研究結果
1ヶ月後
俺はついに鍵の魔道具を発明した。今日、カリムさんが完成品を見せてくれると連絡が来た。その間にアレスらと訓練したりしていた。アレスらは夏休みに入ったようだ。冒険者の方は王都では魔獣が弱すぎて、あまり活動していない。そろそろ、獣人族国家に行こう。
そして朝から訓練して、カリム魔道具屋に。
「カリムさん、例の魔道具を見せてください」
「はい。こちらです。こっちが鍵で、こっちが錠になります」
「使ってみても?」
「はい」
俺は使ってみる。すると俺では使えない。カリムさんの登録のみになっている。
「カリムさん、いいですね。ちゃんと登録した個人しか使えないです」
「ええ、苦労しましたが、この『パーソナルチェック』は素晴らしいです。世紀の大発明です」
「はい。これがあれば大事な物を盗まれることはないでしょう。多くの人にとって有益です」
「ええ、マルク様の言う通り、これは多くの人が喜びます。私たち商人や職人も、王宮の方々も、研究者も皆が喜ぶものとなりましょう」
「ええ」
「これから、王宮に商品をお見せに行きますので、よろしくお願いします。マルク様よりご説明をお願いします」
「わかりました」
そして俺とカリムさんは二人で王宮に行く。説明をお聞きになられるのは、宰相のガルド様、軍務大臣のコーネリアス様、そして騎士団長の父上に、研究所所長のメル姉とエルカ姉様だ。
王宮の執務室に着いた。殿下もいっらしゃる。はあ。面白い事をお知りになったので、いらっしゃったというところだろう。殿下らしい。
「やあ、マルク君、私も来たよ」
「殿下、お久しぶりでございます。お機嫌麗しゅうようで、何よりでございます」
「ああ、私には帰還の挨拶に来てくれないマルク君」
「申し訳ありません。お忙しい殿下のお時間をお取りしては申し訳ないと思いまして」
「そう。陛下もお忙しいけど」
「殿下は今、陛下の後を継ぐため、執務に集中なされているとお聞きしております。ですからこそ、殿下にはそちらにご集中なされる事を選んでいただけるよう言われました」
「そうか。まあ、いいか。今日は期待しているよ」
「はっ」
「うむ。マルク、説明を」
「はっ、ガルド様」
そして、俺は説明を始まる。
「まず、商品は『パーソナルチェック』と言います。こちらが商品です。この商品は鍵と錠よりなる品です」
「ほう。これが鍵なのか?」
「はい。こちらはまだ鍵になりません。こちらにマナを流します。カリムさん」
「はい」
カリムさんがマナを流すと鍵の形に変わる。
「「「おお」」」
「そして、これを錠に挿して回すと開きます」
「うむ。これはすごいが、これでは個人様にならないのではないか?皆が開けられるだろう」
「ガルド様、では、ガルド様がしてみてください」
カリムさんが錠を閉めて、鍵と錠をガルド様に渡す。ガルド様は鍵にマナを込め、錠に挿仕込む。
「うむ。うん、鍵が入らないぞ」
「ありがとうございます。ガルド様。これは錠に結界が張っております。その結界が他人のマナを弾くようになっております。故に、鍵はマナによって形を変えますが、錠がそのマナを弾き、錠に触れると鍵の形を元の棒に戻してしまいます」
「なんと、結界を」
「おお、マルク君、これは凄いよ。そうか、個人を識別するのにマナを使う。ただし、識別するのではなく、特定のマナ以外を結界で弾く。そうすれば鍵の形が結界内で変わり、錠に入らない。マナを使わずにだと錠に合う形に鍵の形が変わらないから、鍵は入らない。登録した者以外はマナを鍵に流し込んでも、錠を使用できないね。これは凄いよ」
「殿下、興奮しすぎ」
「ああ、ごめんよ。エルカ」
「ん」
「殿下のおっしゃられた通りです。この錠の登録をすれば、それ以外の者は錠に鍵が入る前にマナを弾かれ、鍵の形が変わります。ですので使えません。さらにマナも鍵の一部になっておりますので、マナを使わずに開ける事もできません」
「そうか。これは何人で使える?」
「はい。申し訳ありませんが多くて3人までしか登録できません。それ以上になると結界が作用しなくなります」
「ふむ。3人ならば充分か?」
「ええ、そうですね。一人だと使い用が難しいですが、3人ならば使い勝手がありますね」
「はい。ですが、特注品になります。カリムさんら職人が皆様にお会いして、それぞれ用に作りますので、大量生産には向きません。ただ、カインさんという王宮魔法研究所の研究員がシズル様がお作りになった位階チェッカーを調べておりますので、そちらの仕組みがわかれば、もっと良いものになろうかと」
「ふむ。そうか。ではメル、エルカ、その者に予算をつける。頑張らせよ」
「はい。ガルド様」
殿下はパーソナルチェックをまじまじと見ている。よほどお気に入りなされたのだろう。殿下も研究者気質なところがある。
「最後に、こちらは壊れづらいですが、これを取り付ける箱は壊される危険があります。それは防ぎ様がありません」
「うむ。それはもともと、しょうがない事だ。中身だけを抜かれるよりマシだ」
「ええ、中身だけを抜かれるのが一番困りますね。外を壊すとなると、盗みに入るのは難しい。音がしますからね。それに箱を頑丈にすればいい話ですね。王宮から情報を盗むのは至難の技になりましょう。素晴らしい研究です。素晴らしい商品です。いやあ。良いものを作ってくださった」
コーネリアス様のお褒めの言葉で、商品説明は終わった。カリムさんは殿下がいらっしゃることで、緊張していた。ガルド様らに会うのも、何度か経験してもまだ慣れていないらしいが、殿下までいらっしゃることでガチガチだった。
王宮の門へ、メル姉とエルカ姉様が見送りについて来てくれる。その前にカリムさんが
「はあ。マルク様は殿下の前でも変わりませんね」
「ああ、殿下とは何度もお会いしているから」
「そうですか。殿下がおられた時には心臓が飛び出るかと思いました」
「ははは。天下のカリム魔道具屋、天下の魔道具協会長が?」
「茶化さないでください。たかが、街の魔道具屋でしたから」
そして、
「じゃあ、メル姉とエルカ姉様、明日からカリムさんらが随時、王宮でパーソナルチェックの個人登録をしていくから、研究所もそう遠くない時にはできるよ」
「うん。マル君、お疲れ様。いい物だよ。きっと我先にとみんな欲しがるわ」
「ん、そう」
「はは。よかったです。では失礼します。メル姉、エルカ姉様」
そして、俺は王宮から帰った。家に着き、訓練をして、夕食時に父上と話して眠りについた。




