兄の出征
それから2ヶ月後
今日は天の日で学院は休みだ。今日、父上も休みで、兄上家族が家に来て、これからユリア義姉様とアランがこっちに住む。兄上が戻ってくるだろう。3年後くらいにこっちを出ることになる。
俺は最近は学院に行ったり、行かなかったりである。12月に名誉騎士号をもらい、冒険者登録をした。名誉騎士号のおかげでDランクからの出発ができる。
本当はCもしくはBでもよかったらしいが、初めからそうだと、あとあとに苦労しそうだなと思い遠慮してDランクからにした。
みんなにはマルクらしいと笑われた。理由は苦労する方を選んだからだとか。だから苦労しないだろう方を選んだって、思ったけど。
で、冒険者として、たまに活動している。王都の森や近くの村での魔獣討伐とか薬草拾いとか。冒険者協会の建物に入るとたまに絡まれる。
王都の人や王都中心で活動している人は俺を知っているが、そうじゃないとガキがって言うんだ。暴力を振るわないとこっちも何もしないけど、して来た場合は叩きのめしている。そうしろって周りに教えられた。仲良くなった冒険者もいる。変わり者が多いけど、悪いやつばかりじゃない。
そんなことを考えていると、兄上らが来た。アランは寝ているようだ。スヤスヤと気持ち良さそうだ。兄上は今日はうちに泊まっていき、明日からお役目に王都を出発する。
兄上は将軍としていく。兄上ぐらいの人らを経験させるためもある。補佐兼軍師にハンニバル様だそうだ。
「父上、母上、今日よりユリアとアランがお世話になります」
「ああ、任せろ、アルフ」
「ええ、任せて、アルフ」
「お義父様、お義母様よろしくお願い申し上げます」
「ああ、ユリア頼むな」
「ええ、気軽にしてちょうだい。もうユリアは家族なんだから」
「はい」
「ユリア義姉上、これからよろしくお願い申し上げます」
「ええ、マルク、よろしくお願いします」
「はい。兄上、お勤め頑張ってください」
「ああ、明日から出向く、今日は泊まっていくが、明日からユリアとアランを頼むな」
「はい。兄上、なんだか貫禄が出て来ましたね。将軍だからですか?父親だからですか?」
「ふふ。両方だな。マルク」
「そうですか、兄上。父親とは偉大ですね」
「そうね。アルフが父親で、将軍なんてね」
「ああ、アルフにこんな日が来るとはな。あの時を思うと感慨ぶかい」
「父上、あの時の事は反省しておるのです。もう口に出すのはおやめください」
「ははは、兄上、急に貫禄がなくなりました」
「ま、る、く」
「すみません」
「「「ふははは」」」
そして遅れてメル姉とエルカ姉様もきた。2人は研究所勤務の為、出征しない。
「こんにちは。お父様」
「ん。こんにちは、お父様」
「ああ、メル、エルカお帰り」
「メル、エルカお帰りなさい」
「「ただいま、お母様」」
「お帰りなさい、メル姉、エルカ姉様」
「ただいま、マル君」
「ん、ただいま、マルク」
そしてアランが起きた。
「アラン、起きたか?父上は明日から出征するからここでいい子にしろよ」
「母様と一緒に頑張りましょうね」
「アラン、祖父が守ってやるからな」
「ええ、お祖母様が近くにいますよ。いつでも遊んであげるわよ」
「メル姉が可愛がってあげるからね」
「ん、エルカ姉様」
「アラン、元気だね。今日からよろしくね」
「だだ、だだだ。だぁあああ」
「うん、マルクか」
「だあああ」
俺が抱くと。
「だ、だ、だ、だだっだぁああ、だっだだあああ」
「マルクのところがいいみたいね。マルクが好きなのかしら」
「だあああ、だあ、だあ、だああ、だだあああ、だあだだああ」
「なんか歌ってるみたいだね。アラン、歌かな?」
「だあ」
「歌だね?」
「だ」
「メロディーがわからないけど、歌ってるんじゃない?あれ、もしかして、た、た、た、たったたん、たったたん。かな?」
「だああ」
「俺がこの前アランの前で鼻歌した曲だね。気にいったんだね」
「そんな曲知らないよ」
「ああ、兄上は知らないですよ。俺が作曲した曲です」
「そうなのね。マルクは作曲もできるの?」
「いや、そうじゃないですよ。ユリア義姉上。たまたま、鼻歌で歌った曲ですし」
「でも、いい曲よ」
「ん、いい曲」
「うん、さすがマル君だね。多才だよ」
「なんだか、マルクは驚くことばかりだよ」
はあ、危ない。前世で聞いたメロディーラインだった。
それから俺はアランと遊んだ。アランは何故か俺がいると安心するようだ。
「本当にマルクが好きね」
「ああ、なんでだろうな」
「だあ、だだだ」
「ああ、アラン、これはモウモウだ」
「だ、ダウダウ」
「そう、モウモウだ」
「ダウダウ、ダウダウ」
「こっちはワンワンだよ。アラン」
「ん、ワンワン」
「ダウダウ」
「あ、聞いてくれない」
「ん、マルクばかり」
「すみません。メル姉、エルカ姉様」
「マル君は悪くない」
「ん、マルクは悪くない」
「まあ、しょうがない、何かあるのだろう。マルクが好きな理由が。なあ、アラン」
「・・・」
「あ、アルフ兄も」
「ん、聞いてない」
「アランよ。父上は悲しいぞ」
「だあ」
「俺かな?次ってことだね。これはブーだよ」
「ダー」
「そう、ブー」
「ダー。ダー。ダー」
「それもブー、それもブー、それもブーだね。頭いいなアランは。兄上、アランは兄上に似て頭がいいですよ。」
「そうか、頭いいか。アラン」
「だあだ」
あ、頭を撫でた兄上の手をはねのけた。兄上が悲しそうだ。
「ダー、ダウダウ」
こうして今日は過ごした。
翌日
兄上は鎧姿に着替えて、王宮に向かう。今日出征する。頑張ってほしい。兄上の出征を見送る。今日は学院も休日になった。出征の見送りに行く生徒も多いため。
「父上、母上、ユリア、メル、エルカ、マルク、アラン、行ってきます」
「ああ、アルフ、生き残ることを大事な。頑張ってこい」
「はっ、父上」
「ほら、アラン、お父さんがいくよ」
「だああ、だあああああああああああああ」
ああ、泣いちゃった。悲しいんだな。
「アラン、泣くな。父上はアランやユリアを守るために頑張ってくる」
「パパだー」
「すまんな、アラン」
「だあああ」
皆で見送った。俺やユリア義姉上らはこの後、広場に行き、もう一度見送りに行く。父上とメル姉とエルカ姉様は先に王宮に行き、兄上らの出征を王宮で送り出す。俺と義姉上は出征を広場で見送る。
そして広場に来た。俺はアランを抱えている。
「アラン、兄上が来るぞ。笑顔で見送ってやれ。これから大変なお勤めだ。笑って送ろうな」
出てきた。兄上は一番前の馬にいる。皆に手を振る。
「「「「「「「「「「王国、万歳。陛下、万歳。アルフ将軍、万歳」」」」」」」」」」」」」
と王都民の声が響く。アランは驚いた様子で俺を見る。
「大丈夫だ。アラン、アランの父上を皆が祝ってるんだ。アランもやるぞ。万歳」
「ダダダー」
「万歳」
「ダダダー」
兄上と目があった。兄上はアランがダダダーと言って手をあげるのを見て嬉しそうだ。こうして、兄上を見送った。




