怪しい者
1週間後
俺は今日も訓練してから会館に向かう。もう少しでアランの2歳の誕生日だ。そして、もうすぐ兄上が戦場に出征して一年が経つ。あれから1週間だが、特にカットも、体調を崩した騎士も問題ないらしい。喜ばしい限りだ。
父上から聞いた話では、あれはエルフによるものと見ているようだ。エルフは呪術を使うダークエルフがいるらしい。その者らは聖国と仲がいいとか。
なんでこのタイミングで聖国はこんな事しでかすのか?本当によくわからないし、いい事をしない。天神教はこの世界の癌だと思う。ガルド様が密かに天神教の教会を探っているらしい。多分、カリウス先輩だろう。ガルド様の影だからな。
蠱毒は解毒したらしい。母上とエルカ姉様の協力で6日かかった。昨日解毒できたと。大変疲れた母上は昨日帰ってきてから寝込んでいる。アイナとユリア姉様が付いていて、父上も今日は休んだようだ。俺は仕事をしてこいと言われこっちにきた。
今日も会館に着くと、いつも通りの風景がある。皆が依頼を見て、良い物があれば、受付に行く。そして、なければ、少しのんびりしてから常時依頼と呼ばれるゴブリン3匹倒すなどの依頼を受ける。受付が空くの待って、出発する者らだ。
俺も依頼を見る。うーん、今日は特に困りそうなのはないな。
「よぉ、マルク」
「ああ、カットか。調子はどう?」
「ああ、調子いいぜ。死を見て来た男は違うぜ。奥さんも食わせなきゃいけないしな」
「そうか。ならいいね。頑張れ」
「ああ、今日も頑張ったちゃうぜ」
「今日はいい依頼があったの?」
「ああ、そうそう、それで声をかけたんだ。サンゼルとヤイとエルゼには声かけたんだが、もう一人必要だから、マルクに頼めないかと思ってな」
「ふーん。依頼はなに?」
「ああ、猪の魔獣だよ。村に出たんだと。依頼が5人以上のパーティーにってやつだから頼めないか?」
「ああ、いいよ。めぼしいのもないしね」
「そうか。掃除屋マルクに入って貰えば、助かる」
「ああ」
「よし行くか?」
と、受付を済ませ、俺、サンゼル、ヤイ、カット、エルゼという五人で行く。エルゼは最近カットが組むことが多い。魔術師らしい。あんまり見ない顔だから知らない。
俺らは村に着くと、依頼者の村長に会い、場所を聞いて、猪を探す。すぐに巣を見つけられ、猪を倒す。子供もいて、家族で4匹だった。
まあ、大人の魔獣は2匹で俺とサンゼルとヤイが協力して、カットが小さい2匹を倒して、エルゼが1匹、ヤイが1匹倒した。
俺らは村長のところに戻り、依頼書に完了証明のサインをもらい、村を出た。そして、会館に戻る。その途中でエルゼと話した。最近、王都に来て、カットと仲が良くなったと聞いた。得意なのは魔法全般でスキルが多いらしい。ランクはDだと。
そして会館に着いて、依頼書を提出して、猪の解体と買取をしてもらい、報酬を受け取る。それを五分割してからカットたちと別れて、会館の食堂にて、ヤイとサンゼルと食事をする。
「ねえ、ヤイ、サンゼル、エルゼっていつからいた?」
「うん?いつからだっけ?」
「最近だろう?」
「ああ、そう言っていたけど、この辺の地理に詳しくないか?それにあれだけ強いのにカットと組んでから皆んなが知るっておかしくない?」
「ああ、そう言えばそうだな。魔獣を見つけた時も土地勘がありそうだった。それに強いな」
「この辺の出身なんじゃない?」
「だとしたら、Dランクなんだから、みんな知り合いじゃないの?」
「あ、確かに。俺も知らないや」
「そう言われると知らんな」
「な、ちょっと気になったんだ」
ライアンが俺らが食事しているテーブルに来た。ライアンも暇なようだ。
「よぉ、マルク、サンゼル、ヤイの3人は今日は仕事もなく、やけ酒か?」
「違うよ。カットに頼まれて、パーティーで猪の魔獣を倒したんだけど、早くに終わってね。だからここで食事中だよ」
「そうか。こっちも早く終わったぞ」
「ライアンのところもか。まあ、こういう日もあるよね」
「そうだな」
「ねえ、ライアン、エルゼっていつからいるか知ってる?」
「あーエルゼ。知らない。最近、カットと組んでるだろう。でもいつからかわかんねえな」
「そうか。最近来たって言うけど土地勘はあるし、そこそこ強いし、いつからいたんだろうと思ってね」
「うーん、確かにな」
「誰も知らないんだね」
と、話しながらライアンも加え、4人で食事をした。そして帰ろうと思ったら、リッキーに会う。
「よっ、マルク」
「リッキー、カットの様子はどう?」
「特に問題はないな。よかったよ」
「俺も今日はパーティー組んだけど。問題なかったね」
「そうだろ?まあ取り越し苦労でよかったよ」
「そうだね。そういえば、カットが組んでるエルゼって知っている?」
「ああ、最近カットが組んでるやつだろう?何でも、カット曰く、凄腕の魔術師だとよ」
「そうか。王都支部が長いリッキーでも知らないんだ」
「何の話だ?」
「ああ、今日組んだ印象でね。手練れだし、この辺に土地勘があるし、でも誰も知らないDランクてのはねえ?おかしいと思ってね」
「確かにな。何だか危険な感じがするな?」
「そう、思う?」
「ああ、今までの経験ではそういう奴は悪巧みをしている可能性がある。単純に強いけど無名はいる。マルクみたいな奴だ。冒険者としては無名って奴だ。みんなお前が入って来た時に奴は強いのか?って疑ってたからな」
「ああ、それは感じてたよ。視線が疑ってる視線だったから」
「そうか。まあ、エルゼはこっちも気にしておく。何かあったらマルクもいいか?」
「ああ、リッキーには世話になってるし、カットも心配だからね」
「ああ。ありがとうよ」
そして、リッキーと別れ、俺は家に帰った。母上は一日中寝たら回復したらしい。よかった。
で、父上と話す。
「父上、母上はもう大丈夫ですか?」
「ああ、少し、マナを使いすぎたんだ。前にマルクも学院祭でしただろう。あれと一緒だ」
「それほどの苦労を。わかりました。あと、少し相談があります」
「なんだ?」
「はい、実は冒険者協会に危険な感じのする者がいまして」
「カットとかいうのに何かあったか?」
「近いと言えば近い話ですが、カットに近づく怪しい奴がいるんです。その者はエルゼというの名ですが、実力があり、王都付近の土地勘があるにもかかわらず、誰も知らないのです。カットが戻って来たら急にカットと仲良くなり、名が売れ出したんです。何かきな臭い感じをしています。リッキーと監視しようと言ってありますが、どうしましょうか?」
「ふむ、それは怪しいな。よし、ゼル、頼めるか?」
「はっ、監視します。少し、お暇いただく事お許しください」
「うむ。頼む」
ゼルが奴をつけるらしい。数日見張り、怪しければ、さらに王宮の密偵が探るらしい。ゼルは本当に万能だ。森で気を失った以外はできなかった事を聞いた事がない。
「よろしくね。ゼル。こっちもカットに何かしでかさないか見張っときます」
「はい」
「うむ。そうだな。カットという者に何をする、もしくはさせるために近づいたと考えるならば、あの騒動の後に組んだのも頷けるな」
「はい。それを怪しんでおります」
「うむ。気をつけろ」
「はい」
そして、夕食を食べ、俺は部屋でのんびりして、瞑想した。母上は結局、今日は一日中寝込んでいた。




