準決勝
本日の夜分、投稿遅くなりすみません。今日の夜はお詫びで2話投稿します
翌日
学院祭最終日だ。俺は訓練をして、学院に向かう。門はもう人だかりだ。この人たちは武闘会の決勝を観に来た人だ。門を抜け、闘技場に向かう。闘技場前には実践戦闘研究会と魔術詠唱研究会のメンバーが待っている。
「やあ、おはよう」
「「「「おはようございます」」」」
「みんな、応援よろしくね」
「「「「「先輩頑張ってください」」」」
「「「「「マルク、頑張れ」」」」
こうして、応援を受け、闘技場に入る。多分皆が受けただろう。俺もこの声援に応えられるように頑張ろう。リオル先輩とアレスかヨークスと戦う。今日も気を引き締めて行こう。
闘技場に入る。メル姉とエルカ姉様だ。結界を張っている。準備はできたようだ。これで戦える。俺は精一杯戦うだけだ。やるぞ。
準備運動する。観客が徐々に入ってくる。闘技場が少しずつ、熱気を帯びていく。観客の熱気が選手に伝わってくる。この世界は娯楽が少ない。だからこういう事に楽しみを感じる。しかも、最近はきな臭い話が多いため、より国民は希望を抱かせるこの武闘会を楽しみにしている。
アナウンスが入る。
「そろそろ、始まるお時間となります。観客の皆様はお席におつきください。陛下がいらっしゃいます。陛下がご登場なされましたら、立ち上がり、一礼をお願いします。出場選手はリングにお越しください」
俺らはリングに向かう。待つと
「陛下、御成〜」
陛下がいらっしゃった。皆頭を下げる。
「頭を上げよ」
「「「はつ」」」
「頭を上げよ。今日は学院主催の武闘会を見に来た。学院生がどれほど頑張っておるかこの目で見たい。皆、儂の前だと肩肘張らずに、ゆっくりせよ」
「「「「はっ」」」」
皆が顔を上げる。父上と兄上が陛下と殿下の横にいる。兄上は少し前に近衛兵に復帰した。
「うむ。昨日、エドワードより、素晴らしい戦いをしていると聞いておる。学院生は王国の宝にして、国の礎だ。君らが強く、賢くなれば、国はしっかりとする。存分に励め」
「「「「はっ」」」」
生徒会の先輩のアナウンスが続く。
「陛下、有難きお言葉、ありがとうございます。では、学院祭武闘会、準決勝を始めます。第1戦はアレス・スピキアーズ選手対ヨークス・カルバイン選手です。2人は準備に入ってください。審判はシグルソン教官、解説にゼル様とカリウス・エルナンデス君に来てもらっています」
「よろしくお願いします」
「よろしくお願い申し上げます」
そして、アレスとヨークスがリングに進む。俺とリオル先輩は控え室に。
「マルク、今日は俺が勝つ。本気で頼む」
「ええ、今日も本気で戦います。負けないように頑張ります」
「では、始め」
アレスとヨークスは対峙する。幾度も訓練で戦って来た2人だ。手の内はもちろんわかっている。戦績は少しアレスが上だ。しかし、勝ち負けはこの2人の間ではほんの少しのことで揺れる。
ヨークスは、盾をしっかりと構える。アレスの動きを捉えてカウンターが狙いか。対するアレスはスピード重視の装い。お互いに自分の強みを存分に出すようだ。
アレスが動く。スピードで撹乱だ。これがアレスの戦い方だ。ヨークスはしっかりと目で捉え、体勢を変え、惑わされないように、しっかりと守る。うん、緊張していないようだ。いい戦いになる。アレスがスピードで撹乱しながら、徐々に自分の間合いに入る。
ヨークスも同じ間合いだ。お互いの間合いでぶつかる。アレスの一撃をヨークスが受け止める。凄い音がなる。お互いに一歩下がる。アレスは力が増した。対するヨークスは動じない心を持ったようだ。お互いにまた自分の戦いに持ち込もうと向かい合う。
観客は悲鳴にも近い歓声を上げる。さらにヒートアップする。2人の戦いはどんどんと加速する。お互いにスピードも速い。アレスに分があるが、ヨークスは最低限の動きで上手く対応する。その戦いはまさに死闘だ。どっちに勝利の女神が微笑むかはまだわからない。長い時間、お互いの良さを出し合う。
観客は急に静かになり、息を飲む。予想を超える凄い戦いに、その熱は徐々に高まりながらも静かに爆発する瞬間を待つ。そして、お互いに息が上がって来た。勝負の時は近い。
それでも勝ち負けが揺れる。俺もリオル先輩も勝負がわからない。どっちがくるか。ただ、俺もリオル先輩もそんな事より次の戦いに集中している。体を動かして次に備える。
試合は動いた。ヨークスが仕掛けた。アレスの一瞬の呼吸に合わせて、一気に攻めた。しかも途中でグラビティソードで軌道を変えて撃つ。アレスは一瞬遅れるが半身引く。これで少しの間を作るが、ヨークスは今度は剣を振り下ろすスピードを上げた。
剣が交錯する。アレスは剣の鍔でなんとか受けていた。そして返す剣で一閃。静まり返る会場、ゆっくりと倒れるヨークス。勝負は決まった。観客から凄い歓声が鳴り響く。その声は会場を包む。陛下は拍手をし、殿下は笑ってらっしゃる。
ゼルから解説が入る。カリウス先輩も2人の駆け引きの凄さを言う。その解説にまた観客は湧く。凄い一戦だ。これが王国の未来だ。
次は俺とリオル先輩の戦い。それが告げられると観客はまた騒ぐ。どちらも最近は有名だ。
この戦いに勝てば、アレスとだが、そんなことよりリオル先輩だ。何度も模擬戦をして来た。その数はアレスと戦った数とそう変わらない。
もう手の内は見えている。お互いの成長も。あとはどう戦うか。それだけ。去年は風魔法を使い戦うリオル先輩に翻弄された。戦い方は正道も、策も使うこともどちらもできる実践派のリオル先輩だ。生半可では負ける。ここは俺の戦いをする。
しかしできない時は対応力で勝つ。どっちも行く準備をする。どっちも己の戦い方だ。相手の土俵だけには乗らない。解説も終わった。始まる。
「では、始め」
対峙する。凄い気迫だ。こっちにヒシヒシと寒気を感じさせる。強い。わかっているがそう言いたくなる。
リオル先輩は間合いを簡単に詰めない。
俺の方が間合いは長い。それを知っているリオル先輩は動かない。俺も自分の間合いにする瞬間を待つ。少しの動きで牽制し合う。それは静かに少しずつ、戦い合う。観客は静かにその時を待つ。解説が入る。間合いの取り合いだと。
俺は何度もフェイントで間合いに入る瞬間を作り出そうとするがそうは乗って来ない。リオル先輩も一瞬詰めようとするも、俺が対応して入れない。その時間は長く続く。
どこまでも続くかに思えたが、小さいが音がする。観客が何かを落とした。その音に軽く、反応してしまうリオル先輩。あまりの集中力のせいだ。
俺はその瞬間を見逃さずに攻める。武闘オーラと疾駆そして硬化をかける。これだけならマナは漏れでない。ここは訓練を積んで来た。
リオル先輩もそれに対応して剣を振るう。しかし俺の槍が一瞬だけ早い。俺の方がスピードは上。しかしそれでも半身で躱すリオル先輩、俺は追撃で連撃をしていく。そのスピードに観客は声を出せない。
カキンという音だけが会場に鳴り響く。俺は連撃の間に魔法を打ち込んでいく。これがリオル先輩にあたる。魔法の速さと上手さは俺が上だ。徐々にリオル先輩の体力を奪っていく。しかしリオル先輩が連撃を抜けた。くそ。もう少しだった。
リオル先輩の様子は明らかにボロボロだ。観客は息を飲む。昨日まで凄い戦いで勝ってきた優勝候補がズタボロになる。しかも俺は無傷である。これには息を飲む。
リオル先輩は起死回生で一気に攻めて来た。うまい連撃だ。俺も一瞬だけ息を吸った。その瞬間を狙われた。あれだけの連撃と魔法を使った。息を吸って整えないと流石にきつかった。
そして攻守が変わり、リオル先輩の攻撃が続く。俺は何とか防ぐ。これを俺が防ぎきれば勝ち、攻め切れればリオル先輩の勝ちだ。長く続く撃ち合いに観客は静まり返ったまま。声など出せない。これは戦いの上位戦だ。そんじょそこらの戦いではない。もう学生のレベルはとうに超えている。
長い撃ち合いは終わりを告げた。リオル先輩が止まった。そこで俺は一気に突きで攻めて勝った。正直かなり厳しい戦いだった。俺の服も最後のリオル先輩の剣戟でボロボロだ。その姿を見て、試合の激しさに観客のボルテージは最高潮になる。
「そこまで。勝者、マルク・ドンナルナ」
その瞬間に、何かが弾けたように歓声が鳴り響く。勝利を告げるファンファーレのように俺を包み込む。少し疲れた。この後、休憩を挟んでアレス戦だ。リオル先輩はぐったりし、タンカで運ばれる。ただ、そこまでの怪我はない。
精も根も尽き果てた。そんな戦いだった。リオル先輩を称える拍手が響く。俺は控え室に戻る。
「1時間の休憩の後に、決勝を始めます」
そう、アナウンスがされる。俺はまだ、戦いから戻れない。滾った心を鎮めよう。
ゆっくりと息を吸って、ゆっくりと吐く。少しずつ、体と心が落ち着いて、戻ってくる。何度も何度も息を吸う。




