文化祭 3日目②
「ふむ。いい試合だった。まだ早いな。13:00か、予定は14:00だろ?」
「ええ、そうですね」
「そうですよ。陛下、ぜひマルク君とアレス君の試合を見たい。学院最高峰の試合が」
「ふむ、観客の皆よ。儂は昨年の優勝者マルクと準優勝者アレスの試合が見たいと思う。予定より早く終わったことだ。どうだろう?」
「「「「「「わあああああ」」」」」」
観客の目が俺に注がれる。俺はマークとリーゼを見る。2人はいけと首で合図する。しょうがないか。アレスを見ると、やろうと訴えている。
「わかりました。アレスがいいならやりましょう」
アナウンスがなる。
「マルク生徒会長は陛下の願いに乗ったようです。アレスさんはいかがでしょう?」
「わかりました」
「おおっと、ここでマルク選手とアレス選手の御前試合が決まりました。模擬試合となりますが、では十分後に始めます。観客の皆様はもう少しお待ちください」
「「「「「「おおおお」」」」」」
地鳴りのように歓声がなる。
「リーゼ、マーク、すまん」
「いや、マルクのせいじゃない。上は俺に任せろ」
「はい。こちらも後のことは任せてください」
「ああ、頼む」
そして試合が始まる。多分、アレスと戦う最後の試合だ。
「急だが、両者いいか?」
「「はい」」
「では、始め」
俺とアレスは対峙する。お互いの手は知っている。だがそれはあくまで去年まで。今年のお互いの成長はそこまでは知らない。
アレスはいつも通り、動き始める。スピードがまた早くなっている。俺もこれは武闘オーラと疾駆を使ってもついていくのは大変だ。
スピード戦は昨年同様に、音だけが聞こえる。止まっているかに見える領域を超え、お互いに複数いるかのような残像を残す領域に来た。マッハとかだと、3ぐらい。人の認識を超える。
人として形を残せる最速領域だと思う。俺はギリギリついていける。しかしアレスのスピードに翻弄される。カキンという音だけが会場に鳴り響く。
「これはすごいですね。もう速さという領域では、お二人が国内最速でしょう」
「そんなにですか?」
「ええ、アルフ様がついていけるか?です。それだけが強さではないですが」
「なんと、国内最速の戦いとなりました。私には2人が数十人に見えます」
観客は息を吸うことも忘れるように魅入る。
こうして、速さを求めた戦いは勝負がつかずに一旦終わる。
「スピードでは勝負がつきませんでした。アレス様の方が早いですが、マルク様が十分についていったというところです」
ゼルの解説が入る。
そこからはお互いの力を試すように、間合いの取り合い、打ち合い、そしてスピードと勝負していく。勝負は決着へと進む。俺の集中力が高まる。あの力が出始めた。俺は暴走しないように気合を入れてコントロールする。もうコントロールをできる。ただし、本気は無理。本気の少し手前まで。
打ち合いとスピードで俺が凌駕し始める。でもアレスはもう一段階ギアを上げた。スピードは変わらないが加速力が早まった。急なトップスピードだ。これは対応が難しい。
だが俺は暴走ギリギリまでスキルを解放していく。俺が周りのマナを飲み込んでいく。俺の中にある力が増大する。そこで、アレスを完全に捉える。
一撃はまたもアレスに入る。そしてアレスは吹っ飛ぶ。リングアウトだ。アレスにエルカ姉様が近づくがアレスは立ち上がり、大丈夫というポーズをした。俺もギリギリ暴走は防げた。そして、アレスも何とか怪我は防いだ。お互いの力が強くなった結果だ。
万雷の拍手が会場を包む。陛下らも満足そうな顔で頷かれた。殿下が特に嬉しそうだ。
俺はアレスに近づき、腕を取って立たせて、2人で観客に答える。すると大歓声が唸りを上げる。
「すごい戦いでした。正に死闘、学院最高峰の戦いというにふさわしい戦いでした」
「ええ、これほどの戦いを学生がしたということに感動します」
リーゼが実況し、ゼルが同意する。
「では、十分後に武闘会の表彰式と学院対抗戦出場者の決意式を始めます」
リーゼのアナウンスで俺とアレスはリングを後にする。エルカ姉様がアレスに回復魔法をかけ、アレスは普通に歩けるようになった。大丈夫そうだ。
そして、表彰式が始まる。
「まずは殿下にお言葉をいただきます」
「ああ、実に素晴らしい一戦を多く見せてもらった。これぞ、王国の未来という、期待をもらった。見に来た者らは皆に語れ。王立学院に王国の未来はある。王国は繁栄の時を迎えたと。私は実に誇らしい」
「殿下、素晴らしきお言葉ありがとうございます。1生徒として、誇らしい気分で一杯です。続きまして、表彰を始めます。4位マーク選手、ヨークス選手。2位ケビン選手。1位ルーイ選手です。どうぞリング中央にお越しください」
「では、陛下より、それぞれの選手にメダルの授与をしていただきます」
「うむ、マークよ。よくやった」
「はっ」
「ヨークスよ、感動したぞ。さらに励め」
「はっ」
「ケビンよ。お主はこの一年、努力をよくぞして来た。その努力の証だ。励み続けるんだ」
「はっ」
「うむ、ルーイよ。お主のような国民を持ち、儂は誇らしい。これからも励み、王国を盛り上げてくれ」
「はっ」
「陛下、ありがとうございます。では最後に、陛下よりお言葉をいただきます」
「うむ。まずは素晴らしき戦いを見れたこと、感謝しよう。王立学院は実に良き生徒を育てた。今日の4人を始め、素晴らしき生徒が多い学院はこの国の未来、誇りだ。この学院に通う生徒よ。どうかこれからも励み、そしてまた国民に夢を見せてくれ。お主らの未来は、今の暗い情勢において、最高の夢だ。どうか励み続けよ」
「「「「「はっ」」」」」
「「「「「おおお」」」」」
「「「「「「陛下、万歳。ベルナルク王国、万歳」」」」」
こうして、表彰式は終わり、決意式にてそれぞれが決意を述べ、今日は終わった。
切れ目の問題で2話にしてしまった話なので、今日は2話投稿します。




