救出
そして翌日
俺は今日も朝から早くに森に行く。父上に母上の持たせてくれた差し入れを渡す。
「父上、あれはどうですか?」
「ああ、この後にくる。もう1時間もしたら来るから待っておけ」
「わかりました」
「そうか、で、マルクだけで行くのか?」
「はい。ゼルでも厳しい空間です。多分、俺のスキルでなんとかなるのでしょう。ならば俺が一人でいくしかないです。他の方は危険です」
「わかった。俺とゼルを途中まで連れてけ。何かあったらどうにかする」
「わかりました」
「ああ」
そして、3人で待つ。冒険者が数人が森に入っていく。
そして、封印する物が来た。そして母上も。
「母上」
「マルク、さっきぶりね。大丈夫よ。ここで待っているから、これをね。マルクが持って来た後に調整するだけよ」
母上が箱のようなものを見せてくれた。
「そうですか。気をつけてください」
「ええ。ラルク、これ」
「ああ。では、俺と、冒険者で名誉騎士でもあるマルク殿、そして俺の家臣ゼルの3名で問題の排除をして来る。皆は待機」
「「「「はっ」」」」
そして、母上から封印道具の使い方を教えてもらい、森に入る。
「父上、これを」
「これは気やマナを防ぐ魔道具です。あると楽です」
「うむ」
父上に道具を渡し、どんどんと進む。
来た。ここからが気がより乱れる範囲だ。
「父上、ここからは私一人で行きます」
「では、リネアから聞いた使い方は覚えているか?」
「はい」
「そうか、気をつけて行け」
「はい」
そして、行く。ああ、昨日よりきつくなった。あれ、成長しているのか?
そして、俺はあの箱の所に来る。禍々しいマナと気がまた増えている。これをこの箱に入れて、箱を箱に入れるのは変だが、まあいい。
よし。これで箱を閉じればいい。あとは箱にある魔術式を触れ、ここの封印魔法を発動させて。よし発動した。ふう。大分楽になった。
そして箱を持ち、出て行く。箱からは禍々しいマナも気も感じない。あとはここののマナを浄化させたい。これは母上に聞くか?
「父上、どうにか封印できました」
「わかっている。なんとなくだがきついのが減ったな」
「ええ」
「よし、リネアの所に戻ろう」
「はい」
そして、戻ってきた。母上に物を見せる。
「これです」
「わかったわ。まあ封印はいいわね。よかった。この封印箱を超えるものならかなり力を使うわ。今回はそうでもないわね」
「母上、これがあった所を浄化したいんですが、何か方法を知りませんか?」
「ええ、知っているわ。ただ、結界魔法よ。エルカも来るから、あの子に任せなさい」
「はい」
そして、エルカ姉様を待つと、数十分後に来た。
そしてエルカ姉様を連れて、あそこの近くに行き、浄化をしてもらった。大分気の狂いもマナの狂いもなくなった。森全体も大分、マナも気も乱れがなくなり、場所の把握も楽になった。ああ、もう大丈夫だな。
そして、森から戻ると、カットもいた。気の乱れやマナの乱れがなくなり、森で見つかったようだ。はあ、よかった。
「マルク、ありがとう」
「ああ、リッキー。見つかってよかった」
「ああ、このバカもほら、感謝しろ」
「ありがとう、マルク」
「ああ、よかったね。カットどこにいたの?」
「それがどこにいたか覚えてないんだ。何をしてたかも」
「そうなんだ。リッキー、どこで発見したの?」
「このバカは穴に落っこって、寝てやがった」
「そうか、じゃあ、穴に落ちた衝撃で気でも失っていたんじゃない?」
「ああ、そうかもな」
「バカが。そうだ。お前は俺とマルクに酒を奢るんだぞ」
「え、なんでそうなる?」
「誰のおかげで命を救えた?」
「ああ。金が」
「ぷっ。はははは」
みんな嬉しそうだ。見つかってよかった。しかし、記憶がないってのは、ゼルのあの状況と同じだな。あれに触れたんだろうな。
部下の騎士団から報告を受けた父上と話す。
「騎士団の方々には問題がないですか?」
「ああ、一名、気分が悪いと言う者がいたが、それ以外はな。冒険者は大丈夫か?」
「みたいです。ただ、見つかったカットが記憶を失っているようで、それが心配ですね」
「そうか、原因はあれか?」
「たぶん。ゼルと同じく、あれの近くに行ったのでしょう。その結果、記憶がなくなったのでは?」
「ふむ。そうだろうな。記憶がないから、わからんがな」
「はい。心配なのは、ゼルより長く近くにいたとなると。心配です」
「ああ、気をつけるように言っておこう。騎士も今日は彼の家につかせよう」
「はい」
そして、俺らは森を出た。会館で報酬を受ける。
「じゃあ、カット、奢ろうか?」
「あ、いやぁ、今日は家で奥さんに会わないと」
「そうだな。それはしょうがないか」
「ああ、そうだよな。リッキー」
「わかったよ。じゃあ、明日行こうか」
「そうだな」
「ちょっと、あ。わかった」
俺とリッキーはカットの肩を掴み離さない。
「じゃあ、決まりだな」
そして、カットは帰った。俺はリッキーとまだ話す。
「リッキー、カットの様子を数日見守ってあげて」
「ああ、いいが、なんでだ?」
「ああ、原因物質に触れると記憶を失うんじゃないかって感じっぽいんだ。だからカットは記憶を失ってみたいなんだよ。それだけならいいけど、何かあるかもしれない」
「そうか。それはあるかもな。あれだけ、森が変になったんだ。それに触れたんじゃな。しかも長時間」
「ああ、だから、頼むよ」
「ああ、わかった」
そして、俺は家に帰った。父上と母上はまだ王宮にいるようだ。ゼルは帰っていていた。
「ユリア義姉上、アラン、ただいま」
「お帰りなさい。マルク、大丈夫?」
「ええ、大丈夫です。母上はまだですか?」
「ええ、王宮に行って、見つかったものを封印するから、帰りが遅くなるという伝言があったわ」
「そうですか。わかりました。ではお風呂に入ってきます」
「ええ、お疲れ様でした」
アランが俺の元に来る。
「マルク、おふお、はいる」
「一緒に入るか?」
「うん」
「よし、じゃあ行こう」
「うん」
アランとお風呂に入る。
「アラン、ほら髪洗うぞ」
「うん、あいって」
「おう、ほら、痒いところはないか?痛くないか?」
「ない」
「そうか」
「よし、髪も、体も洗ったぞ。風呂に浸かろう」
「ふろ」
「アラン、肩までだぞ」
「かた」
「そう、よし、いいぞ」
「えあい?」
「ああ、偉いぞ」
「うん」
そして、お風呂を出る。アランを拭き、乾燥魔道具で髪を乾かしてやる。
「マルク、あいあと」
「ああ」
「あそぶ」
「ああ、何をしようか?」
「うん、まるいの」
「ボールか。わかった。よし、取ってこよう」
「マルク様」
「ああ、リリア、ボールってどこにある?」
「ボールですか。では私が取ってまいります。居間にいらっしゃってくださいませ」
「わかった」
そして居間で、リリアからボールを受け取り、アランと遊んでいると、父上と母上が帰ってきた。
「お帰りなさいませ。父上、母上」
「ああ、ただいま、マルク」
「ただいま、マルク」
「おかえい。ばあば、じいじ」
「ただいま、アラン」
「ただいま、アラン。お風呂に入ったのかしら?」
「うん。マルク」
「マルクと一緒だったのね。いいわね」
「父上もお風呂に入ってらっしゃったらいかがでしょうか?」
「そうだな。2日も森にいたからな」
「そうね。夕食の前にお風呂に入った方がいいわ」
「ああ」
そして、父上のお風呂の後に夕食にした。
「母上、大丈夫でしたか?」
「ええ、大丈夫よ。これでも大賢者なんて呼ばれてるの。結界は余裕よ。ただ、かなり強い蠱毒ね。まあ、前にもっと強いものを見たわ。ただ見たことないタイプだけど」
「蠱毒ですか?」
「ええ、まあ、アランの前では話せないわ。後でね」
「そうですか。わかりました」
と、夕食を食べて、父上の部屋にゼルと母上と行く。
「で、蠱毒とは?」
「ええ、蠱毒っていうのは、そうね、生きた虫とかを入れて、その中で共食いをさせる呪術なのよ。仙人とか賢者という世捨ての者たちや魔族にしか伝わってない方法よ。それが一般的な蠱毒ね。
でもね、エルフの中にその一般的なものと違うものを得意とする一族がいるの。ダークエルフ族よ。その一族が使うのが、蠱毒をさらに強力にしたものなの。蠱毒を作る容れ物の中に殺した人間の臓物を入れて、その中で虫を育てて、最終的に共食いさせるの。
すると、人間が持つマナと怨念を吸って、呪術を受けた虫が育つ。それを使って、大地などを腐らせたり、魔獣を強くするの。その地に入ったも者は記憶を失ったり、感情が欠如したり、いきなり暴れたりするの。今回はそこそこのだから、まあ一日中触っていたぐらいじゃないと感情が暴発したりや暴れたりはしないわ。ただ、ちょっと見たことがない種類なのよ。
解毒は時間がかかりそうよ。私とエルカでやるしかないわね」
「そうですか。だとすると、ウルフジェネラルが率いた群は?」
「多分、蠱毒によるものね。小型狼を連れてきて、それらを蠱毒に触れさせ続けたんじゃないかしら?」
「なるほど。私やゼルは近づいたり、触れましたが大丈夫ですかね?」
「ええ、聞いた話では少しでしょう?」
「はい。封印時に触ったくらいで、あとは近づいても少しの時間です」
「だったら、大丈夫よ。ただ、カットさんだったかしら?あの人は危険ね。様子を見た方がいいわ。それに気分を悪くした騎士も。たまに極端に呪術にかかりやすい人もいるし、もしくは一度暗示をかけて、再度かかりやすくする方法もあるの」
「そうですか。私も気をつけます」
「ええ。そうね」
「しかし、なぜ母上はそれほど呪術に詳しいのですか?」
「それはね。もう少ししたら話すわ」
「わかりました」
そして、俺は部屋に戻って寝た。




