謎は深まる。
翌日
今日も訓練をして、会館に行く。会館ではもう調査隊が組まれたようだ。
「おはよう、マルク」
「ああ、おはよう。ヤイ」
「ああ、マルクのおかげでいい仕事が入ったよ。マルク様、新英雄様、ありがとうございます」
「本当に現金だな」
「ああ、そうじゃなきゃ、養っていけない」
「ああ、妹さんか」
「ああ、ハーフは大変さ。それでもマルクのおかげで夢を持てるようになっただけ幸せだ」
「そうか。よかったな」
「あれ、褒めたよ」
「俺の家に同じハーフのメイドがいてな。その子にも同じことを言われたよ。ハーフの人がこれで夢を持てるって」
ヤイとは父親違いらしい。ヤイは少しだけ獣人の血が入る。妹さんはハーフらしい。
「そうか、そうなんだよ。魔法理論は多くの人の夢さ」
「ありがとう」
「いや、こっちがありがとうだよ。妹はもうマルク信者だよ。新英雄にいつか会いたいって言ってるよ。会わせないけどね。シンディーみたいにはしない」
「そんな、誰でもならないよ。そんなにモテないって」
「誰のこと言っているのかしら」
「あ、シンディー」
「やあ、おはよう、シンディー」
「おはよう。マルク。で、なんでスルーするの」
「何が?ああ、ヤイも妹の話?まあ、俺理論のおかげで幸せになれそうって」
「そうそう。シンディーも調査隊?」
「もう。まあ、いいわ。そう。私のパーティーとヤイとサンゼルよ」
「そうか。俺は案内すればいいんだよね。シンディーもヤイも気をつけてね。昨日、父上と話したんだけど、どうにもきな臭いんだ。この話は」
「きな臭い?」
「ああ、あれだけの小型狼とウルフリーダー、ウルフジェネラルがいて、今まで騒ぎがないことがね」
「あ、そうだね。それは不気味だよ」
「ああ、サンゼルなら、断るかと思ったけど」
サンゼルが近寄ってきた。
「あ、俺は断ろうとしたら、副支部長にどうしてもってよ」
「おはよう、サンゼル」
「ああ、マルク」
「そうか、じゃあ、きな臭さは感じてるんだ?」
「ああ、今回は特にな。まあ、俺も今日は何も起きない気もするが」
「そうか」
こうして、調査隊が集まって、出発の前に会議室に集められ、説明を受ける。
「・・・でありますので、騎士団がこの後、調べることになりますが、魔獣の専門家たる皆さんには事前に調査をしていただき、報告をしていただきます」
「ええ」
「では、皆さん準備はいいですか?」
「はい。ではシンディーさんをリーダーに、案内役にマルクさん、ヤイさんとサンゼルさんはレネさんの護衛をお願いします」
「「ああ」」
「ええ」
「「「「はい」」」」
「では、よろしくお願いします」
俺らは会館を出て調査に向かう。俺はシンディーと前を歩く。本当は距離を取りたいが案内役のため、前を歩かないといけない。
道中
「この道をまっすぐ進んで、次の分かれ道で右だよ。そうすると草原があるんだ。で、その草原の西側に森との境目があるから、そこから南に行ったところで倒したよ」
「そう、じゃあ、まだ真っ直ぐね」
「ああ」
少し行くとシンディーが話しかけてきた。
「マルク、本当に入ってくれないのね?」
「ああ、パーティかな?」
「ええ。で?」
「ああ、無理だよ。俺は俺の道がある。そのために真っ直ぐ進む。だからシンディーとは方針が違う。パーティーに入っても、直ぐに抜けることになる。だから悩んでたんだ。ごめん」
「そう。もう誘わないわ」
「ああ、ごめんね」
「いいの」
ちょっと寂しそうだけど、申し訳ないけど無理だよ。
そして、草原に着く。あとは、南に行ってと。
ここだ。
「ここだよ。これが俺が埋めた兎の魔獣の死骸と血の跡だよ」
「ああ、マルクらしい、整地されすぎた片付けだな」
「ああ。で、こっちの森から狼が出て来た。ちなみにあっちの草原で、兎の魔獣の群れを狩ったよ」
「ちょっと待って、兎の魔獣の群れは何匹いた?」
「うん?20匹くらいだね。サンゼル、ヤイ、どうしたの?」
「ああ、そんなに兎の魔獣はこの草原では群れないよ」
この辺はサンゼルやヤイは王都の支部で長く冒険者をするベテランだから俺より詳しい。
「でも、森から出て来て、草を食べてたんじゃないかしら?」
「確かに、たまに森から兎の魔獣の群れが出てくることもあるよ。でも森はそもそもは大ネズミの魔獣が多くて、兎の魔獣は少ないよ」
「確かに、そうだな」
「そういえば、課外授業で入った時も大ネズミの魔獣を多く見たよ」
「いるにはいるけど、兎の魔獣は少ないんだ。だから、この草原でそんな数の群れがいることがおかしい」
シンディーや俺が意見をした。そしてヤイがそれを否定していく。さすがはベテランだな。俺はこういう話はわからないことも多い。
「そうか。これは報告だね。それで、ここの調査はどうするの?」
「はい、マルクさんから状況は聞きました。次は周辺調査に入ります。シンディーさんたちはパーティーで森を調査してください。私とサンゼルさん、ヤイさん、マルクさんで草原を調査します」
「「「「わかった」」」」
「では、シンディーさんよろしくお願いします。2時間後にこちらに戻るよう、お願いします。サンゼルさん、ヤイさん、マルクさん、こちらも出発します。よろしくお願いします」
そして、俺らはレネさんと草原を調査していく。それぞれ、変なところはないか目を光らせる。だが、特にはなかっ他ので、問題なく、草原の調査は終わった。
そして、元の場所に戻り、シンディーたちを待った。しかし、時間を過ぎても、なかなか戻ってこない。探しに行くかと決めた時、シンディーたちは戻ってきた。
「遅かったね」
「道に迷ったの」
「迷った?シンディーたちが?」
「ええ」
「行きにマッピングや目印はどうなされたのですか?」
「レネ、ちゃんとしたわ。でも、おかしいの。目印を見失うし、マッピングと違う道に行っていたのよ。で彷徨って、何とか目印を見つけたわ」
「ちゃんとしてたんだよね?」
「ええ。これでもBランクのパーティーよ。個々の力は弱いけど、パーティーとしては強いわ。その私たちが探索の基本をしないとかないわ。それにこのリシルは凄い斥候よ。マルクも知っているでしょう?」
「ああ、リシルからどれだけ学んだか」
「そうよ。そのリシルが迷ったのよ」
「ああ、問題がありそうだ。それにこれ以上の調査は危険だね」
「ええ、冒険者の勘がそう言うわ」
「そうですね。2つの問題点を副支部長に報告しましょう。こちらの様子はスケッチしてあります」
「ああ、じゃあ戻ろう」
「そうしましょう。おかしいわ。ここ」
そして、調査を終わらせて、王都の会館にに戻った。
そして副支部長に報告する。報告内容を伝えると
「そうですか。それはおかしいですね。何か罠のようなものを感じますね」
「ええ、騎士団に報告する際にお気をつけてください」
「ええ、報告ありがとうございました」
「「「「では」」」
こうして、俺らは報告を終え、調査の報酬をもらい帰った。
家に着くと
「まうふ。おかえ」
「ああ、アラン、ただいま」
「お帰りなさい。マルク」
「はい。母上」
「お帰りなさい。マルク君」
「はい、ユリア義姉上」
「まうふ、えほん」
「ああ、いいよ。でも少し待ってね。風呂に入ってからね。服とか汚れているから」
「まうふ、えほん」
「アラン、少し待ちなさい。マルクおじさんはお風呂よ」
「まうふ」
「アラン、わがままはダメよ」
「ばあば」
「わかった?」
「うん」
「すみません。お義母様」
「いいのよ。ユリア、アランの教育は家族の問題よ。これくらいは頼ってね」
「はい。ありがとうございます」
俺は風呂に入ってから、アランに絵本を読んだ。アランは動物の絵本が好きだ。
そして、その後に、俺は訓練をして、夕食になった。
「父上、おかえりなさいませ」
「ああ、ただいま、マルク」
「今日の調査ですが」
「ああ、どうだった?」
「ええ、やはり変なところがありました。・・・・」
父上に今日の問題点を報告した。
「そうか、うむ。両方共におかしな点だな。理由がわからん。それが一番マズいな」
「ええ、理由がわからないのが不気味です」
「うむ。気をつけるように伝えておこう」
「はい。一応、冒険者協会から報告はあると思います」
「ああ、わかった」
こうして話を終え、夕食を食べ、研究と瞑想をして寝た。




