ち込んで行く。相手に当たることは狙っていない。なぜなら、少しだけ低いところが魔族軍本隊の奥にある。そこに水を貯めるためだ。そして遅れて俺が一気にサンダーアローを打ち込んで行く。



ハンニバル様にできる事を聞かれ、提案した作戦だ。これは第00小隊で作った策で、これをするためにハンニバル様と状況を作る策を兄上に上申したんだ。


「「「「「「ぎゃあああああああ」」」」」」


魔族の感電による叫び声がする。すると前に出ていた魔族の強者の気が一瞬そっちに向かう。それを同盟軍の強者が見逃さない。そして第00小隊の前に来た連中も同じく気をそっちに向けた。


第00小隊はその隙を見逃さず、5人で前に来た魔族たちを撃破して行く。俺らは一人が十数人くらいを倒す。俺は30人以上を倒した。こっちに来た連中は死んだ。1隊が壊滅したんだろう。


魔族側はかなりのダメージを負う。さらに前線でも魔族の強者が怪我を負う者が続出した。魔族は撤退の音を鳴らす。だが許すはずはない。同盟はそこから魔法を連続で打ち込んで行く。



付与された魔道具を使い、各種の魔法を連続で打ち込んで行く。有角族の協力で、ここ数日の間にどの戦線の部隊がどの属性を弱点としているかを分析して、同盟軍各隊に伝えていた。


俺らも魔法で追撃を食らわす。どんどんと、魔族の者達が倒れて行く。前線の者らが、その者らに留めを指して行く。ある程度の数を殺したところで同盟軍も撤退の音が鳴った。



同盟軍も撤退し、陣地に戻って来た。これ以上追撃すると、同盟もかなりの被害を負う。これ以上の被害を出さない為の撤退だ。それを見極めるのが軍師の腕の見せ所。相手もかなりできるようだ。あれ以上粘っていたら、今回の戦線は完全に同盟側に傾いていた。最悪の状況だけは何とか回避したようだ。


戦況は死体を見るに、同盟側は数十名が死亡して、数百が怪我をしたというところだろう。対して、魔族側は2000ぐらい。魔族側全体の1割ぐらいの被害数だ。怪我はもっといるだろうが。まぁ、1日の戦果などはこんなものだ。数万人が死ぬなど、絵空事だ。物語の中でしか起きない。


それでも1日で数千人を殺したというのはかなりの戦果だ。それに強者の死体もそれなりにあったのはかなりいい結果だった。こっちの策がどハマりしたというところだ。まぁ今回の策はあっちにも使われる可能性があるので、同盟はもちろん対策を考えている。


奇策は自分に向かう事も考えて、初めて良策となる。同盟は明日以降、自軍の陣地側の低い地形の部分に魔法を防ぐ結界の魔道具を持ったものと結界の魔法を使える魔術師を配置する。



俺は本陣に呼ばれた。そのついでにクリス先輩ら、魔族の強者と戦った人らの様子を見て行く。俺の知り合いは怪我はしたが軽いようだ。


それでも同盟側に数十人の死亡者が出た。それは決して軽い命ではない。でも戦争では当たり前なんだ。人が死なない戦争はない。それを悔やんでもしょうがない。それなら戦場に出てこない方がいい。そして戦争はしないことだ。今回は同盟はしなくてはいけない。


魔族が攻めて来たんだ。何もしなければ、弱き者が狙われ、殺されていく。それを黙って見ておくなどあり得ない。ここに来た者は大事な人を守る覚悟を持っている。そんな人が死んだ。それを悲しむのも、悔やむのも違う。


彼らは生きるために戦う事を選んだ。その覚悟を持つ人々だ。その人の冥福を祈るが、今はそれを悔やみ悩む時間ではない。その人らが守りたい人を代わりに守る時間だ。



本陣に着いた。

「第00小隊隊長マルク・フィン・ドンナルナ、呼ばれ、参上しました」


「うむ。入れ」

「はっ」

俺は本陣に入る。


「マルク、まず、よくやった。『感電だ。バカやろー』は大成功だ。これであいつらの強者もかなり死んだし、戦線も崩れる。明日以降はさらに有利に進めるだろう」

「はっ。お褒めいただき、ありがとうございます」


「ああ、今日の第1武功だ」

「ありがたき幸せ」


「うむ。それでな。今日の戦線を有角族の者らに確認させていたところ、一人だけ魔族の大将軍が前線に出て来たそうだ。そいつがかなりの強者で今日だけでそいつに数十名をやられた。明日以降もそいつは出てくると予想される。マルク、お前の第00小隊で対応してもらう。行けるか?」


「はっ、必ずや討ち取って見せましょう」

「頼む。それができれば、此度の戦線は同盟の勝ちとなろう」

「はっ」


こうして、俺らの明日以降の動きは決まった。俺ら第00小隊らしい動きになる。俺らはもともと遊撃の特務部隊だ。少数精鋭の動きやすさ、個々の強さ、特殊任務の得意さが武器だ。


だから、初日は相手の策を最小限にする動き、2日目の策の講じた動き、今日の作戦の先制パンチだ。全て特務だ。そして今回も特務だ。


「マルク、健闘を」

「はっ、同盟に勝利を」

そして、俺は隊の待機場所に向かい、休みをしっかりと取ること、明日の任務を伝えた。


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