スキルの真実
今回は訓練とスキルの考察回です。飲み込むの独自性が見つかります。
次話と合わせて、スキルの真実がまた判明していきます。
それから2ヶ月後
魔法の訓練は姉上や母上の魔法を見せてもらい。それを自分なりの方法に変え、行う。その繰り返しだった。やっと、初級の魔法は使えるようになった。ただ、母上と同じほぼ全ての属性を使えるようになった
そして、父上がスキルが出たのではと、神殿に掛け合い、俺はスキルを調べた。しかし、スキルは『飲み込む』だけだった。
ただ、このことはスキルを知る良いきっかけになった。
それに、父上やゼル曰く、
「マルクは、魔闘ができている」
「マルク様は自然に突きの際に魔闘を使用しております」
だそうだ。魔闘ってマナを纏って戦う技術らしい。
つまり、俺はスキルもなく、誰にも習わずに、魔法も魔闘も使用している。そして槍術もかなりの腕前になっているようだ。原因は確実に『飲み込む』だ。これが原因なんだ。でも何が起きているかがわからない。そうなんだ。ここに問題があって躓くんだ。
『飲み込む』スキルをもっと理解しないと俺はダメだ。そうしないと上手くいかない。ここからが大変だ。スキルを学ぶために、色々と試す時が来たかな。何を飲み込むことができるか?どうやってスキルを発動するのか?まずは、この辺りだ。
今日も午前は訓練だ。
ゼルと訓練場で一汗をかく。まずは踏み込み500突き1000だ。いつも通りにこなす。今では1時間で、ここまでを終了できるようになった。この量は騎士が1日で行う訓練量より多いらしい。騎士は訓練の日は突き200払い100かかり稽古を1時間程度やるらしい。
俺の訓練量の多さは異常だ。最初はその半分くらいを考えていたらしい。踏み込み200、突き500だ。これくらいやらないとスキルなしが一人前になるのは無理と考えていたって、最近、父上に教えられた。実際には想定の倍以上を訓練している。
まぁ、俺としてはこれでも足りないくらい。まだ俺はは半人前にも届かない。もっと訓練しないといけない。だから、ここからが2ヶ月前から始めた切り上げの稽古と守りの稽古だ。
まずは、切り上げの訓練から。
半身になる。重心を両足の中心に置く。そこから後ろの足に力を入れず、グッと前の足をグッと強く踏み込む。
踏み込み始めるのと同時に左手で槍を操作して、突くように槍先を相手の膝下に入れ、前足の踏み込みが最も力の入った瞬間に後ろ足も踏み込み体を引く。
その力を槍先に伝え、一気に捲り上げ、相手を切りつける。これが切り上げだ。
そして守り。守りには3つある。今習っているのは、そのうちの一つである巻き槍だ。
巻き槍の訓練、相手の槍先や(剣の場合は)刃先が突きに動く瞬間に、半身から後ろ足に力を入れ、槍先を前に出す。相手の刃先を抜け相手の武器の中腹あたりに槍先が来る瞬間に前足の力を最大限に強く踏み込む。
そしてその力を使い、槍先で円を描く。そして相手の武器をねじ伏せて奪う。もしくはねじ伏せて武器の軌道を変える。そして半身に戻る。そして、半身戻った瞬間に突きを行う。これが巻き槍からの突きが一連の動作だ。
武器を奪うのは、そうは決まらない。余程の力量差がないとできない。ただ相手の隙をつけるから、体制を崩したり武器の手元を崩したり、そこから一気に突きに行くとか。と牽制にも使えるから必要なんだ。
まだどちらも完璧ではないので、反復あるのみだ。両方とも300回を行う。
ふう、今日も終わった。
「切り上げも巻き槍もだいぶ正しい動きをできるようになりました。両方とも500を完璧に出来るようになったら、次の動作です」
「皆、この訓練をしてきているんだよね。すごいな」
「いいえ、最近はスキル技重視で、このように基本をあまりしません。六動作を蔑ろにする傾向が今の槍術にはあります。スキルが重視されます」
「そうか、俺みたいなスキルなしが槍を使うはずがないか。普通はスキルがあるんだ。もっと簡単に出来るならスキルを重視するんだね。そしてスキルに頼るようになるのか」
「かもしれませんが、私の流派は基本を大切にします。ラルク様もアルフ様も同じく基本をびっしり教えました。アルフ様は最近スキルを重視しているようですが」
「そうか、兄上は『疾風の槍』だからね。今若手ナンバーワンでしょう?」
「ええ、そうですね。ただスキルに溺れないといいのですが」
「まぁ兄上なら大丈夫だよ。それに俺はもっと大丈夫だよ。スキルないから」
「スキルはある、ないに関わらずマルク様は大丈夫でしょう。性格的に基礎を投げ出すことをしません。努力することを捨てる人ではないでしょう」
「まあね。何もないから。強さと生への渇望と貪欲さ以外はね。それらは誰にも負けないよ」
「ふふふ、そうでございますね(まぁ才能はドンナルナ家で最もあるような気もしますが)」
こうして、午前の訓練も終わり、水浴びをして、昼食の時間だ。
「マルク、今日も訓練は頑張ったようね」
「ええ、基本の切り上げと巻き槍をまだ上手く使えませんから、今は訓練あるのみです」
「そう、いいことよ。ドンナルナ家の者は一に努力、二に努力、3、4がなくて、5に努力よ」
「・・はい、母上。訓練あるのみです」
うーん、ここに来て前世の言葉に出会ったか。しかも母上から。
基本この世界の言葉は発音は違うが前世の世界の言葉と同じ意味の言葉がある。だけどここまで言い回しが同じなのは変だ。
なんで母上はこの言葉を知っているんだ?まぁ聞けないな。心に留めておこう。
そうだ午後のために聞いておきたいことがあるんだ。スキルのことを聞いとかないと。
「母上とゼルにお聞きしたいことがあります」
「何かしら?」
「何でしょうか?」
「はい、スキルを使う瞬間はどんな感じなのかです。お恥ずかしい限りですが、未だ、私のスキル『飲み込む』はよくわかないことが多く、特にスキルの発動条件やその内容には皆目見当もつかないのです。なので発動条件を知るためにお聞きしたいのです」
「そう、私はマナが動くわ。魔法スキルが多いからかしら。ゼルはどう?」
「私もマナが動きます。それと同時に気功が動きます。私は武術スキルが多く、気功を使ったスキルが多いので、自然にマナと気功を使っているということが多いですね」
「そうなんだ。それって疲れるの?」
「もちろん、スキルは力を使うわ。魔法スキルじゃなくても、マナを使うものが多いからね」
「ええ、そうです。マルク様はそうではないのですか?」
「うーん。何度か使ってるけど、むしろ使った方が元気になるというか力がみなぎるよ。それに呼吸すると少し回復したように感じる時もある」
「呼吸で?スキル自体は吸収系のスキルや自己回復系スキルに似てるわね」
「そうですね。リネア様の言う通り、私が持つ地力吸収に近いですね。ただ使う瞬間は少しマナを持っていかれますし、多少は自分のマナも使います。基本武術スキルは使いませんが」
「そうね。基本武術スキルは使わないわね。あと吸収系はそうね。自己回復系は体の各部を治すのにマナを使うから、マナを使う代わりに体を回復する感じね」
「うーん。そうですか。お答えいただき、ありがとうございます」
「参考になった?」
「試してみたいことができました。上手くいけば何かわかるかもしれません」
「そう。よかったわ。午後はスキルの訓練よね?」
「はい、母上。あれから、危ないことはないですが、またよろしくお願いします」
「ええ。マルク、後でね」
次は実証実験です。




