特務騎士小隊
俺は先月から、騎士になった。俺の仕事は小隊長だが、仕事内容は元勇者ミカ・イトウの監視だ。部下はヤイ1人だ。ヤイが俺の部下になると知った時には驚いた。
俺とヤイは騎士団の宿舎を出て、2人でミカさんのところに行く。
ヤイは遠くから、俺は近くからミカさんを監視する。ミカさんには俺が監視役だということは伝えてある。
「やあ、ミカさん、おはよう」
「おはようございます。マルク様」
「今日は、シグルソン教官のところで訓練かな?」
「はい」
「じゃあ行きましょうか。ご同行します」
「お願いします」
そしてシグルソン教官がいる学院に向かう。
シグルソン教官とミカさんは王都に戻って1ヶ月ほどした時に俺が仲介して会った。
その時は
「初めまして、ミカ・イトウと言います。元勇者です。今は王国でお世話になっております」
「そうか、俺はシグルソンだ。何か用か?」
「はい。実は帝国にいる時に騎士ラカシさんにお世話になりました。ラカシさんが助けてくれたおかげでこちらに来ることができました。ラカシさんが最後にシグルソンさんを頼れと言っていたので、お会いしたいと思って、マルク様にお願いしたところです」
「そうか、ラカシか」
「はい、ラカシさんは、私がよくしてくれる理由を尋ねた時は、『昔ついていた将軍に言われたんだ。いつも命を、仲間を大事にしろ。お前の命も、仲間の命も軽くない』と言われたからとおっしゃっておられました。ですからラカシさんの事を謝りたく、そしてシグルソンさんに感謝したいと思いまして」
「ふむ。一つ言う。謝るな。ラカシのした事が間違っているとなる。これはそこの教え子であるマルクに言われた事だが、俺が謝れば、俺が間違っていると思えば、俺の教え子も間違っていることになる。だから自身を誇りに思ってくださいとな。それで俺は考えを変えた」
「・・・」
「だから、君も謝るな。それではラカシのした事が意味がないみたいに思える。ラカシはラカシで思いを持ち、君を助けたのだ。それはきっと何かの意味ある事になる。だから自分が生きている事を悔やむな、謝るな。ラカシのおかげで生き残ったという思いを生きることにぶつけ、頑張ってくれ。それがラカシのためだ」
「・・・はい」
「ふむ。ラカシか。懐かしい。あいつは俺の隊で一番弱かったが、生きることに一番強い気持ちを持っていた。そして、人生不遇だった男だ。それが君を。きっと君に未来を見たのかもな。帝国はもうダメだ。聖国もな。だから君を助ける事が、何か意味があると思ったんだろう」
「・・・」
「まあ、君の人生のために何かできるなら助けよう、何でも言ってくれ」
「では、剣を教えてください。シグルソンさんはレイピアの達人だと聞いています。私にレイピアを」
「それはラカシが?」
「はい、ラカシさんに教えられました」
「わかった。風と土の曜日に学院にいる。その日はここに来るといい」
「はい」
そして、時は進み今日。
シグルソン教官の教えを請いにミカさんは学院に行く。さらに王宮が学院に要請をして、臨時学院生として、半年間だけ、学院でレア先生から王国の歴史や習慣を習っているため、午後はレア先生の補習だ。
「失礼します」
「「「「おはようございます」」」」
実践戦闘研究会の現役生がいる。もう卒業して、もう少しで三年が経つくらいであるため、知っているのはリンゼルとリアら三年生ぐらいだが、今日はマリアしかいない。
「やあ、マリア、おはよう」
「おはようございます。マルク先輩」
「ああ、今日もよろしくね」
「はい」
ミカさんが教えを請いている間、俺は後輩の指導をしながら、ミカさんを見守る。もう監視はいいと思うが、命令だ。
そしてミカさんはシグルソン教官の指導を受ける。この世界で生きる覚悟を決めたようで、訓練に熱が入る。
俺は模擬戦をしながら、後輩らの指導をしていく。
「基礎はできている。でもそれを生かせるほど、経験がない。多くの者、できれば力の近い者と戦い、力を伸ばせ」
「はい」
また一人にアドバイスをして行く。
「よし、基礎の踏み込みはできてきた。それを生かすんだ。地の力をしっかり剣に伝えろ」
「はい」
次はマリアだ。
「マリア、動きは良くなった。獣人族国家の時より、いい戦い方だ。でも、冷静に。まだ挑発に乗るところはある。さっきもフェイントで挑発したら、それに乗ってきた。それを減らせ。そして、逆に自分でも上手く相手の気をそらしたり、相手を挑発するような動きを入れ、相手をコントロールしろ」
「はい」
マリアには死の覚悟はいらない。獣人族はそういうのを本能的に知っているようだ。
こうして後輩たちを見ていく。そして、休憩に入る。午後、ミカさんは臨時学院生として、授業を受けにいく。俺は後ろでそれを見守る。その前にシグルソン教官から部屋に呼ばれた。
「ふむ。マルク、ミカ、報告がある。実はな、儂は来年の4月より騎士団の顧問になる事が決まった」
「え?」
「そうなんですか?」
「ああ、それでミカの指導は来年より騎士宿舎の近くで行うことになる。今までは家族のことがあったが、それも無くなった」
「そうですか」
確かシグルソン教官は奥さんと王国に来たはず、そして奥さんの調子が悪いとかで週2日しか学院には来ないと聞いていた。一度だけ会った事がある。シグルソン教官の顔付きが変わったと感謝された。
「もしや、奥様が」
「ああ、その通りだ。最後に言われた、『貴方は騎士です。私のそばにいるため復帰しないのでしょう。でしたら、私が亡くなった後は騎士に戻ってください。マルク君に言われたのでしょう。自身の生き方に誇りを持てと。貴方が誇りを持てるのは騎士である時です』とな」
「そうですか」
「ああ。まぁ、湿っぽいのはあいつが好まん。だからこれで終わりだ」
「この部はどうなりますか?」
「ふん、部の心配か?まあ大丈夫だ。後任はゼルだ」
「え?」
「知らなかったか。家には帰ってないのか?」
「いえ、先週帰りましたが」
「そうか。あいつのことだ。決まったら話すとかだろう。なんせ俺が決めたのは1週間前だからな。その前にあいつには話が行っているとは思うがな」
「そうですか」
「あいつも、俺と同じで、1週間に2日ならと受けるようだ」
「はぁあ。まあ、心配をかけないようにという配慮でしょう」
「だろうな」
「わざわざ教えていただき、ありがとうございます」
そして、俺とミカさんはシグルソン教官の部屋を出た。そして、食堂で食事をして、午後のレア先生の授業を見守る。今日は歴史だ。
「はい、では先週の復習です。王国の初代国王は?」
「アルサレス・ティン・レオナルク陛下です」
「2代目陛下は?」
「アルファレス・ティン・レオナルク陛下です」
「では初代陛下と2代目陛下のした政策を答えてください」
「はい・・・・」
と授業が続いていく。ミカさんは優秀で、すでにアルクード大帝国も歴史を終わり、王国の歴史という所に入っており、すでに先々代の陛下の時期にさしかかろうかという所だ。帝国の歴史は習っており、後は王国の歴史を終え、獣人族国家の歴史と大戦、そしてここ最近を習えば終わりだ。
他の教科は王国独特の言いましを含め言葉も完全に覚え、計算はもちろんでき、地理も覚えるのが早く、魔法理論も理解が早かった。そのため、もう歴史と礼儀作法だけだ。帝国と王国は礼儀作法と踊りの作法が少し異なる。それをマスターすればいい。
「はい。今日はここまでです」
「ありがとうございました。いつもご迷惑を」
「いいえ、マルク君並みに早いので、大変じゃないくらい素晴らしい生徒です。」
「マルク様は優秀だったのですか?」
「ええ、ここまでを10歳には終わってましたし、学院を首席卒業です」
「やはり、優秀なのですね。武術も強く、本当に英雄です」
「ええ、新英雄ですよ」
「お二人ともお巫山戯はそのくらいに」
「心から言っているんですが」
「私もですね」
と話がずれそうなので、
「そろそろ、お時間ですから帰りませんと」
「はい」
そして、学院を出る。
ヤイが合流する。
「隊長、今日も問題なしだ」
「ああ、こっちも問題ない」
「いつも思いますが、仕事以外では友達として接するのに、仕事中は上下関係を保つのはよくできますね?」
「それが騎士です。騎士は騎士でいる時は命令系統をはっきりとしなければなりません。ですが、人間です。騎士を離れた時は友人で居たいのです」
「私は苦労してますけど」
「え、ヤイ。それは初めて聞いたよ」
「隊長、それくらいは気づいていただきたいです」
「ごめん」
2人が笑う。俺はこういうところは苦手だ。
「「ぷっ。ははは」」
「あれ?何で笑われてるのかな?」
「ごめんなさい。これが皆さんが言うマルク様の天然ですね」
「そうかな?」
「そうです」
「そうそう。隊長はこういう天然な所が愛される所なんだよ。同時にぷっ」
「ヤイ、何かな?」
「いやあ」
そして、俺らは帰った。ミカさんは監視対象のため、王宮内にある騎士宿舎の女性宿舎に住んでいる。
俺らは宿舎で別れ、俺とヤイは訓練に向かう。俺とヤイは朝と夕方に騎士の仕事の一つである鍛錬を入れている。そして、俺らはチームの行動や、ここの訓練をしていく。そして2時間ほどで終わった。
俺らは飯を食べて、寝た。




