ついに勝つ②
翌日
俺は学院に行き手続きをして、シグルソン教官のところに行った。
「失礼します。マルクです」
「ああ、入れ」
「はい」
シグルソン教官は笑った。
「久しぶりだな。マルク」
「はい。お久しぶりです」
「ああ、聞いたぞ。辺境伯領で大活躍だったらしいな」
「はあ、まあ、師匠に助けられての結果です」
「師匠か、誰だ?」
「はい。ガイスさんです」
「ガイスさんか。あの人の訓練は無茶苦茶だろ?」
「はい。死にそうになりました」
「そうか、まあ、マルクには必要だろう。俺らは戦争があったが、お前にはないからな。生き死にを経験したらマルクは強くなると思っていたが、いい経験をしたな」
「はい」
「ふむ。顔つきが変わったな。もう勝てんかもな」
「どうでしょうか」
「ふん、謙遜を」
「はあ」
またシグルソン教官はニヤリと笑う。
「教え子が強く、大きくなるのは嬉しいぞ。俺も良い年だ。もう50を超えたからな」
「若いですよ」
「そうか。まあ、良い時に比べると大分落ちた。マルクは今も強くなっているだろう。しかもガイスさんに習ったんだ。強くなる」
「ええ、ガイス師匠の教えは厳しかったですが、強くなったと思います」
「そうか、ではやってみるか?」
「はい」
そして、シグルソン教官と模擬戦をする。シグルソン教官はレイピアを持った。本気だ。俺も強くなったことを示したい。槍は訓練用を持つ。
俺とシグルソン教官は対峙する。ゆっくりと間合いを詰めるシグルソン教官。俺は間合いに関係なく、突きに行く。そこからどんどんと突いて、攻撃をしていく。もう間合いを待って受け身にならない。相手の出方を待たない。それが師匠から学んだ。自分の間合いにできるように攻撃をする。それでいいと。
そしてシグルソン教官を追い詰めていく。俺はついに、突きを入れた。
「負けだ。もう、敵わないな。やはり、マルクが一番早く俺を超えたか」
「ありがとうございます」
「ああ、いい試合ができた。俺もうれしいぞ」
「はい」
そして、俺はシグルソン教官のところを出て、レア先生とミリア先生のところへ。
「お久しぶりです。レア先生、ミリア先生」
「ふ。お久しぶりです。マルク君」
「マルクに先生って言われると変、お久しぶり、マルク」
「ふふ、そうでしょう。ミリア先生」
「はい」
「ふ。ミリア先輩が先生とは不思議です」
「そう、あの日々で見つけた夢だから」
「叶って良かったですね」
「ええ」
「シグルソン先生には会ってきたの?」
「ええ、さっき」
「そう、氾濫の話があった時は心配してたわ」
「そうですか。まあ、大丈夫でした。むしろ、その前に師匠のガイスさんの扱きで死にそうになりました」
「ガイスさんの。あの有名なガイスさんよね?」
「はい。皆さん知っているのですね?」
「ええ、生きる伝説だからね」
「そうですか」
「ゼルさんとの話はね。ミリア先生も知っていますよね?」
「はい」
「そうなんですか。私は会って初めて知りました」
「ふふふふ。マルクは世間知らず」
「ああ、ミリア先輩らしさを感じました。言葉足らずなのが先輩らしい」
「失礼だよ。マルク」
「そうね。マルク君らしいわ」
「そう。レア先生の言う通り。マルクは反省した方が良い。」
「すみません」
「「はははは」」」
こうして、レア先生とミリア先輩と話した。その後に
「ロドリス先生、お久しぶりです」
「ええ、マルク君の活躍は聞いていますよ」
「そうですか、ロドリス先生にまで聞こえているとは嬉しいです」
「ふふ。一番すごいと思った生徒の活躍は、誇らしいものです」
「私がですか?レオナの方がすごいですが」
「レオナさんもすごいです。軍師としては教え子で一番です。ですが、生徒として一番驚いたのはマルク君です。戦術で私が思いつかないことをするのも、戦術の枠にはまらないのも、やる事に驚かされるのも、生徒でありながら尊敬させられるのも全て一番はマルク君です。あそこまで私を認めてくれた生徒、尊敬してくれた生徒はマルク君だけです」
「そうですか。単純にロドリス先生がすごいと思いました」
「本当に一番いい生徒でしたね」
「ふふ。先生に褒められると嬉しいです」
「そうですか、マルク君、君は君のままで進みなさい。あなたの道は多分英雄と言われるでしょう。でも、それを恥じる事も、有頂天になる事もダメです。あなたは今のあなたが一番です。少なくとも実践戦闘研究会、魔術詠唱研究会の顧問は皆、あなたを尊敬し、誇りに思います。私も、シグルソン先生も、レアリア先生も。そして後輩も先輩もね。貴方は出会った全ての希望で、誇りです。頑張ってください」
こうして先生方に挨拶して、実践戦闘研究会に顔を出して、シグルソン教官と一緒に部活の指導役をして帰った。




