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煩わしさと託すこと

1週間後


学院が今日から二学期に入る。俺は今日から生徒会だ。何と、リアが手伝ってくれるようだ。二年生、3人と一年生1人、そして、入試が終われば、三年生4人が戻り、学院祭が始まる。


俺は訓練をして、学院に向かう。合宿終了の翌日から生徒会で、執務に追われた。かなり溜まっていた。二年生たちが俺の承認を待つ書類を作って待っていた。


ただ、急ぎの物はなく、俺がいない間に書類を作り、承認待ちのボックスに入れておいたという書類の束をひたすら読み、承認していく日々が夏休みの最後に待っていた。まるでやり残した宿題のようだと思った。


前世で学校に通ったことがないし、学院には夏休みの宿題はない。基本生徒の自主性に任せる方針だ。そのせいで二学期に躓く生徒が少なからずいるが、先生方がフォローして卒業させる。


で、学院にはいると、

「おはよう、マルク」

「やあ、ヨンダル。どう騎士学院は?」

「受かったよ」


「そうか。じゃあ、残りの学院生活は楽しめるね」

「ああ、アレスらと訓練して、騎士学院のランク戦で勝てるように頑張るよ」

「ああ、頑張ってね」


ヨンダルと別れ、生徒会室に行く。それから学院祭の準備の書類をどんどんと片付けて行く。来週からはクラスや部活の学院祭活動内容が予算付きで出てくる。


必要な許可や生徒会で用意するもの、各部活の提示場所の調整などが仕事だ。また陛下のいっらしゃる時間の警備や、宮廷魔術師や宮廷回復士の方々の手配とやることは多い。学院対抗戦の方はもう日時などは決まった。どんどんと書類の山を片付けて行く。もう懲り懲りと思えるくらい。


そして昼になり、休憩に食堂に行く。はあ、疲れた。午後も頑張るしかないか。来週は課外授業がある。一年生たちも頑張るんだ。俺も頑張ろう。


昼食には、アレスやケビンらがいる。

「やあ、みんな休憩?」


「ああ、今食べ終わったところで、ケビンがいたから話してたところだよ」

「そうか、ケビン、合宿ありがとうね。ちゃんと礼を言ってなかったよ」

「いいえ、参加していただき、こちらこそありがとうございました」

「今頃、合宿の礼?」


「ああ、合宿の次の日から毎日、生徒会で書類の山と戦っているから、会えなかったんだ」

「そうか。それは大変だな」

「ああ。ヨークス。早くマークの文官学院に入試が終わって欲しいよ。リーゼらも戻ってくるし」

「大変だな」

「ああ」


「リアが手伝っているようですが、邪魔になってませんか?」

「大丈夫だよ。ケビン。ドンナルナ辺境伯家でしっかり教育されているからね。良い仕事してくれるよ」

「そうですか。自分からしたいと言って来た時は驚きました」


「ああ、合宿の帰りに言われた時は驚いたね」

「へえ。そうなんだね」

「ああ、リアも勉強したいんじゃない?」


「ああ、マルクの悪いところが出て来た」

「ルーイ、どういうことかな?」

「ああ、これが有名なマルク先輩の・・・」


「ああ、これだよ。これは真似しちゃダメだからね」

「はい」

「何かな、アレス、ケビン。うん、何の話かな?」


「まあまあ、マルクは変わらないって話だよ」

「うーん、何かいつもはぐらかされるよね」

それから、ケビンらと話しながらお昼を食べた。


そして、また生徒会室だ。今年初めてやることも多いから、大変だな。今度は後夜祭の用意に関する書類だ。ああ、まだ山がある。これを今日中に片付けて明日には部長たちとの調整の話をする。頑張ろう。


「お疲れ様です。マルク兄上」

「お疲れ、リア。生徒会ではマルク生徒会長ね」

「あ、はい。マルク生徒会長」


「ああ、これ頼むよ」

「はい」

「お疲れ様です。生徒会長」

「ああ、これを頼むよ」

「はい」

・・・


「はい。終わりと。みんなそっちの書類はどう?」

「はい。ちょうど終わりました」

「もう承認待ちボックスに入れてあります」

「こっちもです」


「わかった。あとは仕事もないから帰っていいよ」

「「「「はい」」」」

「ほら、リアちゃん帰るよ」


「あ、はい。マルク生徒会長、お先に失礼します」


「もう聞こえてないよ。書類を今日中に片付ける気だから、静かに帰るよ」

「はい」


それから全ての書類を片付けて、家路に着いた。


翌日


今日も訓練をして、学院に向かう。校門を抜けると、リルニアがいる。どうやら俺を待っていたようだ。

「マルク先輩、先日の件ですが」


「ああ、それは放課後に生徒会室に来てもらっていいかな?」

「はい。わかりました」

「ああ、よろしくね」

「はい」


とリルニアと別れ、生徒会室に向かう。


今日も資料とにらめっこだ。昨日は書類を片付けたから、今日の部活同士の調整をして、あらかた学院祭のことは終了だ。あとは陳情を片付けて行く毎日と何か学院祭の準備で問題が起きれば、解決するという日々だ。


昼食を食べて。午後は少し、生徒会室を出て、訓練場に行き、アレスらと軽く汗を流す。その後、生徒会室に戻り、放課後まで休憩した。


「失礼します。リルニアです」

「ああ、入って」

「はい。マルク先輩、先日の件ですが、受けたいと思います」


「そうか。よかった。これで三年連続で首席が生徒会長だ。よかった」

「心配をおかけしてすみません」


「いや、いいよ。大変な仕事だからね。じゃあ、推薦しとくよ」

「はい」


俺の時はギリギリまで外堀を固められて声をかけられた。俺の時は断られる心配が大きく、早くから声をかけたら、ダメだと思われたらしい。俺はそうしなかった。生徒会長候補になると、部活に集中できなくなる。


だから早めに打診して、生徒会長になるまでの間の部活動を大事にしてもらう。そのために、早めに声をかけた。


正直、生徒会長の勉強なんてしなくても生徒会長がどうすればいいかなんてわかるよ。それに今年の二年生の生徒会員は優秀だから彼らがうまくやってくれる。だから、生徒会長になるまでの時間を大切に過ごしてもらいたいと思った。


「じゃあ、二年生たちに紹介しておくね」

「あれ?まだ学院長の面談があるのでは?」


「ああ、学院長はリルニアなら本人のやる気があれば承認するって言ってたから、形だけの面談だよ」

「そうですか」

「ああ、すぐには仕事はないから、今日は生徒会の仕事を見てもらえば、学院祭までは1週間に一回くればいいよ」

「はい」


「生徒会のみんな、ちょっと手を止めて、紹介するね。リルニアさんだ。来年の生徒会長候補になる。みんなとは来年も一緒だから挨拶しよう」

「「「「はい」」」」


皆が挨拶して行く。二年生は全員が同じクラスで仲が良いそうだ。これなら大丈夫だな。


それで、次は部長を集め、会議だ。

「ええ、皆さんお集まりいただき、ありがとうございます。では面倒な前置きはなしに学院祭の活動内容の調整に入るね。基本的に全ての部の活動は承認するよ。ただ、場所が被っているから、そこを調整する。ええと、被っているのが、闘技場の前の三つだよ。ここに10の部活が申請しているね。ここを話し合うよ。どうしても調整できない場合にはくじ引きね」


話し合いが始まったが、まあ纏まらない。引くことができないようだ。これで部活のアピールが決まるからな。


「はい、決まらないね。とりあえず被ってないところは承認して、被ったところはくじ引きにするよ。じゃあ引いてね」

三つの場所が決まった。まあ、どこでもいい。


「はい。外れたところは違う場所を決めて」

でまた、何箇所かかぶる。んで、話し合いがうまくいかないから、くじ引きをする。また話し合い。そしてかぶる。くじ引きだ。で後一つの部活だ。槍術研究会だ。


最近勢いが最悪で今年の新入部員は7人だ。俺が一年生の時は新入生が40名いた。まあ、自業自得かな。兄上や父上の出身部活だが。


「おい、生徒会長、これは陰謀だろう。お前の」

「は?くじ引きだけど」


「いや、うちに入れてもらえなかったから、そうなるように仕向けたな。最近の新入生が入らないのもお前のせいだ」

「はあぁ。何を言っているのかな。君たちに興味はないよ。そんなことする暇がないね」


「な、お前は自分の父親や兄上がいた部活をなんだと思っている」

ドン、机を叩く音が三つした。ああ、リルニアとケビンとリアだね。怒っちゃダメだよ。リルニアは特に。


一つ咳払いをする。

「君さあ。俺より後輩だよね。口の利き方から学んで来なよ。そもそも、新入生が入らないのは去年からだよね。去年も8名だっけ?それは俺が生徒会長じゃない時だよ。それは何でかな?」

「それは」


「ああ、いい。言い訳は要らないから。それとさっきのだって、闘技場の前を狙わなければ、もっと良いところになったよね。俺の言っていること間違ってるかな?それに俺があの三つに心添えして何になるの?」

「そ」


「だから、言い訳は言わなくていいよ。で、他にもあるよ。去年の武闘会に君らの先輩が出たけど、槍術研究会は予選敗退だったよね。それが部員が減った一番の理由だよ。名前に縋って、訓練してないからそうなるんだ。聴いてるよ。部活とか言って、部室で遊んでるの。それが全ての原因だよ。真面目に活動しなよ。俺の同期の槍術研究会の部員らも騎士学院に落ちて、他の領の兵士学院に受かったってね」

「あ」


「だから、いいって。君も同じだろうね。落ちぶれたのは自身に理由があるんだよ」

「な」

「わかったかな。それじゃあ、その場所でよければ承認するけど、どうする?ダメなら学院祭の出店はなしね」

「それでいい」


「あ、それでいい?」

「いえ、そうさせてください」


「じゃあ、全部承認ね。じゃあ解散。あとは頑張って用意してね」

こうして終わった。これで終わりだ。部長たちと生徒会の面々の顔が青い。あ、最後に殺気を少し出したか。ごめんね。口には出さないけど。


「はい、生徒会のメンバーはもう大丈夫だよ。俺が承認印を押して、リルニアと出してくるから」

「「「「はい」」」」


承認印を押して、職員室に行く。生徒会室は念入りに鍵を閉めた事を確認する。こういう時に大体は槍術研究会の連中が忍び込むはず。ああいうのは行動が読める。

「じゃあ、リルニア、行こうか?」

「はい」


「ついでに、暇なら学院長に承認をもらおう」

「そんなに簡単にもらえるものですか?」

「いいや。俺がさせるだけだけどね」


職員室に着く。

「先生、これが承認した各部活の学院祭活動計画申請書です。確認して承認をお願いします」

「はい。あとで確認します」


「あと、リルニアさんが生徒会長になってくれる事を承認しました。こちらも学院長の承認をもらいたいのですが、面談をお願いできますか?」

「ああ、はい」


「学院長はいらっしゃりますか?暇なら承認の面談を今日お願いします」

「え、今日?」

「はい。どうせ形だけなら早く承認してもらいたいのですが」

「ええっと」


「お願いします」

「ちょっと聞いてみます」

「はい」


「マルク君、リルニアさん、大丈夫だそうです。ただし、マルク君も来て欲しいとのことです」

「「わかりました」」


「失礼します。学院長」

「はい。入りなさい」

「「はい」」


「まず、リルニアさん、よく決心してくれました。こちらは何も問題ありません。学院祭後から一年間、よろしくお願いします」

「はい」


「で、マルク、急に連れてくるのは、ないでしょう」

「そう言いますが、私もリルニアも忙しいのです」

「私も忙しいのですが」


「そうですか。私の進路で騎士学院の元学長とくだらない話し合いで夜、飲み会をする暇はあるのにですか?」

「いや、それは」


「二つ貸しがあるのに返してもらってないですが、いかがしますか?何か取り立てるとなると、そうですね。無理難題を押し付けますが聞きます?」

「いえ。今回のことは不問にします。それで貸し借りは無しです」


「さすが、学院長、話がわかる。あの時、救っておいてよかった」

「どこぞの貴族よりよっぽど怖いですよ。マルク。ガルドと同じくらいに」


「え、そんなこと言っていいんですか?ガルド様に言わなきゃいけないな。そのうち会うからな。陛下の警備の件で」

「すみません。今のは言わないで」


「しょうがないですね。まあ、これでいいですよね。承認書に早く印をしてくださいね」

「はい」


そして、学院長室を出て、生徒会室にリルニアと戻る。まあ、案の定、槍術研究会が鍵を開けようとしている。

「君たちは何をしているのかな?」

「あああ」

「はい。この件は学院長に話しておきます。のちに沙汰が出ると思うので」

「おい」


まあ、襲いかかってきたけど、もちろん秒で俺とリルニアで抑えつけた。そのまま、職員室に連れて行って、事情を話した。最近のこいつらの素行の悪さは問題になり、顧問すら庇うことはない。


そのまま、槍術研究会の面々は幽霊部員の数名以外が今回のことに関わったため、無期限の停学となった。もちろん、槍術研究会の学院祭の参加はなし。


それで、そのあとに生徒会室で片付けをして、今日は帰った。


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