試練②
そろそろ、目的地に着く。あ、あそこか。おい。
「マルク、あれは熊の魔獣だな。ただ」
「ああ、普通のじゃない。あれはグランドベアキングだ。しかもご丁寧に後ろの蜂蜜を守ってやがる。あれを取って来いってことか?」
熊のキング種は3種類いるらしい。それでグランドとつく。他はレッド、ゴールドとキングの前に着く奴がいるがこの森にはグランド種しかいない。
グランドは地面と強いことを表し、土魔法と風属性で、茶色の熊だ。この森では最強種だ。大鳥の魔獣と並びヤバイ奴だ。グランドキングベアの方が格上だが。
「そうだろうな。死ぬかもな」
「ああ、これは本気も本気で倒せるかだ。サンゼル、調子は大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だが、奴が相手だと厳しいな。少し戻って、回復しとこう」
「ああ、そうしよう」
俺らはまだグランドベアキングに気づかれてないので、少し戻りもう一度休憩する。先にサンゼルが休み、俺が警戒する。その間、俺は結界を張って、魔獣を近づけない。こんなところで力を使えば、あいつ相手には死にに行くようなものだ。
そして、俺の休憩中に数匹の蜂の魔獣がきたが、蜂の魔獣は数十匹いて始めて怖い魔獣のため、すぐに倒して、サンゼルを起こさないようにした。
そしてサンゼルが起きてきたので、俺も少しだけ休んだ。俺はそんなに消耗してないので1時間ほど寝て、起きた。そしてグランドベアキングに挑む。俺は学院生一年時代に熊の魔獣とあったが、あの時は近づけば死ぬと思った。特にスキルは使えなかったし。
例え、スキルを使えてもかなりに激戦で死なないにしても大怪我を負っていたと思う。今回の相手はその何十倍も強い。でも俺もその時とは比べるレベルじゃない。明らかに強くなった。今度は殺す。
俺らは奴の前後両面から行く。幸い、奴は一匹で行動している。これが番ならまずは倒せない。俺とサンゼルは互いに協力しながら一撃を繰り出しては離脱を行う。俺から始めた。奴の懐に切り上げを入れる。スピードは大したことはない。ただ、切り上げが全く歯が立たない。おいおい。無傷かよ、硬すぎるだろ。
今度はサンゼルが入れる。それも無傷だ。どうやって倒せばいいんだ。師匠なら一撃でいけるのかもしれない。だが、俺はまだ無理だ。一撃とか。これがトップ10と俺らの差か。
俺らは何度も入れるが、無理だ。くそ、本気を出すか。でも帰りは厳しくなる。
「マルク、俺が時間を作る。お前は本気でいけ。そのあとは俺がお前を運ぶ」
「わかった」
それしかないか。くそ、まだ未熟だ。ここで未熟さを感じてる暇はないが、見事に感じさせられた。師匠の試験らしい。
俺は一気に武闘オーラから硬化、疾駆、アクセラレーション、剛力を入れ、そして例の技を入れる。俺の体が金色に輝く。奴はサンゼルに向けていた注意を俺に向ける。そこをサンゼルが攻撃を入れて、注意を引くが、虫を払うかのように手ではたく。
サンゼルが吹っ飛んだ。剣で何とか防いでいるがダメージはあるようだ。回復薬を飲み、今度は本気の一撃をグランドベアキングにいれた。
これは奴もうっとしいと思ったかのか、一瞬だけ、気が削がれた。
行く。俺は再度疾駆をかける。最近は師匠に疾駆を超え、瞬動と言えるとも言われた速さで一気に突く。瞬動は初代ドンナルナの必殺だったらしい。俺は完全に人の入れるスピード域を超えたところで突きに入る。
そこにさらにアクセラレーションを入れて、思考加速と動きの加速をする。奴の喉を背中側から一刺しする。奴の首に槍が刺さるが浅い、奴は死なない。
俺の方を向き直して、思い一撃を入れてきた。俺は硬化で体を守る。だがその一撃は俺の体の中を突き抜け、臓器が壊れるかというほどもダメージを加える。
俺は何とかギリギリで死は免れたが体を起き上がらそうとして、血を吐く。奴は俺を仕留めようとこっちに気を削いだ。
そこにサンゼル一気に近づき、俺の槍をサンゼルがさらに深く入るように剛力と武闘オーラで押す。そして槍が深く刺さり奴が死んだ。
「マルク、大丈夫か?」
「ああ、なんとか、蜂蜜を取って移動しよう」
「ああ、行こう」
蜂蜜を取って、俺らは移動して休みを取った。その日は俺が長めに休憩して、終わった。
4日目
俺もサンゼルも何とか回復して、動けるようになった。だが初日のようにはいかない。かなりダメージが残っている。しょうがないので、俺たちは少しずつ進む。
すると魔獣の群れが近づいてきている。
猿の魔獣の群れか。いつもなら余裕だが、今日はきつめだ。でも避けていけなさそうだ。もう気づかれた。
「行くか、サンゼル」
「ああ、行くしかないだろうな」
俺とサンゼルは猿の群れと対峙する。こいつらは何せ頭がいい。そして連携がうまい。いやらしいので、セレステの冒険者にも苦手とする連中も多い。セレステの冒険者なら倒せるレベルだが。
猿は弱っている俺を狙い、攻撃してくる。俺はそれを避けながら奴らの注意を引く。奴らは特製の弓、冒険者から奪った剣などを使い、攻撃する。スキルはないがそれなりの攻撃をしてくる。
そして、何より蹴りが面倒だ。奴らの蹴りは衝撃波を飛ばしてくる。武闘オーラの『飛』みたいなことをしてくる。冒険者には蹴撃と呼ばれる技だ。
これが厄介だ。威力がある。弓で牽制して、避けたところを集団で剣で攻撃、それも避けると蹴撃がくる。
それを何とか避けて行く。いつもなら避けながら、一撃を放ち一匹ずつ倒すか、魔法で一網打尽にするが、今の俺はそれができない。ここでそれをやると、入り口にたどり着けない。
そのため、サンゼルが一匹ずつ倒して行く。サンゼルはここのところの師匠の扱きで武闘オーラの露までと、気功を飛ばせるようになり、中距離攻撃や遠距離攻撃もできるようになった。それで数匹を殺して行く。
まだ6匹ほどいる。これはきついな。サンゼルが殺して行く。俺はその間に一匹を殺す。カウンターで一撃を入れておいた。そしてサンゼルが残りを全て倒した。
「きついな」
「ああ、もうかなり消耗している」
「ああ、期限までに戻るなら、ここからは魔獣に会いたくないくらいだ」
「ああ、そうだな」
そして、進む。どんどんと進む。蜂の魔獣が二匹や猪の魔獣一匹など簡単なやつばかりで楽だった。それでも体はしんどいので、厳しい道のりとなった。かなり来たところで俺らは休んだ。
こうして、帰りは半分以上を進み、四日目を終わった。
5日目
今日中に帰る。そのためにはかなり進む必要がある。俺らは休憩を終えるとすぐに進んで行く。どんどんと進み、森の出口付近まで来た。しかし、奴がいた。虎だ。しかも二匹も。
ああ、死ぬかもしれない。本気で覚悟をする。そこから二人で一気に虎に攻撃を加える。俺は武闘オーラを惜しみもなく使う。もう限界まで行く。虎の眉間に突く。当たったがいつもの威力はない。
最後の力を振り絞り、俺は武闘オーラをもう一度込め、虎の眉間に刺さった槍に手で正拳突きをする。すると槍は虎の眉間に深く刺さり、虎の命を奪った。
槍はついに壊れて、持ち手部分が粉々になった。他の魔獣にあったら死ぬ。そう思った。サンゼルは苦労しながらもなんとか首を切り落としたようだ。
そして、その後はなんとか魔獣を避け、森を出た。なんとか試験を突破した
「よお、小僧共、取って来たか?」
「ああ、サンゼル、あれ」
「ああ、これだろ?師匠」
「おお、いいじゃねえか。そうだよ。その蜂蜜だ。きつかったろ?蜂の大群は数百はいるはずだ」
「何言ってんだ?師匠」
「あ?」
「蜂じゃねえ。グランドベアキングだ」
「ああ、あれは死ぬと思ったぞ」
「何言ってんだ?グランドベアキングだ?そんなのがいたら、俺もこの試験はしねえ。グランドベアキングは俺なら倒せるぐらいだぞ。」
「いや、マルク」
「ああ。これだよ。師匠」
俺はマジックバックの中のグランドベアキングの死骸を出した。
「おい、マジか。お前らだけで倒したのか?」
「ああ、死ぬと思ったよ。もう動けない」
「こいつを倒して、森のあそこから戻って来たのか?」
「ああ、だからそう言っている。なあ、マルク」
「ああ、だからもう動けない。師匠負ぶって帰ってくれ」
「ああ」
そして、グランドベアキングの死骸を持ち帰り、会館で出すと大騒ぎになった。グランドベアキングの死骸、しかも首に一突きだけの最高の状態で入って来たと会館や街の商人が大騒ぎになった。
俺とサンゼルは報酬は後日に算定して渡すというので、宿に帰った。明後日に師匠から合格後のことを聞くことになった。もう休みたい。
そして、宿で飯を食べて、風呂に入り、すぐに寝た。




