武闘オーラとこれから
スキルの万能さを家族に伝えるの回です。
夕食のため食堂に来ると
「マルク、今日も訓練を頑張ったのか?」
「ええ。父上、お帰りなさい」
「ああ。でどうだ?」
「はい。今日もうまく行きました」
「そうか、マルク」
「そうなの。ゼル、どうだったの?」
「はい、マルク様はついに、武闘オーラを発現することに成功しました」
「本当?」
「ええ。エルカ様。それどころか、凝をできるようになりました。まだ完璧とは言えませんが」
「凝?」
「はい。『凝』とは武闘オーラの技の一つで、目に武闘オーラを纏うことで、相手のマナや気功を見ることや遠くを見ること、気配を探ることをする技です。武闘オーラの基本であり、奥義の一つです。他の4つ、体に纏う『覆』、一点に集める『集』、体の外に出す『露』、武闘オーラを飛ばす『飛』と合わせて、基本5技と言います」
「凝を!そうか、それはすごいな。アルフよりも早い」
「ええ、凝以外も『集』と『覆』もできるとは思います。ただ、まだ槍術の基本の練習中なので、もうできる凝のみを修練させようと思います」
「うむ。そうだな。任せるぞ、ゼル。まあ、とにかく、マルクよ。おめでとう」
「ありがとうございます。父上」
「すごいわ、マルク。アルフですら武闘オーラを使えるようになったのは10歳くらいよ」
「マル君、すごいわ。アルフ兄さんを超えたのね」
「マルク、偉い」
「ありがとうございます。母上、メル姉、エルカ姉様」
「マルクの努力が実ったことを祝って、乾杯だな。ゼル、酒を頼む」
「そうね。祝わなくちゃ。」
「そうだね。お母様」
「ん」
こうして、みんなに祝ってもらった。みんな嬉しそうで、俺も嬉しくてたまらなかった。
翌日
今日も午前は訓練だ。
今日もまだ、切り上げと巻き槍が完璧にはできない。まだまだダメなんだ。もっと気を引き締めて頑張ろう。
「昨日のこともあり、とびとびで進むと思いましたか?」
「うっ。そう思ってた」
「マルク様、そう簡単に人は成長しません。積み重ね、積み重ねてやっと進むものです。そう簡単に成長するのは創作だけです。本当の物語は1日の積み重ねです」
「うん、解ってたつもりだったけどね。やっぱり浮ついていたみたい」
「ふふ。それを自分で気付けばよし。大丈夫です。今日もできることを一つ一つしていきましょう」
「はい。師匠」
「では、今度は『凝』です」
これから、凝の訓練だ。
ゼルの言う通り、簡単に進むならいいんだが、そんなことはありえない。
そうなんだ。前世で読んだ本も、父上の英雄伝もすぐ成長する。でも本当はそう進まない。ひたすら、少しずつ積み重ねがあるから急に進むんだ。積み重ねがないと物事は進まない。それが現実だ。
今日の昼食後は、お休みだ。母上とゼルが忙しいらしい。
昨日のことを踏まえて、『飲み込む』スキルを考察だ。
今、解っていることは、
1飲み込めば、スキルやマナ、気功まで飲める。
2直接、スキルなどは、そのものを飲まなくても、そのもののマナや気功を飲むことでも力にできる(スキルを使えるようになる)。ただし、その量によって、得られる確率が変わる。
3飲み込むことでできるようになったことは、スキルがなくてもできる。
4食べ物や空気でもマナを得られるので、日々、成長できる。
5魔法スキルや武術スキルができたのは、『飲み込む』のおかげだ。
しかし、このスキルは万能だ。遠くからでも、一緒に訓練するだけでも、スキルを得る訓練になるんだ。こんなすごいスキルは中々ないんじゃないかな。多分すごいスキルすぎて、誰も持っていなかったんじゃないかな。
ただ、このスキル自体が有能じゃない。このスキルを使い、日々頑張る人だけがその効果を得られるスキルだ。ある意味、人を選ぶスキルだ。
問題はどこまで飲み込めるのか?なんだ。これが中々わからない。際限があるのか?ないんじゃないかとも思うが、ないと思ってあったら死ぬかもしれない。
あとは、このスキルのメカニズムがわからん。物を飲んだらどうなる?剣技や魔法は?体の中でどうやって力に変わる?これを知らないと実はまずい。だって物は飲めないし、攻撃魔法は体を傷つけるかもしれない。そうなると母上が認めてくれない。
でも試すのも難しい。どうしよう。どうすればいいのかな?まだ先まで諦めるか?先送りでいいのか?うーん困った。自分でも試せるけど、母上を心配させるのはダメだ。しょうがない、とりあえず少しずつ説得だ。
まずは夜に聞いてみよう。ダメでも少しづつ説得するしかない。
よし、今は集中力の訓練のために入れた瞑想をしよう。少しずつ、少しずつ。
階段を登る音がする。アイナだ。アイナがドアを開けた。
「マルク様、夕食のお時間です。皆様がお待ちです。食堂にお越しください」
「うん。今行く」
食堂へ。
「父上、おかえりなさい。母上、瞑想の訓練しており、夕食に遅れてしまいました。すみません」
「ああ。ただいま、マルク。まあ、良い」
「いいのよ。瞑想の訓練していたのでしょう。よく集中していたのね」
「はい、母上。いい訓練になりました」
「まあ、あんまりコン詰めてはダメよ。休む時はやすみなさい」
「はい」
「今日は何をしていた?」
「今日は午前は訓練をして、そのあとはスキルのことを考えてました。その後で瞑想の訓練です。」
「ふむ。そうか」
「はい、それで少しご相談が」
「なんだ。スキルのことか?」
「はい。スキルの訓練で少しずつ、魔法を飲み込んでみたいのです。何かあった時に『飲み込む』が働かないではまずいので、何を飲み込め、何を飲み込めないのかを知っておきたいのです」
「ふむ、言っていることは理にかなっている。だが、危険ではないか?」
「はい、いきなりというのは危険だと思います。なので、私自身が使える魔法と母上の回復魔法を飲み込みながら、少しずつ確認していきたいと思います。それで少しでも危険ならばやめるというのはダメでしょうか?」
「ふむ、危険性を理解して、それを管理しながらやるならいいとも思うが、リネアどうだ?」
「ダメよ」
「リネア、危険だからダメでは子は育たんぞ。マルクがちゃんと考えて言っているんだ。頭ごなしに否定するんじゃなく、ちゃんと考えなさい」
「うっ、でも。・・・・・。解ったわ」
「そうか、条件をつけるぞ、マルク」
「はい、もちろんです。母上も父上も姉上も、ゼルもアイナも心配させたい訳ではないんです。むしろ、何かあった時のために少しずつ自分の限界を知ることで、心配をかけたくないのです。ですから、父上が出す条件は飲みます」
「そうか。ちゃんと解っているな。焦燥などはないようだ。そうだな。リネアの言う事を聞くこと、リネアがいる時のみすること、飲む魔法は1日5つまでだ。まずはマナから始めなさい。これでいいな。守れるな?」
「はい」
想定内の条件だ。後は母上にどこまで認めて貰えるかだ。最初は初級で十分だ。それ以上は望まない。まだ時間はいっぱいある。王立学院に入るまでにある程度知っておけばいい。それでいいんだ。他もやることは十分にある。成長しなければならないことも多い。学ぶことも多い。
まずまずの結果だ。
そのあとは夕食を楽しんだ。こんな時間がもう少ししかないんだ。姉上らはあと一年で学院を卒業して宮殿魔術師と宮殿回復士になる。そうすれば家を出て行く。
今はこの時間を楽しみたい。
これで一章が終わります。2章からは家の外と関わる章になります。さらに登場人物が増えます。




