合宿①
兄上の訪問から翌日
今日は朝から学院に向かう。もうみんながいる。
「おはよう、みんな」
「「「おはようございます」」」
そして、全員が集合して、出発した。現地集合組が今年もいる。
道中は完全に安全になり、特に問題はなかった。行きの馬車でアレスたちと話した。
「アレスたちは入試はどうだったの?」
「ああ、全員受かったよ」
「そう、みんな受かったんだ。よかったね」
「ああ、これでリオル先輩たちの後輩になるよ」
「そうか、アレスらは無事受かったか」
「ええ、リオル先輩、来年からよろしくお願いします。ランク戦では勝たせてもらいます」
「はは、アレス、大きくでたね。負けないよ」
「クリス先輩、勝ちますよ。入学するまでにまた強くなりますから」
「ああ、俺らも負けてられないね」
と、クリス先輩、リオル先輩、アレスと話した。アレスも、ヨークスも、ルーイも受かったようだ。
そして9日かけて、辺境伯領に着いた。
「お疲れ様です。実践戦闘研究会の皆さん、魔術詠唱研究会の皆さん」
「この度は、合宿地をご用意いただきありがとうございます。ドンナルナ辺境伯様」
「この度はありがとうございます。ドンナルナ辺境伯様」
「ああ、ケビン君、テオ君、もう少し肩の力を抜いて。そんなに肩肘張らなくて良いよ。そういうのは苦手なんだよ。ドンナルナ家は」
「「ありがとうございます」」
「楽しんでね」
「「「はい」」」
「やあ、マルク、久しいね」
「ええ。ルイン様、世界情勢が悪くなる中、ありがとうございます」
「はは。そんな事を気にしなくて良いよ。まだ未成年なんだから。聞いたよ。アルフが大将になるってね。それにハンニバル様が副将軍で、トーラス君が将軍補佐だってね」
「ええ、兄上も意気込んでいます。トーラス先生は学院をやめて、騎士に戻られたようです。騎士として生きたいと思われたようですね。先生らしいですよ」
「そうか。良い先生らしいけど。残念だね。そうそう、ルドルフを今回の合宿に参加させてくれてありがとうね」
「いいえ。ルドルフは大丈夫ですよ。学院で会いますが、勉強に、訓練に励んでいるようです」
「ああ、去年があれだから、今年の文官学院への合格は厳しいかもしれないけど、本人がやる気だからね。家族としては応援したいよね」
「そうですね。そうだ。今年の年末からは、アルフ兄上の子のアランが家で過ごすことになります。年始にいらっしゃる時には当家にてお会いください」
「ああ、そうだね。アランは可愛いかい?」
「はい。父上はもう祖父馬鹿っぷりがすごいですね。ライル様も早くそういう相手が見つかると良いですね」
「ははは、そうだね。マルクはいないのかな?」
「まだ14歳になったばかりですから」
「そうか。まだまだそうだね」
「ええ」
こうして初日は和やかに終わった。ルイン様も今回の呼び込みは意味がある。世界情勢や帝国やらともめても、辺境伯領は問題ないというアピールと、魔術詠唱研究会の面々による領内の学院の生徒や教師、兵への指導で魔法理論の教育を更なる加速させたいのだ。
昨年から取り組み、かなりの成果を出しているらしいが、それを多くの教員・生徒に広げ、もっと領民の可能性を増やしたり、兵の強化につなげたいという事だ。
その為にかなり良い宿を用意いただき、戦場を見たり、魔獣のいる場所で研究や訓練をさせてくれる。今回はなんと12日の滞在となる。
しかも俺の開発した土を掘り起こす呪文で道が拡充され、兵も強化されている為に、要塞には早く行けるようで、要塞の間に宿場町もでき、領内の発展が進んだということらしい。その為に要塞の勉強の時間もかなり取ってくださるとの事だ。
しかも、要塞との間の宿場町は俺の呪文で、温泉が発見され、かなりの保養地となり、今回の合宿地に貸してていただけた。温泉付きの合宿だ。この町の宣伝に俺らが泊まった事を使いたいらしい。この世界情勢だ。宿場町にも影響はあるようで、今回は呼び込んだということだ。
そして美味しい料理に、温泉を楽しんで今日は終わった。訓練とかは明日から。
翌日
今日は朝から、皆は寝ているが、俺は訓練をしている。今回はゼルは不参加になる。兄上の準備に協力している。これから年末まではそっちを優先することになる。俺は早くから一つ一つをしっかりと訓練していく。ケビンが一緒に訓練している。
槍の訓練を終わると武闘オーラの訓練、横でケビンは魔闘を訓練している。かなりスムーズにできるようになった。今年の二年生で一番強いらしい。ダンジョンもリネニアと一緒に7階に入ったようだ。俺らとそう変わらない。かなり強くなっている。バランスが良いのがケビンの良さだ。魔法も武術も基礎がしっかりしているので、バランスが良い。
武闘オーラを一つ一つして、訓練をした。俺とケビンは一風呂浴びてから朝ごはんを食べた。
そして今日は魔術詠唱研究会中心の訓練だ。俺やルーナらが講師となり、魔法理論に伴う、魔法訓練だ。ほとんどの部員が魔法を撃てるが、早く、正確に撃てるようにする。
しかも短縮詠唱で。そして、辺境伯領の生徒に魔法理論を教え、それを見て先生たちが教え方を学ぶ。他にも、農民の方々に掘り起こしの魔法を、魔法理論と共に教える。多くの人が掘り起こしの魔法を覚え嬉しそうだ。教師陣も教え方のコツを掴んだようだ。
そして午後は魔法を撃てる場所に行き、皆魔法をしっかりと撃って行く。精度の上げ方や短縮詠唱をどんどんと試していく。コツを何度も教えて行く。何人かはある程度は短縮詠唱ができる為のコツを感じたようだ。そんなに簡単にはできないが、コツがつかめれば、いずれはできるだろう。
そして魔法の撃ち合いをする。今回は魔法を早く、短縮詠唱で打つ訓練を試すようだ。徹底している。俺らの時は魔法を戦術に入れる者は使うようにする程度で個々に訓練していた。今は兼部が少ないのもあって、魔法も武術もしっかり使える者を目指すようだ。万能さか。
そこにこだわりすぎないようにケビンとテオに言っておこう。それぞれの可能性を決めた時は自分の個性を大事にすることも大事だ。特化に適する者は特化した方が良い。そういう人間を排除しないようにしないといけないと言っておこう。わかっているとは思うが。
「ケビン、面白い訓練だね。魔法も使える可能性も排除しないということかな?」
「はい。テオやリオニアと話して、両方使いたい者を応援しようと」
「そうか。特化したい者も大事にね」
「はい。そういう者はそういう者で訓練できるよう考えています。ただ、少しは魔法を使える方が良いとは思いますが」
「そうか。特化型も大事にするなら、大丈夫だね。万能のみがいいわけでもない、特化がいいわけでもない。自分に合う型を大事にすることだね」
「はい。そうできるよう、訓練の多様性を大事にしてます」
「そうか。頑張ってね」
安心した。俺に憧れるあまりに万能を重視するかと思ったが、ちゃんと考えているようだ。うちの伝統はちゃんと受け継がれているみたいだ。
「マルク、大丈夫だよ」
「アレスか、そうみたいだね。安心したよ。いい部長になっているみたいだね」
「ああ、マルクを見てきたから、ケビンは間違えないよ」
「そうかな。アレスを見てきたからだよ」
「ふふ。もう二人で何言ってるの?どっちもよ」
「レオナ、そうだね」
「ええ」
そして訓練を終えて、今日は終わった。温泉が疲れを取れる。いい合宿だ。皆満足そうな顔だな。
翌日
今日もみんなより早く起きて訓練する。今日はアレスとリオル先輩、クリス先輩も参加するようだ。みんなのやる気がすごいな。
そして、今日の訓練は辺境伯の兵と合同で訓練する。魔術詠唱研究会は辺境伯領内の学院も教員たちと談義や講義をするらしい。最近の研究の一つに魔法理論の教え方というものがあり、それを部全体で考えているらしい。面白いな。テオはいいことを考えるな。
「アカードさん、お久しぶりぶりです」
「マルク様、2年ぶりですね。最近の活躍ぶりはすごいですね。先日発表された魔道具はもう凄いです。先日数個を発注しました。良いものならば辺境伯軍でも大量に導入しようと思っています」
「もうお知りとは、早いですね」
「ええ、情報、というかマルク様の研究は直ぐに知れるよう、ルイン様が王都にいらっしゃるルドルフ様やライル様、リア様に情報を集めていただいております」
「ああ、そういう事ですか」
「はい」
「今日はよろしくお願いします」
「ええ」
そして、軍事訓練や模擬戦をした。またいい訓練になる。軍事訓練はいい。こんな経験は騎士学院に入らないとできない。それを王立学院でできる経験はすごいな。よく認めてもらえた。ケビンはすごい事を考えるな。
集団の中で学ぶことは俺も多い。軍事訓練はどう個人を捨て、規律をしっかりできるかは凄く重要になる。アカードさんも訓練になると人が変わる。鬼教官になった。
それぐらいじゃないと辺境伯軍の将軍なんてできない。軍師を目指す者、回復士を目指す者も軍事訓練を経験していない者は使いづらい。そういった意味で今回はいい。
本当に多様性がある合宿だ。毎日が色々な事を学ぶ。すごいな。ケビンは歴代で一番いい部長かもしれない。うちの伝統を引き継ぎ、部の色をしっかり作ってくれる。俺やアレスは手探りだった分、色を作りきれなかった。それをケビンが補填して、色をしっかりとしようとしてくれている。
訓練が終わる。ふう、俺でも緊張したし、少し疲れた。戦場に近い訓練はきついな。情勢もあり、辺境伯軍も気合が入っているんだろう。
「お疲れ様です。アカードさん」
「お疲れ様です。マルク様。実践戦闘研究会はすごいですね。辺境伯軍でもこんなにキツイのは年に数回ぐらいしかしません。それに脱落するものがいない時点で学生のレベルではありませんね。しかも一年生もいるとか。辺境伯軍の新人は大体、途中で根をあげます。
ほら。あそこ。ついてこれるものがいるだけですごいのにです。よく基礎をしかっりしている。走る事これができない者はダメです。うちの軍でもそれができない者はとにかく走らせます。それを王立学院の成人もしていない子らができるんですから。正直舐めていました。学院のレベルが高いですね」
どうやら、今回の訓練は特別に気持ちが入った訓練らしい。
「ふふ。シグルソン教官に徹底してしごかれます。それができない者は必死に家で訓練してますよ。強くなりたいという気持ちはどこより強いかもしれません。ただ、学院全体ではないですよ。あれだけの人数がいれば、そうはならないです。それでも近年は高いレベルですよ」
「そうですか。じゃあ、実践戦闘研究会はすごいですね。シグルソン様ですか、確か帝国出身だとか。とても強いとは聞いてます。まあ厳しく笑わない方とも。大変な事もあったでしょうがいい顔をされている。何か彼の方を変えた出来事があるのでしょう」
「そうですね」
「ふふ、マルク、ちゃんと言わないと。自分が変えたって」
「ライル様」
「そうなんですか。すごいですね」
「いや、そんな事はないです。たまたまです」
「マルク様の心の強さを知ると影響されるのでしょう」
「そうだね。プププ」
「ラ・イ・ル様」
「ごめんよ。マルク。笑いすぎたよ」
「もう大丈夫です」
みんなが疲れているようだ。ヘトヘトな顔をしている。ここで訓練を終えた。ゆっくりと温泉に入り、疲れを取った。なお、温泉で騎士学院の先輩らが覗きをしようとして、レオナらに見つかり、説教を受けている。疲れないんだな。すごいなと思う。その後はご飯を食べ、皆でゆっくりとして楽しんだ。




