合宿② ルドルフ
昨日、投稿できなかったので、本日2話投稿します。
翌日
俺は今日も朝早く起きて訓練をする。今日はライル様とリアが追加で増えた。リアはレイピアという突きを基本とした剣を使う。さすがはドンナルナ本家だ。剣筋がしっかりとしている。最近は魔術詠唱研究会だけではなく、実践戦闘研究会の訓練にも参加しているようだ。こういう生徒はたまにいる。
さらにシグルソン教官が訓練に参加した。シグルソン教官が自分の訓練をしているところは初めて見た。使う武器はレイピアだった。レイピアが一番得意なようだ。帝国はレイピアこそ騎士の武器という風潮があるらしい。だから教官もレイピアを一番訓練してきたようで、それが一番得意らしい。
ただ、風潮自体は嫌いなようで、他の武器も訓練した結果が多様な武器を使うことや戦術眼などに生かされたということらしい。レアにとってはいい見本だろう。物凄い剣筋だ。一瞬で魅入られるほどだ。
その武器の達人というのはこういう人が多い。ゼルも本気でふるっているときはもう見てしまう。自然とその姿を目で追ってしまうほど美しい。
そして、皆が風呂に入り、ゆっくりしてから朝ごはんを食べた。そして今日から要塞に行く。なんと、今回は数人のパーティーに分かれて、さらに騎士がつき、それぞれで要塞に行くようだ。面白い趣向だ。
俺は、ライル様、リア、ルドルフ、一年生のリンゼル・ルバン(軍師の素質がある子、親も軍師)とマリア・ガウラン様とだ。ついてくる騎士はアカードさんだ。まあ、ここが一番警護対象が多い。
それ故にアカードさんがついてくる。多分ケビンが一番面倒な人を全て俺に預けたのだろう。今回は歩きで行く。馬車で1日ほどだが、歩くと2日半はかかる。途中、二ヶ所の野営地があり、そこでそれぞれ一泊して、要塞に行く。出発前に食料だ何だも買って行く時間もあり、3日を予定している。
「じゃあ、買い物に行き、その後早めに出発します。道中ででお昼を食べて、野営地を目指す。それでいいでしょうか?」
「ああ、いいよ」
「ああ、マルクの案が一番いいだろう。夕方までに野営地に行きたいしな」
「「はい」」
「夜の行進は危険です。私は夜目が効きますが。まあ、マルク様が戦う姿には興味がありますし、戦いが多ければ楽しいですけどね」
「マルク様の言う案がいいでしょう」
脳筋お姫様が一人、変な事を言っているが、みんなが賛成してくれた。
そして、宿場町で食べ物を買い込み、出発する。道は広く、他の班も同じくらいに出発するところも多い。行進の訓練、集団での旅の訓練にいい。何が必要かをしっかりと判断できるかを試すようだ。俺らは最低限の用意で出発する。あまりに荷物が多くても邪魔になり、行進が遅くなる。
ちょうど少し、開けた休憩するスペースがある。旅や行進のために、こういったところを作っているのだろう。ここで、昼休憩をする。ちょうど次の野営地との半分くらいだ。時間は昼を過ぎたところ、いいペースだ。
「皆、ちょうどいい。ここで休憩でどうでしょう?」
「「ああ」」
「「「はい」」」
「そうですね。ちょうどいいと思います」
「では休憩します。そこに切り株のあたりで休憩します。最初は俺とルドルフが見張りをします。他の方はお昼ご飯を取ってください」
「「「はい」」」
「ああ」
「私は見張りをしながら食べますので」
そうして、休憩する。俺とルドルフは見張り役をしている。
「ルドルフ、大丈夫か?」
「ああ、これくらいは問題ない。しかし、実践戦闘研究会は面白いな。多様な訓練で自分にあった道を見つけ、その訓練をできるようにしたいのだろう?」
「ああ。まあ後輩がそう決めたみたいさ」
「もともとはマルクの考えだろう。お前らしい部だと思う。俺は自分の考えに固執した。お前は皆の意見を、生き方を尊重する。誰もが幸せになることを選ぶ。この差か。マルクは大きいな」
「ふ。そんな事はないよ。そんなすごい奴じゃないさ。家族以外には俺の生き方は否定され続けたからね。だから、後輩や仲間の生き方はなるべく否定させたくないだけさ。それに間違おうと、自分の道を進み直すやつは応援したい。苦しかろうと自分の道を進む事を決めたやつは支援したいんだ」
「そうか。ありがとう」
「ああ」
少し沈黙する。ルドルフはまるで、自分を見つめ直すかのように、遠くを見ている。アカードさんが嬉しそうにその様子を見ている。特に問題もなく、俺たちの休憩の番になる。
「じゃあ、ライル様、アカードさんよろしくお願いします」
「ああ、マルク、ありがとうね」
「いえ。何がでしょう?」
「ふふ。何でもないよ」
そして、俺とルドルフは食事をして行く。
少しして
「では、残りの行程を進みましょう。夕方には野営地に入りたいです」
「「「はい」」」
「「ああ」」
「ええ、マルク様」
そして、道中では特に問題なく野営地に着いた。俺らは食事と寝床の準備をして、竃を作り休憩した。周りにはアレスのパーティーなど全部のパーティーが来ていた。まあ、辺境伯軍が道中は整備や警備をしている道だ。問題があるはずがない。
俺らは食事をして順番に寝て行く。俺とリンゼルが最後で、最初がルドルフとマリア、二番目がライル様とリアとアカードさんだ。俺とリンゼルは早めに寝た。俺とリンゼルは数時間寝た後に見張り番に着く。他の班の者や兵で起きている者がいる。各パーティーについた兵はそれぞれの時間に誰かが起きているようにしているみたいだ。
「リンゼル、どう合宿は?」
「はい。楽しいと共に勉強になります。軍師を目指していますが、軍事訓練に参加できたのは凄くいい経験です。またこれから戦場になった要塞やその周辺を見れるのは楽しみです」
「ああ、それは前にレオナも言っていたね」
「やはり。レオナ様は尊敬する先輩です。それにマルク先輩もです」
「そうなの。レオナはわかるけど」
「いえ、ロドリス先生から聞いております。基礎戦術学の授業で、誰も考えた事もない戦術を多く考えついたのが先輩だと。それがガリシアン家の方々すらも学んだというのをお聞きしました。先輩の戦術を現役の軍師である父上も学んでいたのを知っています。
ですからマルク先輩を尊敬しております。個でも強く、戦術でも凄く、将軍にもなれる。そして研究者や発明家としてとびきりにも優秀な方だと。先日の討議でもすごかったです」
「はは。恥ずかしいな。でも先日のはね。ここで学んだ事も多いよ」
「それでも、個の強さを持つ方は戦術を蔑ろにしがちだと、よく聞きます。でも先輩は実践戦闘研究会を立ち上げた当初から戦術の勉強を活動に入れたと聞きました。それが素晴らしいです。その時の一言を先輩らに聞いた時はなんとすごい人かと思いました」
「一言?」
「はい。『皆さんの可能性を拡げる』です。個の強さに固執せずに、色々な可能性を見出す事が重要だと先輩が言ったのを知った時はここに来て良かったと思いました。ケビン先輩もそれを目指しているのはわかります。私は軍師を目指しておりますが、個の強さも磨きたいです。個が弱く、軟弱と言われがちな軍師の見られ方を変えたいです」
「すごいよ。リンゼル。その考え方を貫き通してね。リオナもそうしたいみたい。二人が頑張れば、きっと変わるよ」
「はい」
こうして、色々な事を話しながら夜を過ごした。これもケビンとテオの狙いなんだろう。先輩と後輩の仲を縮める。いい場を提供する。
そして朝が来て、皆が起きて来た。朝ごはんを食べて、出発、途中で休憩をした。その時の最初見張りはライル様とリンゼルだ。
そして、休憩を終え、俺らは次の野営地を目指して、進んだ。夕方前に着いたが、ルドルフが無理はやめようと提案した。まあ、そうするつもりだったが、ルドルフがちゃんと見識を持てている事が嬉しかった。無理すれば着くが、計画では明日の昼に着けばいい。急いで行く意味もない。リスクに対する利益が全くない。
俺はリアと夜番をする。今度は最初だ。
「リア、どう、部活は?」
リアと話す機会が今までなかった。俺は生徒会で忙しいからだ。
「はい。楽しいです。それに勉強になります。女性だからと言われる事もないです。いい環境だと思います。マルク兄上はすごい部を作られましたね」
「ああ、みんなのおかげさ。あれ?魔術詠唱研究会のみ入ったんだよね?」
「いえ、両方に入りました」
「そうなんだ。頑張るね」
「はい。尊敬するマルク兄上と一緒です」
「そうだね」
リアは俺をマルク兄上と呼ぶ。
「友達も多くできました。領では学べない事も多いです。それにマルク兄上とこうして旅もできました。嬉しいです」
「ああ」
初めて会った時から俺のあとをついて回ったのを覚えている。それに辺境伯領に一年のときに来た時も付いて来て、一緒にスピキアーズ領に行きたいと言っていた。兄貴分として慕われている。
と、そんな話からいろんな話をして、過ごした。特にルーナやレオナの話を聞かれた。仲はいいのかなど。何故だろう?
朝になり、皆が起きて来たので、朝ご飯を食べ、要塞に向かう。特に何もなく着いた。他の班も特段何もなく着いた。いい経験になっただろう。先輩が行進の準備などを後輩に教えたから、間違うことはない。
そして、本日は要塞の中を見学して終わった。




