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新王太子、新騎士団長の誕生

翌日


今日は武闘会の最終日だ。次期騎士団長と王太子殿下が決まる。次期騎士団長はガイアスか副騎士団長、王太子はマリアか第2王子だ。陛下からしたら、どっちもいいということらしく。楽しみなようだ。横でニコニコしている。


そんな中、騎士団長候補の戦いが始まる。俺らはガイアスを応援するが、先日の試合を見る限りはいい勝負だ。いや、かなり副騎士団長はやる。ガードが固く、マリアで抜けるかという巧さを持つ。


どちらが勝つかと言われれば、副騎士団長の方が可能性が高い。9対1ぐらいで副騎士団長だ。そう思える。ガイアスは攻撃は教えてきたが。守りはまだ教えられなかった。攻撃においては魔闘を使いこなすが、守りは難しい。ガイアスの攻撃が早くに決まれば勝てるかという試合だ。


2人は試合開始の合図で対峙し、視線をお互いに外さない。ここは集中を切らした方が負ける。そう思える。ガイアスが先に仕掛け、勝ちを得られるかだ。


試合は動かない。お互いに相手の一挙手一投足に集中する。その集中力の高さに観客も飲み込まれ、息を忘れる。1分くらい睨み合う。一瞬、観客が息を飲む音がする。


お互いに相手から目線を外さない。いいぞ。ガイアス。お前のスタミナは並外れたところがある。集中力の持続性も高い。待って、自分の一番いい時に攻撃しろ。


副騎士団長が痺れを切らして攻撃に出た。ガイアス、今だ、行け。そしてそれに合わす様にガイアスは攻撃に行く。カウンターが決まるか、相手の一撃が先か。これならガイアスの攻撃が当たる。


そう思った瞬間に副騎士団長は右足を踏み込み、止まる。フェイントか。


俺も読めなかった。俺すら冷静じゃなかった様だ。ガイアスはカウンターをカウンターで返された。副騎士団長の強烈な左の一撃がカウンターとなり、ガイアスの顎を撃ち抜く。観客はその凄まじさに顔を背ける。


ゴキッと凄まじい音でガイアスが倒れる。しかし、副騎士団長も膝をついた。ガイアスが微かに右の拳を副騎士団長の顎に入れた様だ。掠る程度だが、脳を揺らすには充分な威力があった。よくやった。


しかし、副騎士団長はなんとか立ち上がる。ガイアスは起き上がれない。結果、ガイアスは負けた。でもいい試合だった。観客から惜しみない拍手が来る。それは会場を埋め尽くす凄まじい音になる。陛下もニコニコとしながら、拍手をしている。



そして、次のマリア対第2王子も一戦だ。2人の一戦は観客には見えない領域のスピード戦となった。速い。いかにも獣人族らしい一戦だ。俺は見えるが、陛下やシエル会長殿を除き、他の者には音しか聞こえない。第2王子はここまで、その力を隠してきた様だ。


陛下すら驚いている。こういう強かさはいい王になるのに重要だ。王国国王であられるラインバッハ陛下も、獣人族国家国王たるガウル陛下も持ち合わせた強かさだ。どこか見抜けない強さだ。


そして、目に見えないスピード戦もはゴフっという音と共に終わりを告げた。そこには拳の上に乗るマリアがいた。勝ったのは第2王子殿下ガンソ殿下だ。


ガンソ殿下は第2王子として、陛下の執務を手伝い、人柄も評価され、仕事振りも良い。そして、今回見せた強さと強かさだ。これなら十分に王たり得る。いい国王の誕生となろう。



そして観客からは盛大な拍手が来る。新たな王の誕生を祝うかの様に拍手は鳴り止まない。王国も獣人族国家も次の王が決まった。あとはいつ世代交代となるかだ。今は世情が良くない。もう少し先になるだろう。


それから表彰式、新王太子殿下の祝賀会を終え、王宮ではパーティーが開催され、ガイアスとガンソ殿下の話で持ちきりとなった。ガイアスは副騎士団長より10ほど若く18になったばかり。それも含めて、獣人族国家の未来は明るいと思われる。



そして、ガンソ殿下がこちらにいらっしゃった。

「此度は我が獣人族国家にいらっしゃってくださり、ありがとうございます。マルク殿」

「いえ、訪問させていただき、ありがとうございます」


「いえいえ。マルク殿は我が獣人族国家にとって重要な方、マルク殿のおかげでどれだけ獣人族国家ガウランに良い未来が見えたか。魔法を使える者が出てきたことで、医療や技術革新において多大な影響があります。これから獣人族国家ガウランも王国に追いつける様に栄えましょう。そして、王国と獣人族国家ガウランはお互いに切磋琢磨する良き友人となりましょう。これも全てマルク殿のおかげ・・・・」


「話が長い」

「あ、シエル先生」


「ガンソ、お前の悪いところは話が長いところだ。まあ、今回はマリア次第だが、お前が優勝するとは思っていたし、王としての器もいい。まあ妥当だろう。だが、話が長い」

「すみません」


「ふふ。ガンソ殿下は王国の王太子、エドワード殿下と気が合いそうですね」

「そうですか。エドワードとは小さい頃に会い、仲はいいですよ」

「やはり」


ガンソ殿下は不思議そうな表情だが、シエル殿はそうだろうと納得の表情のようだ。


「しかし、マルク殿のおかげで獣人族国家の変革もできそうです。ハーフの者らも国民として受け入れられる様に頑張りますよ」

「そうですか。きっと殿下ならば成し遂げられましょう」

「ああ」


「ただ、逃げた彼の方のこと、お気をつけてください」

「ああ、バカ兄貴が申し訳ない」

「いえ」


そして話題のガイアスが来た。

「マルク師匠、シエル師匠、ありがとうございます」

「いいよ、俺が教えたのは地の力を使うだけだよ。シエル会長殿の教えとガイアスが折れずに頑張って来たからだよ」


「いいえ、マルク師匠に習ったことが大きかったのです」

「そうじゃの。マルク殿がきちんと教えたことで、私が教えが生きることをできた。そうだわ」


「そうです。マルク師匠には感謝してもしきれません。俺がシエル師匠に出会えたのも、全ては1人悩んでた俺を導いてくれたからです」

「そうか。いつも思うけど。ガイアスは俺より年上だし、ガウラン族で、王家の親戚なんでしょう?敬語はいいよ」


「いいえ、マルク師匠。私にとって、師匠はまさに光です。無能と呼ばれ、誰にも無視されて来た時、一度心が折れかけました。その時に聴こえて来たのは魔法理論でした。

そして、それを成したのが同じ無能と呼ばれ、誰からも軽視されて来たマルク師匠でした。俺の中でマルク師匠は道しるべだったのです。師匠を尊敬しています。敬愛しています。ですから敬語は当たり前です」


何だか、ここに来る前に言われたな、リリアにも言われた。そうか俺は俺のように皆に蔑まれ悩んだり、苦しんだりする人にとっての道しるべか。


もう、俺だけの道じゃないのかな。俺が行く道が他の人の道しるべになる。そしてその後に続く者が新たな誰かの道しるべになる。そうやって続いていくのか。俺は道を間違えられないな。



「そうか、ありがとう」

「はい。こちらこそ、ありがとうございます」


「いい話だな。マルク殿は皆の道しるべか」

「陛下」


ガイアスが頭を下げる。



「ああ、いい。ガイアス、これからお前の進む道も誰かが見る。父親がいなくなったことで、お前も辛いことがあっただろう。それでもお前はまっすぐ折れなかった。

それがマルク殿おかげだとしたら、同じく、お前の行動でこれから同じような者が出てくるだろう。家族を亡くし、辛い人生を送る者にとって、お前が道しるべになる。それを忘れるな」


「はい」

ガイアスはいい笑顔だ。


「マルク殿、この度はありがとうございました」

「いいえ、何も」


「いや、リシリアは何も被害を受けずに済んだ。国のトップにバカがならなくてよかった」

「そうですか。それは陛下、殿下の弛まぬ努力ではないですか。私がしたのは少しの事です」

「そうか。そうかもな」

シエル会長がそう纏め、そして、俺はその後も陛下と話し合い、祝賀会は終わった。


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