引退
翌日
俺は朝から訓練を終えて、学院に行く。そして生徒会室に行き、昨日の対抗戦の資料を最終確認して、資料を完成させた。
そして一息し、引き継ぎ資料をまとめ、明日、リーゼらと確認したら、生徒会長引き継ぎ式をして、生徒会長を引退する。正式には翌週の集会で挨拶して引退だ。この集会は生徒会の代替わりを伝え、新たな生徒会長が方針などの演説をする会だ。
そして、放課後に訓練室に向かう。
「では、本年度の実践戦闘研究会と」
「魔術詠唱研究会の合同引退式をします」
ケビンがゆっくりと話し始めた。
「まずは、実践戦闘研究会を代表して、部長のケビン・レベンスが先輩方に言葉をお送りします。先輩方、引退、お疲れ様でした。実践戦闘研究会はまさに先輩方が作った部活でした。
ここは多くの者が集まり、自身の可能性を見つける。そういった部です。それは先輩方が皆で作られたのだと思います。これほどすごい部を作られた先輩方には感謝しかありません。本当にありがとうございました」
「「「「「ああ」」」」」
「続いて、私、魔術詠唱研究会の部長、テオが部を代表をして皆様に言葉を送らせていただきます。まずは皆様、引退、お疲れ様でした。ここまで部があるのは全て先輩方のおかげです。1人1人が皆、英雄です。悩み、苦しんだ時は、どうぞいつでもここに戻ってきてください。そして、特別にルーナ先輩とマルク先輩に言葉を送らせてください。
先輩たちこそ、魔術詠唱研究の太陽と月でした。お2人がいたから今の私たちがいます。マルク先輩はまさに太陽です。全員が暗い時は明るくし、どんな者も皆、惹かれてしまう。そんな人でした。そして、この部活が今あるのはマルク先輩の魔法理論があるからです。ありがとうございました。
そしてルーナ先輩はまさに月のような人です。いつも部員1人1人を静かで、優しく、支えてくれました。辛い時、研究うまくいかない時はいつもルーナ先輩が声をかけてくださり、それにどれほど救われたか。本当にありがとうございました」
「「「「ううう」」」」
ケビンも、テオもいいこと言う。先輩として嬉しい。
「次はレア先生」
「はい。皆さん、二年間ですかね。お疲れ様でした。私は皆さんに顧問らしいことはできていません。いつもルーナさんとマルク君が顧問のように皆さんを照らしていました。2人を尊敬しています。そして、この部を大きくしてくれた三年生全員を尊敬しています。顧問としてOGとして、皆さんは最高の部員でした。今までお疲れ様でした」
レア先生、俺が先生を尊敬しています。
「次はシグルソン教官お願いします」
「ああ、まずはお疲れ様だ。でもな、お前たちの人生はまだこれからだ。大変な事が多い筈だ。情勢もよくはない。だけどな忘れるな。お前たちの代には決して諦めるという言葉を知らないバカがいる。そいつはものすごいぞ。
お前たちを置いていくくらいのスピードで駆け抜けていく。だからな諦めるな。辛い時はここを思い出せ。俺はいつでもここにいる。相談くらいは乗ってやる。元気ならいくらでも稽古つけてやる。俺の教え子よ。負けるなよ」
はい、シグルソン教官の教えを胸に頑張ります
「ついで、ロドリス先生お願いします」
「はい。皆さん、お疲れ様でした。思い出すのは、マルク君に1日だけでいいからと教官を頼まれた日です。私は軍師時代は評価がよくありません。凡庸と言われました。しかし、そのかわりにたくさん戦術を学びました。それを評価されて、今学院にいます。
そんな私ですから、戦術研究会の顧問は頼まれておりません。しかし、マルク君だけは先生が教えてくれれば、きっと部員のためになると何度も言われました。そして来てみると、皆さんが戦術を学びたいと熱心に聞いてくれました。嬉しかったですね。
いい生徒に出会えたと思いました。時には部活動のない時間に来て質問してくれる方も一杯いました。ここは本当にすごい部です。それを作ったのは皆さんです。誇っていいですよ。本当にお疲れ様でした」
ああ、懐かしい。ロドリス先生はいい先生でした。本当に無茶お願いばかりだった。先生に支えられていたな。
「・・・・では、先輩方にご挨拶をいただきます。まずは前部長、アレス先輩」
「ああ、まずはみんな集まってくれてありがとう。こうして引退式をできる事が嬉しいよ。
俺はこの学院で決して勝てないライバルであり、友達の、ある男に出会いました。そいつはいつも問題を起こすけど、みんなの幸せばかりを考える変なやつでね。俺は振り回されました。
でもね。本当に面白くて、楽しかったよ。そしてそんなマルクと一緒にこの部を作った。最初はね。他の部と兼部だったから、マルクに頼りっぱなしだったよ。
この部はね。最初は兼部か先輩しかいなかったんだ。マルクの行う部活動は面白くて、だから、こっちにばっか来るようになって、それでマルクが生徒会に入るときに部長になった。
大変だったけど楽しかった。最高に幸せな部活でした。みんな、マルク、ありがとう」
アレス、感謝したいのは俺さ。ありがとう。
「次は、ヨークス先輩」
「ああ、ケビンありがとう。みんなもありがとう。俺も引退式をしてもらえると思うと嬉しいよ。最初俺はマルクに突っかかった。
それなのにマルクは許してくれた。父のしたことは父の問題と。それが嬉しかった。それからは一緒に行動するようになった。最初は俺が許されていいのかって思ったけど、マルクは『え?ダメなの』って言われて、悩みなんて吹っ飛んだよ。
俺はなんて小さいんだと。最初の頃のスキルだなんだにこだわった事がなんて馬鹿な事なんだって思えた。
それから武術の部活には入れないってマルクが言うから他の部活に腹が立った。同時にマルクが作れば、面白い部になると思い『作れば』と言ったらすぐに作るんだ。最初は呆れたよ。顧問が決まらない時は学院長を脅してやらせるとか言うんだぜ。
それから毎日、ただ楽しくて、日々はあっという間に過ぎた。だから言う。みんな諦めるな。いつでも、どこでもやり直せる。それがみんなに残せる俺の唯一の経験だ。頑張れ」
そうだね。ヨークスがやり直したのは誰もが知っている、それを見て勇気付けられた。
「続いて、マーク先輩」
「ああ、ケビン、みんな、今日はありがとう。
俺はレオサード家だ。これは誇りでもあるし、汚点でもある。祖父がした事をいつも申し訳なく思っていた。だが、マルクは気にもせずに何が?って言うんだ。それに驚いた。
俺はもう悩むのはやめた。それからはマルクやアレスやヨークス、ルーイらと切磋琢磨して、ルーナやレオナらも加えて毎日楽しんだよ。
最高の学院生活だった。俺はな、道を間違えてもしょうがないと思う。でもな、そこから戻れないとダメだ。間違える事が悪いんじゃない。
間違えた事に気付いた時に戻らない事が悪い。それを忘れるな。俺らはまだ若い。それ故に間違える事もある。
そんな時に友達の声に耳を傾けて、道を間違えてたことに気付いて欲しい。気づいたら、素直になれ。そうすればきっと大丈夫だ。それを最後の俺の言葉とする。みんなありがとう」
そうか、マークはそんな風に。でも俺も支えてもらった。生徒会副会長も助かった。
「次はルーイ先輩」
「ケビン、みんなありがとう。今日で引退だなと思うと不思議だよ。俺はこの学院に入って、マルクに負けた。小さい頃から無敵だったから、それが悔しかった。
で、マルクに言われたスキルを使いこなせてない。スキルがいくら良くてもてんでダメという言葉に衝撃を受けた。スキルを使わないマルクに、スキルを使って負けた。
それから地を這いずりまわって頑張った。それでもマルクには勝てなかった。そしたらマルクに言われたよ。スキルを使いこなせるようになったね。それが嬉しかった。
間違ってないって承認してくれたみたいで。それからはこの部活を一緒に初めて、そして共に頑張った。俺はマルクたちとはいつも負けた。ヨークスにも、アレスにも、マークにも負けた。
でも、今年、やっと勝てた。この前の対抗戦はクリス先輩にも勝てた。嬉しかったぜ。俺の目標で、尊敬するのはマルク・ドンナルナだ。
マルクがこれからどんな事をするかわからないけど、俺はそんなマルクに胸張って友達で居られる自分を目指し、これからも努力する。だからな、みんな一つだけみんなに教える事がある。
いつも努力しろ、ここまでくればいいとか、俺は強いとかそういうプライドに縋るな。それにいいことはない。それが教えられる唯一だ。みんな今日はありがとう」
ルーイが頑張ったのは知っている。陰で誰よりも。俺も負けたくないって何度思ったか。ありがとう。
「次はレオナ先輩」
「うん。みんなありがとう。ケビンも。私はここに入れて幸せだった。多くの人に出会えたし、多くの人と笑いあえた。本当に面白いことばかりだった。
ここに入ったのはマルクといたからだね。マルクは本当に常識がないから、アレスも言ってたけど、することなすこと、驚くことばかりだったな。でもね。それでみんなが幸せになるんだよ。
まあ英雄よね。少なくとも私たちの代にとってマルクが英雄ね。そんな英雄が作った部活にいるみんなは今ものすごい幸せだよ。頑張ってね。ありがとう」
レオナ、英雄じゃないよ。いつも支えてくれたレオナのおかげだよ。ありがとう。
・・・・
他の実践戦闘研究会の面々が続く。
「では、続いて魔術詠唱研究会の卒業生に御言葉を頂きます」
・・・・・・
「ではルーナ先輩」
「ありがとう、テオ、そして魔術詠唱研究会のみんな。私はこの部活に入ってよかったです。この部活に入った当初、私は問題がありました。マルクに迷惑や裏切りをしました。
それでもマルクは許してくれました。そして、先輩やレア先生も。私にとってこの部活は今を作ってくれた部活です。未来をもらった部活です。ですから絶対に守りたかった。ミリア先輩にも託された。
結局はいつもマルクに助けられました。マルクは笑って、私のできないことをしていきます。私の尊敬する人も、恩人も全てマルクです。本当に今までありがとう。
マルク。そして皆さん、私の大好きなこの部に入ってくれてありがとう。みんなのおかげで笑顔で引退できます。みんなに託すね。先輩からもらった絆を。これからも頑張ってね。ありがとう」
俺も沢山助けられて、支えてもらったよ。ルーナありがとう。
「では最後に魔術詠唱研究会に最も貢献した、前副部長にして」
「実践戦闘研究会を作った初代部長のマルク先輩に言葉をもらいます」
「ああ、最後を仰せつかりました。みんなありがとう。先生方、本当にありがとうございました。先生方やみんなの言葉を聞いて、本当に俺は恵まれているって思う。
みんながいたから楽しかったし、強くなれた。ここにいなかったら、みんなと出会わなかったら、多分心が折れていたよ。
学院の入学式でレオナとアレスに会って、そしてルーナと授業が始まる前に仲良くなって、先輩方と親しくしてもらって、一学期の終わりにマークと仲良くなって、課外授業の時にヨークスやルーイと仲良くなってね。友達が増えていく度に強く、楽しくなったよ。
そしてロドリス先生やレア先生、シグルソン教官らに支えられて、今があるよ。そして、後輩ができて、強くいたいと思えた」
みんなの顔が。
「俺はスキルがわかった時、誰からも否定されたよ。そして無視された。でも今はみんなが俺を見てくれる。支えてくれる。それがどれだけ力になったかな。わからないくらいだね。みんなのありがとうの倍以上に、俺はみんなにありがとうって伝えたいよ。最高の学院生活をありがとう。そして後輩のみんなはこれからも頑張ってね」
みんなが涙した。俺もつられて涙をした。
これで終わりだ。俺の学院生活は。あとは卒業式だけ。
翌日に生徒会で集まり、生徒会の仕事を終わらせたあとに、リルニアに引き継ぎをして終了した。そしてそれから6日後に引き継ぎ集会があり、引退の挨拶をして万雷の拍手をいただき、生徒会長の任を解いた。




