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文化祭3日目①

翌日


今日も訓練はなしで、学院に向かう。俺は生徒会室に行き、生徒会と今日の最終打ち合わせをした。そして学院長室に向かう。すると、近衛騎士団団長がいらっしゃった。

「お待たせして、すみません」

「いや、いいよ。マルク君」


「近衛騎士団長、父上と兄上がお世話になっております」

「うん。前置きの挨拶はいいよ。陛下と殿下がいっらしゃるから」


「はい、では殿下と陛下がいっらしゃったら、闘技場の待機室に入っていただきます。ここです」

地図を広げ、指を指す。

「ああ、去年と同じだね」


「はい。その後開始のアナウンスの後、陛下と殿下にご登場いただきます。そして、陛下にお言葉を頂戴し、始まります」

「うん、去年と一緒だね」


「陛下と殿下のいらっしゃる所には宮廷魔術師と宮廷回復士の方に結界を張っていただいております。ここです」

「うん、去年と同じだね。メル君とエルカ君かな?」


「はい。そうです。そして試合が終わるのは14:00を予定しております。そこから表彰と殿下と陛下にそれぞれお言葉を頂戴して、学院対抗戦代表の決意式を開催します」

「うん、去年と違って、殿下にもお言葉を頂戴するか。喜ぶね。それと決意式は陛下と殿下はいらっしゃる方がいいのかな?」


「いえ、決意式が開催される前に陛下と殿下にはご退場いただく流れとなります。簡単に言うと、代表者をアナウンスで紹介して、陛下と殿下にお言葉をもらい、ご退場なされた後に決意式となります」


「そうか、それはいいね。じゃあ、近衛騎士団と騎士団の警備は陛下と殿下のご退場を持って、終了かな?」

「はい」

「わかった。あと、コーネリアス様も見に来るって。よろしくね」

「え?」


「なんか、見てみたいんだって、まあ、警備は変わらないから大丈夫。お言葉もいらないよ」


と、近衛騎士団長と打ち合わせをして、俺と近衛騎士団長は学院長に挨拶し、闘技場に向かう。闘技場では騎士団長と近衛騎士団長が警備の打ち合わせをする。騎士団団長がこっちをチラチラ見てる。あれの件かな。まあ、挨拶はいいだろう。


そして、陛下と殿下とコーネリアス軍務大臣がいらっしゃった。お付きに近衛騎士団の父上と兄上が陛下と殿下の警備に来られている。


「陛下、エドワード殿下、コーネリアス様、本日はお越しいただき、誠にありがとうございます。生徒を代表して感謝を申し上げます」

「ああ、期待しておる」


「うん。ただ、マルク君は出ないんだよね。残念だな」

「あれ、マルク殿、私がいることに驚いてませんね。近衛騎士団団長が言ったかな?残念。驚かそうと思ったんだけどね」


「はっ。陛下、お言葉ありがとうございます。殿下、生徒会長なので申し訳ありません。コーネリアス様、先程、お聞きしました。聞いた時は驚きました」

「そうか」

「はい」


「そうかあ。残念だね。まあ、でもね、いい子は他にもいるからね」

「そうですね、殿下。マーク君、ルーイ君、ヨークス君と凄いって聞いているよ」


「ええ、殿下、コーネリアス様、さらに今回はケビンという2年生もいいです」

「そうか、新たな子も出てきたんだ。ケビン君は去年、いい戦いをした子だね。これは楽しみだよ」

「はっ、きっと殿下を楽しませることができる戦いをお見せできるかと存じます」

「ああ」


そして、アナウンスがなる。

「殿下、陛下、では」

「ああ」

「はい」


「コーネリアス様は先に入場となります」

「わかりました」


「では、本日のご来賓の方のご登場です。まず、軍務大臣コーネリアス・フォン・ガリシアン様です」

そのアナウンスに従い、コーネリアス様にご登場いただく。


「そして、本年も陛下と王太子殿下にお越しいただきました」

「陛下、殿下、御成〜」


お2人がご登場なされる。それに続き、俺はひっそりと登場する。生徒会長は例年、実況をするが、俺はしない。リーゼに任せた。


「では、本年もお越しいただいた陛下にお言葉をいただきます」

「うむ。皆、今年も来させてもらった。王立学院生の努力を見せてもらう。今日は4人の戦いだが、この4人の戦いを見て、王立学院の生徒がどれほど頑張っておるかわかる。代表する4人は頑張るよう」

「「「「はっ」」」」


「陛下、お言葉ありがとうございました。では続いて、生徒会長のマルク・ドンナルナより開催の挨拶をします。生徒会長よろしくお願いします」


「はい。ではこれから王立学院武闘会を始めます。今日の戦いは後日行われます学院対抗戦の代表同士の戦いです。選ばれた名誉をかけ、陛下、殿下の御前で戦う名誉を胸に全力で戦ってください。観客も皆様もどうか、彼らを応援してください」


「はい。生徒会長ありがとうございます。では準決勝第1試合を10分後に始めます。選手はご用意をお願いします」


そして10分後。

「では、これから、準決勝第1試合を始めます。実況には昨年度に引き続き、ゼル様に来ていただいております」

「よろしくお願い申し上げます」


「はい。第1試合はマーク選手とケビン選手です。共に実践戦闘研究会に所属する2人。マーク選手は昨年のベスト8で、今年生徒会副会長です。対するケビン選手は実践戦闘研究会の現部長となります。お互いに手の内はわかっている2人の戦いです。果たして、どうなるか。ゼル様、この試合はどう見ますか?」


「ええ、いい試合になるのは当たり前でしょう。昨年からどう成長したかが勝負です。どちらも戦い巧者ですから、お互いの土俵に持ち込めるかが序盤のポイントになります」

「ありがとうございます。審判のシグルソン教官がいらっしゃいました。始まります」


うん。実況は悪くない。いい繋ぎで、観客を飽きさせずに、邪魔にならないところで終わる。リーゼ、いい仕事だ。


「では、始める。準備はいいか?」

「「はい」」

「では、・・・始め」


お互いに対峙する。かたや剣と盾、かたや槍。お互いも気合は十分だ。間合いの取り合いになった。ゼルの言う通り、自分の土俵に持ち込みたい2人だ。


ケビンはフェイントを入れながら、マークを揺さぶる。しかし、それくらいでは揺さぶられないマーク。玄人好みの戦いだ。お互いの間合いにするために、一歩も引かないせめぎ合いだ。半歩がお互いに遠い。


「ケビン君は間合いの駆け引きが上手くなったね」

「はい。細かい技術の進歩がよりケビンの強さを引き出したようです」

「ああ、そういうのはあるね。いい試合だよ」

「ええ」


ケビンが仕掛けた。間合いを詰める。自分の間合いにした。いや今度はマークが詰め、自分の間合いに持ち込む。ケビンはたまらず、後ろに交代した。位置取りが悪くなった。ケビンは大丈夫か?


「うむ、今のは安易だな」

「ええ、安易ですね。ですが、何かありそうです。誰でもわかるミスですからね」

「うむ、そうだろうな」


そんな風に、コーネリアス様と話す陛下、何か感じているようだ。


多分だが、お互いの力量を試しているんだろう。ケビンも最近のマークがどう動くかを知らない。もちろんマークもケビンの最近を知らない。


だから、どの程度、策で動くか、動いてみて、相手がどう対処できるかを探る。そうして、先程のが数度続く。観客も何かを感じ始め、これから起こることを期待し始めた。


そして、お互いが動いた。力量を図り切ったのだろう。一気に試合は動いていく。マークも自分から攻撃を仕掛け、相手の動きを封じにかかる。


対してケビンはマークの攻撃を避けながら、防御の隙間を槍術で攻めて、主導権を握ろうとする。激しい打ち合いになった。先程までの玄人好みの間合いの図りあいから、一点、誰もが見ても楽しい、激しい打ち合いになった。


観客席がわく。両者のスピードと打ち合いがどんどんと激しく、速くなる。まるで、音楽のフォルティッシッシモ、だんだんと強くだ。


その激しさに観客は飲み込まれ、まるで2人が指揮者で、二人の武器が指揮棒のような、観客がオーケストラのように、会場はどんどんと熱気に侵されていく。声援が会場の中を満たしていく。


「うむ。見事な試合だな」

「ええ、これで学生、しかも王立学院生なのですから、驚きです」

「ああ、これだよね。見たいのは」


と3人がそれぞれの感想を述べていく間も試合は激しさを増す。お互いの剣と槍がぶつかり合う。どっちがこの打ち合いを制すかで、試合の主導権が決まる。


そして打ち合いは終わる。マーク、ケビンの両者はボロボロになっている。しかし、僅かだがマークの方がダメージが軽そうだ。これが一年の積み重ねの差だ。ここは小さいが大きい。それでもケビンが本当に頑張っている。たった一年でここまで来たんだ。


何度かの打ち合いをして、試合は決着に進む。ケビンがついに魔闘を出す、対してマークもスキルを使う。2人の戦いは一気に勝負へ。激しい打ち合いを制したのはケビンだった。これには驚いた。ほんの少し、ケビンのスピードがマークを撃ち抜いた。

万雷の拍手が鳴る。祝福の拍手だ。


ついで、ヨークス対ルーイだ。ここは正に手の内を見知った戦いだ。

「では続きまして、ヨークス選手対ルーイ選手です。これは毎年いい戦いをする。激戦必至の戦いです」

「ええ、素晴らしい戦いになるでしょう」


「ではいいか?精一杯戦え。・・・始め」

2人は一気に対峙から打ち合いを始める。お互いの手の内を知っているだけに間合いの取り合いは無駄。ルーイの超加速と完全停止、そしてさらに進化した未来予測がヨークスに襲いかかる。対して、重力操作で触れた瞬間にルーイの剣の重さを変え、ルーイの剣を跳ね返すヨークス。両者ともに、相手の予測を超える一手を必要とする。


「これはすごいな。スキルをここまで進化させるとは」

「ええ、学院生の成長はすごいですね。騎士団の馬鹿共に見習ってほしいです」

「ああ、すごいよ。すごい」

それぞれが興奮なされる。


ルーイが未来予測で見ただろうヨークスの剣の届かない範囲から攻撃をする。ヨークスは重力操作で対抗しようと籠手で触れようとする。そこに超加速が発動する。


籠手を切られ、手に怪我をするヨークス。ルーイが圧倒的に有利になった。ヨークスはスキルに頼りすぎた。そして一気に攻めるルーイだ。


しかし、簡単にやられないヨークスは短縮詠唱で左手を回復する。いい手だ。そこからヨークスは重力操作と盾術を使用しながら、ルーイの攻撃を防ぐ。ルーイの未来予測はそう簡単なスキルじゃない。何度もは使えない。


そしてまた長い打ち合いになる。これは分からなくなった。持久戦になる。そうなるとヨークスが有利か。


だが、予想を覆し、勝利の女神はルーイに微笑んだ。ルーイは徹底してスタミナ強化をして来たようだ。それが勝敗を分けた。


ヨークスの回復魔法は使いが甘く、短縮詠唱にした分、マナの消費を増やしてしまった。詠唱ならばちゃんと計算されたマナを使用できるが、短縮の場合は計算された部分を利用できない。だから、慣れないとマナを多く消費する。そこが勝負の分かれ目となった。


「では、お昼休憩も含め1時間の休憩を挟み、決勝を行います」

リーゼがアナウンスをした。


「陛下、殿下、待機室にそちらでお食事をご用意します」

「うむ」

「ああ」


陛下と殿下のお昼のお食事は宮廷料理人がこちらに運んでくれる予定になっており、そちらをいただいてもらう。


「はあ、マルク君、すごいね。すごかったよね。勝負に分かれ目はルーイ君の始めにあった一撃かな?あの一撃で負傷したのが大きかったよね。そうでしょ?しかし、すごいな。去年の子らが卒業してどうかなと心配したけど、うん。すごいよ」


「はい。殿下、正に殿下の言う通り、あの一撃が原因で勝敗はルーイに傾きました。楽しんで頂け嬉しい限りです」

「そうか。楽しいよ。アルフ、君も滾るだろ・・・・」

殿下のマイペースなところが出た。


「そうですか、マルク殿、どうしてアレが勝敗に」

「コーネリアス様、無詠唱、短縮詠唱の問題点はご存知でしょうか?」


「ああ、魔法と呪文はね。そこまで知らないんだ。教えてくれないかな?」

「はい。問題というのは、マナの使用量です。慣れれば問題ないですが、呪文や詠唱を言わない分、マナ使用を制限する部分を使えません。そうすると、マナの量の調整が難しくなります。慣れないものや、使用時の状況により、普段の倍使うこともあります」


「そうか。それは問題だ。短縮詠唱はメリットばかりに目がいくけど、そういう問題もあるんだね。だとすると、余裕のない時に使えるよう訓練を強化しよう」

「ええ、そういった場面で使用する訓練やそういった時に使用しても大丈夫な運用が必要です。コーネリアス様の腕の見せ所かと」

「ああ、正にそうだね」


そして休憩の時間を超える。

「皆様、大変お待たせしました。お時間となりましたので、決勝戦を始めます。どうぞ観客席にてもう少しお待ちください」

というアナウンスがあり、陛下と殿下、コーネリアス様がご登場する。


「では、決勝戦を始めます。では選手入場です。決勝はケビン君とルーイ君です。いい勝負が期待されます」



「では、始める。お互いに礼。・・・始め」

そして、決勝戦が始まる。ケビンもルーイも準決勝で力を使った。なので、お互いに早い決戦を望んだ。観客もそれを理解したのか、一気に静まりかえり、その時を待つ。


魔闘を覚えたケビンのスピードとルーイの加速、どっちが早いか。それが勝負を分ける。お互いに前衛のスピード型だ。その瞬間のスピード勝負になる。常人が捉えられない一瞬の勝負、試合はすぐに終わった。ルーイが勝った。


未来予測で見たのだろう。ケビンの動きをそれに合わせてアクセラレーションを使った。最後は自分の最初のスキル、もっとも使い慣れたスキル、最高のスキルでルーイが勝った。観客は試合を惜しむような、それでいて、すごいものを見て、感動したというような拍手が鳴る。


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