誇り
翌日
俺らは訓練を軽めにした後に、王宮魔術研究所の前に来た。馬車は用意されていて、荷物を
乗せて、俺とミカさんは馬車に乗り、ケビンが操者に、ヤイとリオル先輩は馬で護衛していく。警備や荷物などを確認して出発する。
王都を出て1日かけ、ガリシアン領の領都にたどり着く。ガリシアン領の領都は盗みなどの犯罪が例年に比べて最近は多くなっているらしい。ガリシアン領は王都より北にあり、レオサード領と近いためか、領民の心が少し荒れているようだ。俺らも盗みなどに気をつけないといけない。
そして、今日の宿に近づく。すると
「おい、ガキ。てめえ、財布をスリやがったな」
「違う。落ちてたから、届けに来たんだ」
「中身がねえのはどういう事だ」
「違う。俺はやってない」
「あ?嘘をつくな。魔族が」
ああ、有角族の子供が財布を届けたのに、蔑まれているのか。魔族との戦争中だ。こういう事も増えている。
「おい、やめろ」
「あ?てめえ、誰だ?」
「俺は王国騎士団第00小隊の隊長、マルク・フォン・ドンナルナだ」
「あ、あ、新英雄?」
「そう言われている。その子が財布を届けたのだろう。スリは財布を届けに来るなどありえない。そこらに捨てる。その子は盗んでいないだろう」
「な、それは。いや、それはそうとは限らねえだろ。盗んだのに盗んでねえフリするためか
もしれねえだろ?」
「それはない。有角族の人らはそんな事はしない。今の状況でそんな事をすれば、酷い目にあう。お前の考えは間違っている」
俺は殺気を少し出す。
「う、わかったよ。くそ」
ヒソヒソと周りの者が噂している。聴くと、あいつはああやってすぐにいちゃんもんをつけるからなとか、さすが新英雄だとか聞こえる。
「大丈夫か?」
「ええ、助けていただきありがとうございます」
「ああ、こういうのは多いか?」
「はい。魔族と呼ばれ、なす事全てに色々と言われます」
「そうか。すまん」
「なぜ、謝るのです?」
「ああ、王国民の全てがそうではないが君たちを苦しめている」
「そうですか。こちらこそ、同族の者がすみません」
「いや、違うぞ。君は有角族だろ?魔族じゃない」
「え?」
「今、君たちは大変かもしれないが、それは君たちのせいじゃない。それに君たちは過去を間違いとして、魔族ではなく有角族として王国の友になった。国はなくなり、土地も追われ、辛いところだろう。でも間違えるな、君たちが悪い事は何もない。それに魔族ではなく、有角族だ」
「はい」
「じゃあな」
俺らは彼と別れて、宿に行く。ここで今日は泊まる。
この話は第223話調査の前に入れる予定でしたが、入れ忘れていることに気づいたので7月11日に挿し込みました。




