アルフに来た幸せ
翌日
アルフ兄上とユリア姉様が家に来る。久しぶりだな。朝から訓練を父上とゼルとする。兄上はもう少し後でくるらしい。
「マルク、今日は俺と模擬戦だ」
「はい。父上」
父上と模擬戦。最近は勝負になり始めている。まだ勝てない。経験の差とゼルには言われる。シグルソン教官やトーラス先生にも勝負はできるが、勝てない。少しの差が大きい。
俺の良い突きが入ると思ったが硬化を使われて、カウンターが決まった。父上に負けた。スキルの使い方、技量、細かな差の積み重ねが勝負を分ける。
経験とも言えるし、訓練量とも言える。どのタイミングとか、どう使うとか、どれを犠牲にしてとかの差だ。それが結果になる。
ゼルともやる。こっちも昔ほどの差はない。訓練されているという感じではない。でも一向に勝てない。タイプが似ているだけに如実に経験の差が大きい。父上とはまた違う敗北感を味わう。
俺は調子に乗れる環境にない。あまりに壁は高い。でも負ける、折れる気はない。ここまで来るのにどれだけ大変か。多くの人に助けられ、支えられてきたんだ。こんなところで折れることはできない。
「マルク、よくなってきたな。まだ経験が俺やゼルとの差だ。細かいところで如実に出る。ゼルとの模擬戦は特にな」
「はい。それを感じております」
「だが、はっきり言って、才能だ何だは俺らよりマルクが上だ」
「ええ、はっきり言って、私の同じくらいの歳の時より数段は上です。私やラルク様の最高の時よりは下ですが」
「そうか」
「まあ、でも私は、最近は魔法を使えますからね。また強くなってきてるかもしれません」
「はは、確かにな。戦場で一緒に戦ってた時より嫌な戦いをするようになった。戦術幅が広がったか?」
「ええ、そうです」
とそんな話をしていたら、兄上がいらっしゃったようだ。
「父上、おはようございます」
「ああ。アルフ、おはよう」
「兄上、おはようございます」
「アルフ様、おはようございます」
「ああ、マルク、ゼル、おはよう」
「中に入るか?」
「はい」
「うむ。ユリアは?」
「もう中にいます」
「そうか」
兄上と共に居間に行く。
「父上、母上、ご報告があります。ユリアが子を身籠りました」
「そうか。よかったな」
「はい」
「嬉しいわ。初孫ね」
「ああ。こんなに嬉しいことがあるとわな」
父上と母上が笑顔で会話する。いつまでたっても仲がいい。
「ふふ、私が妊娠した時も同じこと言ってたわ。ラルク」
「そうか」
「兄上、ユリア義姉上、おめでとうございます。ユリア義姉上、お体をご自愛ください」
「ありがとう、マルク君」
「アルフ兄、ユリア義姉、おめでとうございます」
「ん、アルフ兄様、ユリア義姉様、おめでとう」
「ありがとう、メル、エルカ、マルク」
甥っ子か姪っ子ができる。どっちが良いかな。父上とルイン様みたいな関係もいいな。それとも、姪っ子も可愛いだろうな。どっちがいいかな。どっちもいいか。
「マルク、何だか、貴方が父親になるみたいな顔しているわ」
「ん、子供を喜ぶ父親」
「はは、マル君も嬉しいんだね」
「マルク、俺の子だぞ」
「もう、わかっています。兄上。ただ、私より年下の子が我が家にできるのが嬉しいのです」
「そうか。喜んでくれるならいいな」
こうして一家団欒を楽しむ。新たな命が生まれる。前世でもその瞬間を迎えた家族を見たことがある。それはすごく幸せそうだった。いつか俺もそうなるのか?なかなか想像はできないな。
今話は短いので、本日は二話投稿します。




