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異変

2日後


俺はどうにも今日だけは気が乗らない。シンディーが帰ってくる。シンディーはいい奴だが、面倒で苦手だ。強引なところがある。でも休むのは意味がないし、信念に沿わない。


今日も俺は朝から訓練して、会館に向かう。どうにも気が乗らないが、頑張ろう。

会館に着くと、人だかりがある。シンディーだろう。俺はバレないように依頼書を確認・・


後ろに気配が・・

「ねえ、マルク、挨拶しないってどうなの?」

「おはよう。シンディー」

「ええ、おはよう、マルク」

「昨日帰って来たの?」


「そうよ。昨日も探したけど、マルクはお休みだって言うでしょ?しょうがないから今日は朝早くからここに居たんだけど」

「そうか。それはすごいね。遠征はどうだったの?」

「ええ、ちゃんとできたわ。それにお金もたんまりよ。マルクがいてくれたら、もっと楽だったけど」

「そうか、甥っ子のこともあるから、無理だよ」

「そう、いつになったらいいのかしら?」


「ああ、甥っ子が2歳ぐらいかな。兄上の代わりに面倒見なくてもいいくらいだね」

「へえ、じゃあ来年よね?そうなったら入ってくれる?」

「ごめんよ。シンディー。もうAランクだし、やりたいことがあるから無理だよ」

「そう、なんでもっと早くそう言わないのかしら」


「ああ、パーティーを組むか悩んでていたんだ。上に上がれないし。でもAランクに上がれたから、組まないって決めたんだよ」

「あんなに世話したのに、お嫁になってもいいと思ったのに」

「ごめん。依頼を見て、行かないと」

「そう」


恐い。魔獣の数倍恐い。女性が苦手になりそうだ。肉食女子、怖い。


依頼書を確認して、今日の依頼を受けに受付に。

「マルクさん、おはようございます」

「ああ、おはようございます。レネさん」


「今日のご依頼は、小型狼の群れと、ありがとうございます。これも皆やりたがらないですね。群れの数が多いですが、大丈夫ですか?」

「ああ、魔法で行くから、大丈夫だよ」


「わかりました。位階酔いには気をつけてください。あと、ご愁傷様です」

「レネさん、そういうのは言わないでください」

「すみません」


俺はレネさんから依頼書を受け取り、ポーチの中に入れ、会館を出る。もうこれ以上は絡まれたくない。そして王都の門を出て、小型狼の群れが出たという森と草原の境目付近の見通しが良い丘に来た。あそこが出たと言われる草原のところか?


学院時代に課外授業で来た森の近くだ。懐かしいなぁ。あの時も小型狼と戦ったっけ。小型狼とは何度も戦った。学院用ダンジョンの10階に行った時はもう、すごい数でげんなりしたな。


レオナも、アレスも、ルーナももう嫌だって顔してたな。ルーイとヨンダルだけがなんか知らないがハッチャケてた。


そんなことを思い出しつつ、森を見ると、少しわかりづらいが、森の奥に狼の気配を感じる。ああ、かなりの数だな。多いぞ。まだ距離があるから、そんなにはっきりとは分かんないけど。これは大変になりそうだ。


普通はパーティで受けるしかない数だけど、普通のパーティだと無理だな。リッキーのところに数名参加でいけるかという数だ。もしくはゼルの登板だ。この数になると、王都支部で倒せるのは俺かゼルくらいだ。まぁサンゼルだと怪我するかもだな。


うーん、森の中だと面倒だ。俺でも結構きついな。出てくるようにしたいが、どうしよう。うーん、ああ、あそこに兎の魔獣の群れがいる。あいつらを捕まえよう。そして、餌にして呼び出すか。よし。


そして兎の群れに近づく。サンダーチェインで捕まえて行く。今は一気に4本も出せる。よし、これで4匹。あと数匹でいいな。よし、次もよし、捕まえた。これで、10匹と。よし、1匹の血を撒いてと。これで小型狼の群れなら来るな。


離れて、来るのを待つ。うーん、なかなか来ないな。血は臭っているはず。ああ、来た。でも先行の群れみたい。4匹か、これはボスが相当に頭がいいな。ああ、リーダーぐらいはいそう。小型狼にも階級がある。ダンジョンの10階にいた。


周りより大きいのがリーダーだった。基本的に普通の種より大きいものが発見されるとリーダーの名がつき、さらにとなるとジェネラル、さらにキングとなる。全ての魔獣にリーダー種がいるわけではない。


大変になったけど、まあ、やれるか。変に誰か誘わなくて良かった。


そして、狼の先行部隊が森に戻る。ここも待つ。ああ、あれがボスか。小型狼の進化した個体だ。ウルフリーダーだ。やっぱり、こいつがボスか。気配は、うーん、他にいない。


よし、サンダーチェインだ。ボスを捕まえて、あとは最近作られたサンダーボルトで撃ち抜いていこう。これなら、最高で15本は撃てる。一気に連射してやる。1、2、3・・・・・・15と。まだいるな。気配を消してたか。


仲間とボスを潰されて出て来た。この辺が魔獣は簡単だ。よしサンダーボルトで、1、2、3・・・・・・12と。よし全部倒した。


何だこの気配?さっきのより強い個体が来る。こっちがボス。ああ、強いぞ。く、人間も騙す奴か。強いし、頭もそんじょそこらの小型狼種よりいい。それなりに用心深い。でも、もう手下がいないからいいけど。


よし、対峙する。逃がさないよ。ジリジリと近づいて来る。一気に飛びかかって来た。まあ、避けれる。うわ?急に軌道を変えた。こいつ、本当に頭がいい。


リーダーの上か、ウルフジェネラルかも、Bでも上位だ。早いな。ああ、今度は右から突っ込んできて、急に軌道を変えた。


でも、アレスに比べれば、スピードは遅い。頭も悪い。ルーイの完全停止はもっといやらしいぞ。


俺は軌道変化に合わせて、一気に突く。ウルフジェネラルは自身のスピードと俺のスピードが乗ったカウンターの突きで眉間を貫かれた。


これなら評価はいいだろう。さすがに少しは驚いた。さて、帰るか。バックを大きいのにしてよかった。血抜き処理なんかはここでは無理だな。


そして、王都に帰ってきた。門でチェックを受け、会館に行く。片付けもしたから、さすがに夕方だよ。ちょっと疲れたね。


会館に入ると、受付前は人だかりだ。まあこの時間は混む。遅くなったのが悪い。受付で順番を待ち、依頼表を見せ、小型狼の群れとリーダーとジェネラルの討伐証明部位を見せる。レネさんが驚き、こけた。


「ごめんなさい。レネさん。驚かせた」

「いえ、あの〜、これってウルフジェネラルですよね?」

「ああ、群れのリーダーがウルフジェネラルで、サブがウルフリーダーだったよ。ちょっとわかりにくいよね」


「ええ、すごい。すごいですよ。マルクさん」

「ああ、少し疲れた」

ざわつく。


「おい、ウルフジェネラルってBランクでも上位だよな?」

「ああ、Bランクパーティーでもギリギリじゃねえか?王都支部ならリッキーのところに何人かスケットが入るか、ゼルさんだけだろ」


「やっぱり、そうだろよな。単独って!ゼルさんと変わらないよな?」

「ああ、マルクのAランクは嘘じゃねえな」


と聞こえてくる。ちょっとだけ誇らしい。ゼルと一緒は嬉しいな。


「・・・マルクさん。マルクさん、聴いてますか?」

「あ、ごめんなさい。レネさん、考え事してた」


「はぁぁ。もう一回言います。副支部長に確認して、ウルフジェネラルの出た場所を確認することになります。場所を教えてください。こちらが地図です」

「ああ、ええっと。この辺の街道を南に行って、森がこの辺で、丘がここだから、ここだね。ここ」

「ああ、依頼書の場所に近いですね。しかし、王都の近くにウルフジェネラルなんて」


「そうだね。どこかから来たのかなぁ。だとするとどこかで被害が報告されていそうだけど」

「そうですね。あの副支部長に報告をするので、一緒に来てもらってもいいですか?」

「ああ、いいけど、家に連絡させて、心配するから」


「はい。伝言を頼みます?」

「ああ、『副支部長と話すことがあるから、帰るのが遅くなる』とお願い」

「はい」


王都には伝言屋と言われる、前世で言う郵便屋さんみたいなのがいる。その人が前世の電報みたいなのを届けてくれる。貴族や商店が使うからだ。いつも思うけど、重要地点には電話みたいな道具があればいい。でも、都合よく、そんな凄いものは作れないなと思う。


副支部長室に行く。レネさんがドアをノックする。

「副支部長、レネです。マルクさんが受けた依頼の件でご報告のため、マルクさんと一緒に来ました」

「はい、入ってください」

「「失礼します」」


「やあ、レネさん、マルクさん。で、報告というのは」

「はい。私から報告をします。マルクさんが受けた依頼では、王都南の森と草原の合間に小型狼の群れが出たという依頼だったのですが、どうやらウルフリーダーとウルフジェネラルがいたようです」

「何?討伐隊を組むか?ゼルさんに頼むか?」

「副支部長、マルクさんが倒しました」


「おお、マルクさん、凄いな。Aランク推薦してよかった。レネさん、確認は済んでいるだよね?」

「はい。討伐証明部位は確認しました」

「そうか、じゃあ、場所を確認しなくちゃ」

「それも、マルクさんに確認しました」


「そうか、じゃあ、確認部隊を出す必要があるね」

「はい。それでマルクさんに来てもらい、もう一度副支部長に報告をしてもらいます」

「うん、じゃあ、マルクさん、報告してもらってもいい?」

「はい・・・・・」


俺は、報告をした。副支部長に詳細を聞かれて、大まかに倒し方を説明した。


「凄いね。一人で簡単に倒すなんて」

「簡単ではなかったですよ。それに片付けが面倒でした」

「まあ、そうだろうね。解体はできてないよね?」

「ええ、これから出しに行きますよ」


「そうか、じゃあ、解体の人を増員しよう。冒険者からも募集しようか?」

「それがいいですね」


「じゃあ、レネさん、お願い」

「はい」


そして俺は小型狼27匹と、ウルフリーダー、ウルフジェネラルを出した。解体に集まった職員と冒険者から感嘆の声が出て来たが、矢継ぎ早に手続きをした。


ウルフジェネラルらの買取代金は明日となったので、討伐報酬だけもらい、帰った。討伐報酬は当初の金額よりかなり多かった。副支部長が気を使ったようだ。


家に帰ると、母上らが心配したのか待っていた。

「ただいま、戻りました」

「おかえりなさい。マルク」


「母上、遅くなりすみません」

「大丈夫よ。怪我はない」

「はい」


「そう、よかったわ。伝言があったから、何かあったと思ったわ」

「すみません。依頼で、ウルフジェネラルが出たので、報告をしていました。明日には倒した場所に調査隊を連れて行く予定です」


「そう。じゃあ、明日から大変ね」

「騎士団にも調査隊の話が行くかもしれません」


そして、風呂に入ってから、食事をとるため食堂に行く。すると父上が帰ってこられた。

「お帰りなさいませ。父上」


「ああ、マルク、ただいま。リネアから聞いた。ウルフジェネラルが出たらしいな」

「ええ、ウルフリーダーと共に小型狼の群れをなしていました」

「そうか。小型狼の群れは何匹だ」


「27匹です。それにウルフリーダーとウルフジェネラルです」

「うむ。どうやって王都に現れたかだな?」


「ええ、どこかから来たのなら、被害の話があるはずですが、そのような話を聞きましたか?」

「いや。各騎士団に細かく聞かないといけないが、今のところ聞いたことがない」

「そうですか。冒険者協会もないようです」


「そうか、だとすると、おかしな話だ。そこで育ったとなると先月の学院の課外授業で被害が出ている筈だな」

「ええ、それ以降でも、依頼など、どこかで聞こえるはずです。しかしそんな話もありません」

「ああ、何か臭うな」


「ええ、何か良くないことが起きそうです」

「ああ」


「もう難しい話はいいわ。アランが眠くなりそうよ」

「アラン。すまないな」

「じいじ」


「アラン、今日は何をしていた?」

「ぜう、パカパカ」


「ゼルが馬をしてくれたのか?」

「何でしょうか?ラルク様」


「いや、なんでもな、ププ、ない」

「ラルク様」


「ううう、ダメ」

「すみません、アラン様」

「すまんな、アラン」


「アラン、ご飯食べたら遊ぼうか?」

「うん。まうふ、遊ぶ」

「よし、じゃあ、ちゃんと食べような」

「うん」


そして、夕食後にアランと遊んだ。アランは少しして、眠くなったので、ユリア義姉上が部屋に連れて行き、寝かせた。俺は少し瞑想をして心を休めて、早めに寝た。


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