騎士になるために。そして出会い
国都を出発して2週間後
俺は王都に戻ってきた。まずは会館に行き、移動願いを出す。そして王都の冒険者や副支部長に会い、挨拶を済ませて、家に帰った
母上やリリア、ゼルが出迎えてくれた。
「ただいま戻りました」
「お帰りなさい。マルク」
「母上、お待ちいただき、ありがとうございます」
「ふふ。成長した顔をしているわ、もう大人ね」
「そうですか。嬉しいです」
「マルク様、お帰りなさいませ」
「ああ、リリア。獣人族国家はハーフを受け入れていくことになった。一度リリアも行ってみたらいい」
「そうですか。一度行ってみたいと思います」
「そうか。その時はお供しよう」
「はい」
リリアが嬉しそうだ。
「ふふふ」
「何ですか?母上」
「何でもないわ」
母上がよくわからないが笑っている。よくわからない。
「そうですか。お風呂に入りたいが、リリア、準備は大丈夫だろうか?」
「はい。ご用意します。少しお待ちください」
「ああ」
俺は少しして、風呂に入る。家で風呂にのんびり入るのはいいな。
そして、夕食時
「父上、お帰りなさいませ」
「ああ、ただいま。マルクも無事帰ってきたな」
「はい。色々とありましたが、無事帰りました」
「そうか、獣人族国家では何があった?」
それから俺は獣人族国家であったことを話して行った。
「そうか。それは大変だったな。どこも王の承継というのは大変だ」
「はい。そう思いました」
「ふむ。しかし、地竜にキングがいるとはな。ゼル、お前は聞いたことがあったか?」
父上がうーんと唸りながら、ゼルに聞いた。
「いいえ。獣人族国家には行ったことがありますし、地竜も戦いましたが、聞いたことはありませんね。マルク様は珍しいことに会う方です」
「ああ、それは言えるかもな。トラブルメーカーとも言える」
「父上、それは酷いです」
「ふははは」
そして、俺は獣人族国家で決めた事を
「父上、母上、一つ、相談があります」
「何だ?」
「何かしら?」
二人がこっちにほぼ同時に言う。
「はい。前に陛下より、騎士の話をいただきましたが、お受けしようと思います。一度、師匠のところで、槍術を磨いた折に、王都の戻りましたら、騎士をお受けしようと思います。いかがでしょうか?」
「そうか。ならば話しておこう」
「ええ、そうね。マルクが自分で決めた道よ。間違えたり、折れていたりしなければ、応援するわ」
「ああ、そうだな」
「ありがとうございます」
「マルク様、おめでとうございます」
ゼルが声をかけてくれて、その後アイナらメイドたちが喜んでくれた。
「「「「「おめでとうございます」」」」」
「みんな、ありがとう」
こうして、俺は師匠の元でもう一度鍛えなおして、騎士になることとした。
それから、王都で挨拶回りをした。またアランに泣かれたが、今度はすぐ戻るし、次は王都にずっといると言うと、わかってくれた。もうアランも3歳、俺も17歳になる。アランも成長している。
そして、王都を出て、辺境伯領セレステへ。
セレステに着いてから、師匠の元で槍術を毎日訓練した。セレステに着いて、サンゼルと多く模擬戦をしたが、これはかなり苦戦した。同世代で武術においてはサンゼルが最も強いと思う。俺は武術という基礎ではもうそろそろ勝てなくなるかもしれない。経験や戦い方で勝っている状態になるだろう。
「サンゼル、強いね」
「そう言ってもらえて嬉しいが、まだマルクとの差を感じる。マルクに追いつけるようにここで頑張るさ」
「そうか、サンゼルには武術なら勝てない日がすぐに来そうだ。負けてられないな」
「ああ、いつかはそうなる。待っていろ」
「ああ」
そして、俺はケビンとも勝負をした。槍術ではケビンが同世代で一番強いと思う。まだ負けないが、俺よりも基礎がしっかりとしている。最近、俺はスキルに頼りすぎだったと思う。一から槍術を訓練しよう。基礎を忘れるものは、必ず弱くなる。小手先では限界がくる。
俺は、セレステで三ヶ月を過ごし、一から自分を見つめなおして、訓練する。そして師匠と多くの模擬戦をした。まだ槍術だけでは勝てないが、最後の方はかなりいい勝負をできるようになった。またガッソさんとも模擬戦を繰り返し、こちらも武術だけでは勝てない。だがいい勝負はできるようになった。自分の成長を感じた。そして俺はセレステを後にして、王都に戻る事になった。
まずは師匠に挨拶をする。
「師匠、三ヶ月ありがとうございました」
「ああ、マルク、おめえは強え。だがな、おめえの強さは努力によって磨かれる。それを忘れるな。おめえの場合は力が強すぎる。それを使いこなすにはめちゃくちゃな努力が必要だ。それを忘れたら、おめえは弱え。わかったな?」
「ああ、師匠」
「よし、騎士として頑張ってこい」
ついで、ガッソさん。
「ガッソさん、この三ヶ月、ありがとうございました。いい経験をできました」
「ああ、お前の潜在能力はカズキと匹敵する。それを磨け。お前の場合は磨けば磨くほど強くなる。そこのドワーフよりは強い。俺には負けるが。だから頑張れ」
「てめえに負けたことはねえぞ」
ガッソさんの言葉に、師匠が横槍を入れてくる。
「うるさい、ヒゲモジャ」
「てめえ。アホエルフが」
また、いつも仲良し喧嘩が始まる。
俺は師匠らの喧嘩を無視してサンゼルに声をかける。
「マルク、俺もいつか王都に戻る。その時は一緒に戦場にて頑張ろう。このご時世だ。いつかお前の元で戦う。その時まで弱くなるなよ。俺の目標はお前に勝つことだ。お前が弱くなればつまらん」
「ああ、サンゼル、待っている。まあ、サンゼルには負けることはない」
「ふん」
ケビンと挨拶して、ここを出て行く。
「マルク先輩、俺もここで強くなったら、王都に戻ります。その時はマルク先輩の元へ行きます。一緒に戦って、強くなって、そして夢を叶えますので」
「ああ。待っている。ケビン、まずは師匠の元で強くなってこい」
「はい」
それから、俺はセレステを出る。ここから王都に戻り、騎士になって、更に強くなって、俺はこの国の為に頑張る。
俺は騎士になるため王都に戻る。その前にルイン様に挨拶に行こうと考えて、領都オルガに向かった。オルガに向かう途中で、要塞の近くを通るので、要塞にも寄ることにした。
要塞に着くと、騒がしかった。俺は門でアカードさんに用があり、お会いしたい旨を警備の方に伝えると、警備の責任者が俺を知っていて、アカードさんに話を通してくれた。
「アカードさん、お久しぶりです」
「マルク様、お久しぶりです。今日はどのようなご用件で?」
「はい。セレステでガイス師匠の指導を受けておりまして、それも終え、王都に帰るところです。途中、ルイン様にご挨拶をと思い、領都オルガに向かうので、途中にあるこちらにてアカードさんに騎士になるご報告を自身でしたいと思い、訪問しました」
「おお、騎士になられるのですか?」
「はい」
アカードさんは嬉しそうに祝いの言葉をくれた。
「それは素晴らしい。マルク様が騎士になられれば、国民の希望となりましょう」
「そう言っていただけると嬉しいです。ありがとうございます」
「そうですか、マルク様が、ラルク様と同じ道を。マルク様には常々。騎士になっていただきたいと思っておりました。ドンナルナ家に新たな英雄が生まれることは辺境伯領の民にとっては嬉しいことです」
そこにドアがノックされる。
「失礼します。将軍、目を覚ましました」
「おい、今はマルク様と話し中だ」
とアカードさんのお怒りの言葉の後、伝令がアカードさんに耳打ちをする。
「そうか」
「すみません。お忙しいようなので、これで失礼します」
伝令の使者が出て行った後で俺の方を向き直したアカードさんは、
「申し訳ありません。あ、これからオルガに行かれるのですよね?」
「ええ、そうです」
何故か、これからのことを聞いてきた。俺がそうと答えるとさらに
「では、それを少し遅らせることはできますでしょうか?」
「ええ、可能ですが、どうされました?」
「ええ、実は、聖国から不法入国した者がおりまして、その者の護衛でオルガまでついて来てもらうことは可能でしょうか?」
「はい」
「では、まずはこちらに」
ということで、要塞の収容施設に行く。すると女性がいる。日本人?俺は一室にいる女性を監視するための部屋から彼女を見た。そしてアカードさんに尋ねる。
「この方は?」
「昨日、帝国との国境の警備の者が見つけました。行き倒れかと思います。ただ、帝国側からの入国は認めてないのですが、この容姿だと」
「勇者ですか?」
「ええ。そう思いまして、それでオルガに連れて行き、ルイン様のご判断をと思いまして」
「そうですか。その前に話を聞くというところですか?」
「ええ、それでリネア様からお話をお聞きしているであろうマルク様にもと」
「アカードさんは母上の事を知っているのですか?」
「ええ、ドンナルナ家の事を将軍として知っておくようにと、ルイン様からお聞きしました」
「そうですか。わかりました。では一緒に」
「はっ」
そして、勇者の女性はお腹が空いていたのだろう。ご飯を食べている。
「どうぞ、そのままでお話をお聞かせください」
「はい」
「では何故、王国に?」
「はい。聖国で召喚されて・・・戦場に行きました。それが辛く。・・・それに私のスキルは使えないので・・・酷い目にあいました。それで、暴行にあいそうになった時に・・・ついてくれていた帝国騎士が・・・王国に逃げろと・・・彼は・・・」
彼女はそう言うと、泣き出した。泣き止むのを待つ。
「おほん、辛い経験をされたのですね。それで王国に来たというのはわかりました。ではどちらからいらっしゃったのでしょう?」
「戦場から近い、エルフ領の・・・。場所は細かくはわかりません。とにかく南に行って、多くの種族がいる国に来て、そこから西に行き、王国との国境に行けると。山を越えたくらいまでは覚えていますが・・・」
そうか、北の山を越えたか?魔獣とも出会ったろうに。大変な旅だ。本人の言う通りなら。
「そうですか。わかりました。で、これからどうしたいのです?」
「はい。王国で暮らしたいです。難しいとは解っていますが」
「わかりました。その件については、私ではわかりません。領主や宰相閣下のご判断になります。まあ、悪くても王宮内で監視となるのではと思います。貴方の言うことが本当ならば」
「はい」
「では、これから、領都に移送し、領主様とお会いいただきます。それで判断となりますので、後程、また来ます。ご飯を食べ終わりましたら、移動のご準備をお願いします」
「わかりました」
嘘を言っているとは思えないが、聖国の関連は気をつけないと。だから俺を護衛にと言ったのだろう。部屋を出る。
そこでアカードさんに問われる。
「マルク様、どうでしたか?」
「はい。嘘を言っているとは思えません。勇者様の事はガイス師匠にもお聞きしましたが、だいたい真っ直ぐな方が多いとお聞きします。ドンナルナ家初代カズキ様も真っ直ぐで嘘がお嫌いだとか。シズル様も」
「ええ、そう聞いていますね」
「はい。そういう教育なのではと思います。また勇者様の世界は平和だとお聞きもしておりますゆえ、そういう教育が必要なのだろうと思います」
「ええ」
「これらから考えると、嘘を言っていない可能性も高いですが、聖国は洗脳などしないとは限らないので、まずは注意を怠らずに護送して、ルイン様の判断の下、王都に移送とするのがよいかと」
「やはり、そうですか。リネア様にも話していただくことが必要ですかね?」
「ええ、そう思います。そして最終判断は陛下と宰相閣下にしていただくのが良いかと」
「そうですか」
「ええ、私も嘘を見抜けるような魔道具を作れないか、試してみます」
「はい。では、護衛にマルク様について来てもらうということでいいでしょうか?」
「はい」
そして、俺は護衛として、他の兵と共に彼女の移送をして行く。
彼女と同じ馬車に乗ったので、話をする。
「すみません。同乗させていただきます。マルク・フィン・ドンナルナと申します。領都まで護衛としてついて行きますので、よろしくお願いします」
「はい。私は伊藤美佳、いえ、ミカ・イトウと言います。よろしくお願い申し上げます」
「ミカ・イトウ様ですね。イトウがファミリーネームですか?」
「はい」
「そうですか。ではイトウ様とお呼びしてるよろしいですか?」
「いえ、ミカとお呼びください」
「わかりました。ミカ様」
「様はいらないです」
「そうですか。では、ミカさんとお呼びします。私はマルクとお呼びください」
「わかりました。マルク様」
「まあ、様はいらないですが、呼びづらいでしょうから、そのままでいいです」
「あの〜、マルク様は兵士ではないと思いますが、何故今回はご一緒に?」
「ああ、こちらの領に槍の師匠がおりまして、そちらに師事を受けに来て、帰りに領主様にご挨拶をしに行く途中で要塞に寄りました。そこで、私も領主様とは親戚ですので、ついて来て欲しいと頼まれましたので、冒険者として護衛の任を受けました」
「マルク様は貴族様では?」
「ええ、貴族です。ただ、私は特殊で、名誉騎士という称号をもらった冒険者としているのです。ですので騎士で貴族ですが、同時に冒険者であります」
「そうですか」
ちょっと、不思議そうな目で俺を見ている。
「ええっと、数点ご質問してもよろしいですか?」
「はい」
「ミカさんのお国はどういったところでしょうか?」
「私の国ですか?」
「はい。冒険者をしていますと、知らぬ国に行くのが楽しみでして」
「あぁ。海外が気になられる。海外志向の強い方なのですね」
日本人らしい考え方だ。王国では国外又は外国という。国同士が海を隔ててないから。
「海外?海外志向?」
「あぁ、すみません。海外とは他国の事を指します。海の外という言葉で、私の国は海に囲まれているので、他国は海の外という考えになります」
「はあ、地続きではなく、海を隔てているのですか。それでは他国を海の外というのも頷けます」
「で、志向というのは気になるという意味です」
「ほう。それでは私は海外志向です」
「ふ。そうですね。マルク様は柔軟な考えの方ですね」
「まあ、色々とありましたので」
「そうですか」
「ええ。で、ミカさんの国は?」
「ああ、すみません。日本という国で、世界は平和でした。そのため、戦争とは無縁で、多くの人が幸せに暮らしています」
「そうですか。この世界とは違い、平和なのですね。私たちも平和を目指したいですね」
「ふ。あまりこの世界の人らしくない考えですね」
「そうですか。この国は平和を求める国ですよ。聖国や帝国、魔族・エルフのせいで中々平和になりませんが」
「そうなのですか」
「ええ、もう少しミカさんの国、日本でしたか?その話を聞いても?」
「はい。日本では多くの方が教育を受けれます。そして科学というのが発展して、色々な物が便利です。例えば、空を飛ぶ飛行機というのがあります」
「飛行機?それは気になります」
「飛行機とは空を飛ぶ、うーん箱と言っていいでしょうか?」
「箱が飛ぶ?どのように?魔法ですか?」
「いいえ、魔法は日本にはありません」
「魔法がない。ではどのように?」
飛行機のことは少しは知っているが、乗ったことも、見たこともない。ミカさんが何か知って入ればいいな。
「はい。ガソリンという燃料を燃やして、スピードを出して、その力を上に向かうようにすることで、風の力を受け、揚力という力で飛びます」
「揚力?」
「揚力とは、物が風を受ける時に得る浮かび上がる力です。それを受けれるように飛行機には鳥のような羽がついています」
「おお、鳥のように羽を。それで風を受けると揚力が生まれる。いい研究材料が生まれました」
「研究?」
不思議そうな表情だ。
「ああ、私は魔道具の開発や魔法の開発研究もしております」
「そうなのですか」
ミカさんは何だか不思議そうな顔をする。まぁ、冒険者が研究者というのはあんまりいないしな。
「ふふ。ミカさんの国は素晴らしい国ですね。国のことはわかりました。ではもう少し質問させていただきます」
「はい」
「召喚された時はどのように?」
「はい・・・学校の帰りで」
「学校?」
学校帰りに転移。ありきたりな物語だな。
「ああ、この世界では学院ですね。学院の帰りにバスを待っていました。バスというのは馬車みたいな物で、私の国では皆が乗合いし、一台に乗るのです」
「乗り合い馬車のような物ですかね」
「そうだと思います。で、そのバスを待っている途中で光が足元に出ました。そして、私同様に待っていた4人と共にこちらに来ました」
「その4人は勇者様ですね。他の方とは前から知り合いでしたか?」
「いえ、でもどうして?」
少し、嫌そうな、不思議そうな表情をされる。他の勇者とは仲が良くないのだろう。
「あぁ。知り合いならば心配なされているのではと思いまして。でも同郷の方ですから、心配なされていましょう?」
「多分していないと思います。彼らは知り合いだったみたいで、同じ学院でしたが、私だけが他人でした。ですから、少々嫌がらせも受けたのです」
「そうですか。ご家族のいる日本から来て、知り合いもいない聖国で、ご苦労されたのですね」
「いえ、日本には家族はいません。小さい頃に亡くしました」
「これは申し訳ない。孤児院のようなところにいらっしゃったのでしょう。辛い事を思い出させ、すみません」
あっちでは養護施設育ちか。
「いえ、まぁ、マルク様の言う通り、教会が運営している孤児院で育ちました。ですから、あっちには家族はいません」
「そうですか。申し訳ありません」
「いえ、気にせず。マルク様とお話しするのは楽しいです。マルク様は面白い方ですね」
「そうですか。そう言っていただき有難いですね。まぁ貴族らしくないとはよく言われますね」
「ふふ。やはりそうですか」
納得という表情だ。俺はやっぱり貴族らしくないか。
「ええ、もう少し質問します。召喚されてからどのように過ごしていたのでしょうか?」
「帝国に長く居ました。私の剣の指導をされたのが・・・・逃してくれた騎士様でした」
「そうですか、辛いお話を思い出させてしまい、すみません」
「・・・いいえ。どうせ、後程聞かれるかと思いますから」
「ええ、聞くことになります。聖国から来た方を王国では警戒しております。ミカさんを特別にというのではないです。1年前の年初に聖国に酷いことされましたから。ミカさんがいたエルフ領は多分、ダークエルフの領でしょう。その聖国についているダークエルフに色々と国を混乱させられました。それで聖国の者には警戒心が強いのです」
「ダークエルフ?」
「ええ、エルフには、もともとこの世界にいたエルフと、天神が作ったダークエルフがいます。ダークエルフは天神が唯一作った種族で、そいつらが聖国を牛耳っております」
「あ、それで、私が会ったエルフと枢機卿様が似ていたのですね」
「ええ、枢機卿はダークエルフです。これは秘密なので、他所では話さないようお願いします」
「そんな事を私に」
「ええ、ミカさんは信じられると思いましたので」
「そうですか。騎士様にも同じ事を言われました」
「そうですか。その騎士はどんな方ですか?」
「素晴らしい方です。優しく、真面目で、命を大事にされていました。そういえば、その騎士様が言ったのですが、昔、仕えていた将軍が王国にいる。そちらを頼れと」
「将軍?」
「はい。何でも、昔あった大戦で付いた将軍が部下の命を大事にする素晴らしい方で、その方は戦争に反対して、国を追われ、亡命したとか。その将軍にいつも命を、仲間を大事にしろ。お前の命も、仲間の命も軽くないと言われたと、それを今も大事にしているとおっしゃっていました」
シグルソン教官の話に似ている。もしや。
「その将軍の名はシグルソンでは?」
「はい。そう聞きました」
「そうですか。私の学院時代の恩師です。王都にいらっしゃいます」
「そうですか。お会いしたいです」
「嫌疑が晴れれば、大丈夫でしょう。協力します」
「はい。ありがとうございます」
そんな話をして、宿場町についた。俺らは宿場町で休憩して、翌日また領都に向け出発する。
今日も馬車に同乗する。
「今日も同乗します。よろしくお願いします」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
「ええ」
「あの、今日は私から聞きたい事があります」
「そうですか?何でしょうか?」
尋ねると、何だか気まずそうに答えてくれた。
「はい。マルク様は天神様を天神と言われていますが、信仰はしていないのでしょうか?」
「ええ、しておりません。というよりはこの国はしてない方が多いです。昨日も言いましたが、1年前に聖国に大変な目に遭わされ、さらにその前からも散々迷惑をかけられましたから。また元々、王国は自然教と言い、自然に神や精霊がいて、その方々が我々の生活を守っていただけると考える人も多いので、3年ほど前に国教から天神教を外し、さらに1年前にほとんどの者が信じなくなりましたね。私も信じておりません」
「そうですか。自然教。私の国と似ています。私は神を信じておりますが」
「そうですか。我々も信じております。天神以外を」
「そうなのですね。ありがとうございます」
何だか、こっちを信頼したという表情だ。多分、天神を嫌っているのだろう。
「私も一つ聞いても?」
「はい」
「ミカさんはスキルが使えないと言われましたが、どのようなスキルでしょうか?」
「はい。私のスキルは剣術、回復魔法、神託、奇跡、祈願です」
「剣術と回復魔法、神託はわかりますが、奇跡と祈願は知らないスキルですね」
「ええ、聖国でも言われました」
「そうですか。でも、それだけあれば持て囃しそうですが?」
「ええ、最初は聖女と言われましたが、神託が使えないのです」
「え?神託が」
「はい。それが故に・・・」
「そうですか。それはお辛かったでしょう。こちらは多分、ルイン様や王都でも聞かれるでしょう。お辛い時は言ってください」
「ありがとうございます」
辛そうな表情だ。これは天神嫌いの原因かな。
「まあ、私も誰も知らないスキル持ちなので、なにかとお助けできるかもしれません」
「誰も知らないスキル」
「ええ、『飲み込む』と言います」
「『飲み込む』ですか?」
「それだけが私のスキルです」
「え?」
「驚かれますよね。皆が知っている事なので、隠せないですから言いました」
「そうなのですか」
「ええ、最初は皆に無能と言われました。でも今では多くの方に評価をいただいています」
「あの〜、それはどのような?」
「うーん、何と言っていいでしょうか。何でも飲み込んで、何でも力に変えられるスキルと言うのが正しいですかね。皆のスキルも飲み込んで自身の力にします」
「コピーですか。すごい、万能です。神にも等しいような」
「ええ、そう言ってくださる方も最近はいます。ですが、最初は皆に何もできないスキルと言われました」
「そうですか。それでも護衛を任される程に、今は強いのでは?」
「ええ、努力をしました。それは血を吐くほど」
「そうですか。すごいです」
目をウルウルさせて見てくれる。アランみたいだな。
「最初は何もわからないスキルですから、スキルに頼らない方法を探しました。同時にスキルを試していきました。何ができて、何ができないか。たまたま、家族に愛されたおかげで、助けてもらえ、友や師にも恵まれたおかげで今に至るというところです」
「そうですか。私も」
「ええ、スキルを理解されることはできましょう。もしよければ、助けになりましょう」
「はい。よろしくお願いします」
「ええ」
そして、俺らは領都オルガについた。
彼女は宿に入り、俺も同じ宿に泊まり、彼女に待機させて、俺はルイン様、ライル様と会う。そして、これまでの経緯や彼女と話をして聞いた事などを話して行く。それと
「以上になります。それと、ルイン様、ライル様、私も騎士になる事を決めました。私事ですが、今回ここに来たのはその報告です。まあ、その途中で今回のことに巻き込まれました」
「そうか。騎士になるか。これはめでたいね」
「ええ。父上。新英雄が騎士に、国にとって喜ばしいこと。民の笑顔も戻りましょう」
「そうだろうね」
「では、ルイン様、私はこれで」
「ああ、マルク、多分、彼女は王都に移送するから、そっちも護衛してね。これ、今回の護衛料と王都まで護衛料だよ」
「わかりました。乗りました船、最後までお付き合いします」
「ああ、ライルも一緒に行くから、アカードも。だから頼むね」
「はい」
そして、ライル様とルイン様とアカードさんが再度、ミカさんに質問して行く。俺が聞いたことと変わらない答えで、まあ、大丈夫だろうとなった。
そして、俺らは王都を目指す。途中でライル様が俺の事をバラした。
「え?マルクは私の再従叔父で、この国の新英雄と言われるこの国の最強である、すごい人だよ。魔法理論を作って、魔獣の氾濫を納めて、獣人族国家ではガウラン陛下暗殺を阻止した。ああ、口に出したら、すごいな。私も尊敬して来た。マルク様と言おう」
「ライル様、おふざけを」
「ははは。まあ、でも成したことがすごいのは本当だよ」
「そうなのですか」
またミカさんは目をキラキラさせる。ライル様は褒めすぎだと思う。
「まあ、マルクは功績を誇る方じゃないから、自分では言わないよね」
「ええ、そういうのは好きじゃないです」
「らしいな。変わらないね。新英雄。本当に最近は英雄らしい活躍が多いのに、マルクは変わらないよ」
「ライル様、新英雄はやめてください。苦手です」
「ふふ。こういうところが変わっているんだ。貴族らしくないでしょう?」
「ふふふ。そうですね」
心から笑っているようだ。心細いだろうに。まぁ彼女が笑えるならいいか。―
「まあ、ミカさんも魔法を学ぶといいよ。マルクの魔法理論では皆が魔法を使えるよ。マナが少ないとキツイけど、それも魔道具で解決したしね。マルクが」
「何だか、お話の中の人みたいです」
「そう、そうなんだよ。マルクはまさに本の中の英雄だよ」
と話してをしながら、帰った。特に問題らしい、問題はなかった。
そして王都着き、2人を王宮に連れていき、俺は別れて、家に帰った。
これで冒険者編は終わりです。来週より騎士編に入ります。物語は動き出します。




