無茶の結果
6日後
うん?ここはどこだ。あ、セレステの宿のベットだ。天井に見覚えがある。そうか生きていたか。痛い。身体中がダメだ、力を入れると痛い。それに重い。うん?ミカさん?
「あ、ミカさん」
「あ、あ、あ、ごめんなさい」
「大丈夫。俺はどういう状況?」
「はい。ええっと、あ、隊長は6日も寝てました」
「6日も?」
「ええ、心配しました。でもよかった」
「そう、ずっと看病してくれたの?」
「え、あ、はい」
「そうか。ありがとう」
「はい」
そうか、ずっとか。迷惑をかけてしまった。ミカさんの目に涙が浮かんでいる。
ドアがノックされる。
「あら、目を覚ましたのね。よかったわ」
「マル君、大丈夫?」
「おい、マルク、大丈夫か?」
メル姉が俺を強く抱きしめる。
「ええ、メル姉、痛いです。カリウス義兄上、ご心配をおかけしました。母上も体は大丈夫ですか?」
「ええ、一日中寝てたら大丈夫よ」
「寿命は?」
「それも大丈夫よ。自分のことを心配なさい。私と同じ症状が出ているわ」
「え?」
「力を使いすぎたの。マナ線が壊れたのね」
「あれ?母上の症状はわからないと」
「それはマルクの理論でわかるようになったの。でも・・・直す方法はないの」
「そうですか。自分で直してみせます。これくらいのこと、俺の人生ではいつものことです」
「・・・そうね」
母上が心配そうに俺を見つめる。他のみんなも。まぁ、途中でマナ線が壊れるような感じはあったから、これくらいは予想通りだ。あれはヤバイな。二度と使うのはよそう。
しかし、直す方法か?まぁ、マナ線を感じてみるか。あぁこれか。俺はマナ線を隅々までゆっくりと探っていく。あ、ここにマナ線の裂け目が、これが漏れを作っているのか。
俺はマナ線の裂け目を治す。うん?難しいなぁ。ちょっとは治ったけど、これは治すのに時間がかかりそうだ。
「ええと、治せそうです」
母上らが驚きの表情で俺を見ている。
「え?」
「何を言っているの?」
「ですから、治せると思います。俺の場合かもしれませんが、マナ線が裂けているので、マナが溜まらないみたいです。ですからマナ線を縫っていくような感覚でしょうか?」
「そう、マルクの言っていることはよくわからないわ」
「え?そうですか。マナ線が血管みたいになっているというのが魔法理論にあるのは覚えていますか?それを考えれば、マナ線が管状となっていると推測できます。だから縫っていくというのは理論的です」
「ミカちゃん、わかるの?」
えっ?わかるの?という顔をする母上らと、え?違います?という顔をするミカさん。俺もミカさんの感覚に近いが、この世界では血管という概念自体がいまいちなんだ。外科手術がない世界だし、医療も薬と魔法に頼っている世界だからだ。
「すごいわね。マルクの理論はほとんどの人が全てを理解できないのよ。感覚でわかるから、それを実施しているだけよ」
「私がリネア様を見てみましょうか?」
「そうね。もしかしたら治るかしら」
「はい、もしかしたら」
「後で頼むわ」
この後、1週間は辺境伯領にいた。俺が体を動かせる状況ではないので、馬車での長旅は無理というところだ。その間、第00小隊はガイス師匠とガッソさんに稽古をつけてもらっていた。かなり無茶な方法だったらしく、帰りは皆ボロボロだった。
俺は数ヶ月の休みとなった。他の隊員も1週間が休みで、俺がいない間は父上の預かりで、ヤイが隊長代理、リオル先輩が副長代理となった。




