別れと修行
二日後
俺もサンゼルも昨日は起きなかったようだ。朝、食堂で会うと、昨日は起きなかったという話で盛り上がった。最近、サンゼルは俺の宿に入っている。
サンゼルの実力がAランクであるのは支部では有名で、ランクアップ試験をここでできないので、Bランクということもあり、特別にAランク扱いになり、俺と同じ宿に泊まれるようになった。ここはBランク以下には高く貸し、Aランクにはそれなりで貸すことになっているので、俺も師匠もここにいる。静かでいい宿だ。
そして会館に二人で行く。サンゼルとは死線を何度も一緒に超えたせいで、もう数十年は一緒にいる仲のように気が合う。あの地獄を超えたものにしかわからない絆がある。
そして会館に行くと視線がすごい。俺らを見る者が多く、面倒だ。師匠はまだ来てないようだ。俺とサンゼルは食堂でのんびりしている。正直言えば俺らはまだ本調子ではない。それでもここでは強い。
そして、師匠が来た。
「よお、マルク、サンゼル、一昨日はお疲れだろ?」
「「ああ」」
「まあ、予定以上の奴が出ちまったからな。あれは俺も予想してねえ。それを倒して森から戻って来たんだ。まぁ合格だ」
「「よし」」
「それでな、これからだが、サンゼル、お前は卒業だ。俺は槍しか教えられねえ。だからおめえにこれから必要なのは剣の師匠だ。そうだな。商業都市に行け。
あそこに剣バカがいる。ガッソという。こいつはバカだが剣の腕前は最強だ。おめえはもうトップ20には入る。正直、ここの冒険者共で勝てるのは俺かマルクだけだ。
まあ、マルクは今のおめえぐれえのレベルは超えている。死を意識した経験があれば、ここに来た当初から、そのトップ10と肩を並べれるレベルにいた。持ってる物が俺やてめえより上だ。
妬むなよ。才能なんてのは不平等だ。でもな、努力は嘘をつかねえ。てめえは剣の技術を磨けば、一流に辿り着く。その才能はある。それを忘れずに行け」
「ああ」
「んで、マルク、おめえはもう少し上を目指す。もっときついことをする。グランドベアキングぐらいは一人で倒せるレベルに連れて行く。特に槍だ。スキルはここんところの死線で上手く使えるようになったろ?でも槍はまだ上にいかせる。おめえの槍はまだ甘い。所々に無駄な力がある。それが威力を減らしちまってる」
「ああ」
「だからな、ここからは俺が死ぬほど扱いてやる。覚悟しろ」
「ああ」
「よし、マルクは回復に二日ぐらいは必要だろう。明後日まで休め。サンゼルは商業都市国家群に行く準備をしろ」
「「ああ」」
そして、俺とサンゼルはグランドベアキングの買取報酬をもらい、宿に帰った。
それから、二日後、サンゼルは街を出て、商業都市国家群に向かった。俺は師匠に毎日扱きという模擬戦に入った。そこで殺されかけ、気を失い、起こされ、殺されかけ、気を失い、起こされる。というのを繰り返して行く毎日になった。
週一回の依頼が唯一の癒しというほどの日々を1ヶ月過ごした。地獄を通り越し、訓練をしたくないとすら思ったのは初めてだ。本当にこのジジイはバカなのかと何回か思ったが、その度にいつもより厳しくなるので諦めていた。
ただ、何回かはいい攻撃をでき、師匠を悶絶させ合格をもらい、最近一度だけ師匠に勝った。




