我が家のアイドル
6日後
今日は父上がお休みで、兄上もユリア義姉上を連れ今日家にいらっしゃる。お子を見せにくるようだ。初めて見る。今年の1月に生まれたが、ユリア義姉上の体調を考慮して今日、初お目見えとなる。
朝から訓練をして兄上を待つ。父上との模擬戦はかなりいいところまで来ている。ゼルともだ。あの力を使えば勝ち負けには行ける。ただ、あの力はまだコントロールできない。使うべきではない。
「うむ。基礎をもう少し磨くことだな。まだマルクには負けないな。あの力を完全にコントロールできれば別だが」
「ええ、私も同じです。あの力をコントロールできるようになられれば、負けるでしょう」
「そうですか。でもあの力はまだ時間がかかりそうです。今は基礎をもう一度磨きます」
「そうか。それがいいだろう。コントロールできる、できないに関係なく、基礎を磨くことはいいことだ」
「はい」
そして、兄上が来た。
「おはようございます。父上」
「ああ、アルフ、ユリア、おはよう」
「この子が、我が息子、アランです」
「そうか。この子がアランか。かわいいな」
父上が完全に祖父の顔をしている。頬が緩んでいる。それでいいと俺は思う。家族の前くらいは英雄じゃなくていい。こういう父上を見てる方が俺は嬉しい。他の人は英雄の父上を望むんだろうがな。
「父上、母上にも見せたいので、そろそろ家の中に」
「そうだな。悪いな、アルフ、ユリア、可愛くてな」
「祖父馬鹿ですな」
「ゼル、昔のマルクを、いや今もマルクを見る目は祖父馬鹿だぞ」
「はは、それは一本取られました」
「く、余裕か」
と仲良く、祖父馬鹿話で盛り上がる父上らを置いて、兄上らと家に入る。赤ちゃんをまだ肌寒い外にいさせるのはどうかと思う。
家の中にはまだかと待っている母上、メル姉、エルカ姉様、アイナにリリアがいた。みんなは可愛い孫、甥っ子にメロメロだ。
「ユリア、おめでとう。無事に子供を産めたわね。素晴らしいわ」
「はい。ありがとうございます」
「母上、メル、エルカ、アイナ、リリア、この子がアランだ。よろしくな」
「はあ、可愛いわ。アラン君、お姉ちゃんだよ」
「ん、エルカ姉様。よろしく」
「メル、エルカ、叔母さんだ」
「それは…」
「アルフ兄、失礼だよ。叔母さんなんて」
「バカ」
「な。そうだろう。マルク」
「兄上、それは違いますよ。メル姉も、エルカ姉様も叔母さんなどという歳ではありません。そこは理解すべきです」
俺は小声で兄上に言う
(兄上、叔母さんではありますが、そう言ってはいけません。それは怒られます)
(そうか。気をつけよう。しかし女性はいくつになっても歳を気にするな)
(はい。女性のそこは気をつけないといけないです)
そして3人がアランを可愛がっているのを見て。俺が出て行ってもアイドルができたと思った。これで一安心だ。アラン、強く生きろよ。
そして、父上らが戻ってきた。まだ、仲良く言い合っている。
「祖父馬鹿で結構です。ラルク様のように、完全な馬鹿ではありません」
「俺のどこが完全に馬鹿だ」
「もう、2人で何やっているの?」
「ああ、リネア。ゼルが祖父馬鹿だと言うからな」
「ああ、それでいいじゃない。私は祖母馬鹿ね。こんな可愛い子の前では祖母馬鹿になるわ」
「そうか。そうだな。それはしょうがないな」
「ええ、さあ、お祝いしましょう。アランの幸せを願って」
「そうだな。早く始めよう。アイナ、行けるか?」
「はい。ラルク様とゼルが戻り次第始められる準備をしております。シェフも、他のメイドもアラン様を見たがっております。早く始めさせてください」
「ああ、頼む」
こうして、アランの誕生の祝いが始まった。
「うむ。よく寝ているな。幸せそうだ」
「ええ、子供は可愛いわね」
「ん。可愛い。子供はいい」
「そうね。可愛いわ。婚姻かぁ」
「お、メル、結婚はいいぞ」
「ええ、いいわよ」
「うーん、考えるわ」
「そうか、それはいいな。もし興味があるなら言え。いくらでも相手を探してやるぞ」
「ふふ。まあ、自分で探します。父上」
「ラルク、焦りすぎよ。まあ、したいならしていいのよ。自分で探してもいいし、相談してくれれば、探してあげるわ」
子供を見ると人は結婚したくなるのか。覚えておこう。
アランが起きた。泣くのか。ああ、笑った。可愛い。
「アラン、起きたのね。あら、笑って。機嫌がいいわね」
「ユリア、お腹は大丈夫そうだな」
「ええ、アルフ様、アランはこっちに来る前にたっぷり食べております。お腹は大丈夫でしょう」
「そうか。アラン、おじいちゃんとおばあちゃんとお姉ちゃんとお兄ちゃんだぞ」
「ああ。おじいちゃんだぞ。アラン、元気に過ごすんだぞ」
「おばあちゃんよ。ふふ。よく笑うわね。何かいいことがあったのかしら?」
「ん。私に会ったから」
「メル姉って呼んでね。アラン君」
メル姉、それはまだ無理だ。言葉はわからないよ。
「マルクも来い」
「アラン、叔父さんだぞ。よろしくな」
ん、手を伸ばしてきた。指を出す。するとニコリと笑って指を掴む。
「おお、マルクが好きなのかもな」
「ええ、そうだといいですね」
「多分、好きさ」
アラン、あと一年もしたら、なかなか会えなくなるから、今は楽しもうな。
そして、みんなでお祝いを楽しみ、過ごした。




