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新学期③ 律する事に気づかせてくれる存在と道しるべ

翌日


今日は授業がない。ホームルームのために朝から学院に行く。三年生になるとホームルームもなくなり、自分で出席表に手書きで出席のマークをする。基本は自由登校で、年の半分も行けばいい。


俺は朝から訓練をして、学院に向かう。門は今日も人だかり、俺は足早にそこを抜ける。

「おはようございます。マルク先輩」

「おはよう、ケビン」


「はい。今日もよろしくお願いします」

「ああ」

「よぉ、マルク」


「おはようございます。カリウス先輩」

「ああ、おっ、ケビンか。マルクに弟子入りか?」

「はい。させていただけるなら」


「いいんじゃないか?」

「まあ、いいですよ。ケビン」

「ありがとうございます」


「じゃあ、また部活で」

「ああ」

「はい」


こうしてホームルームに向かう。

「おはよう」

「「「「「「おはよう」」」」」」


「今日もよろしくね」

「ああ」

みんなは今日も授業があるようだ。俺とレオナぐらいだ。一年で専門を7つもとったのは。ルーナが去年は6つ。アレスも。マークとヨークスとルーイは5つ。教養は皆が免除だ。ルーイは苦労したが、俺らも教えた。


「はい。皆さん席についてください。出席を取ります」

「「「「はい」」」」


「では、ルーナリア・アルメニアさん」

「はい」

・・・・

「皆さんいますね。では今日も頑張ってください」


こうしてホームルームは終わり、俺は魔術詠唱研究会の部室に顔を出す。魔術詠唱研究会の部室には誰もいない。まあ当たり前か。ミリア先輩が必ずいた頃が懐かしい。いつも、あそこの紙束を布団に寝てた。


俺は、静かな部室で、研究をする。最近作っている魔法、風で渦巻きを作り、竜巻にする魔法だ。これをトルネードという。ルーナから聞かれた魔法だ。


魔法文字を解読するとトルネードという言葉があった。これは、古代文献を宮廷魔術師の研究所で写して来た文献を調べているうちに見つけ、それをまとめると呪文が出来上がり始めたものだ。。


ただ、最後の渦巻きが解読できない。式になっているんだけど、うまく解読できない。この国の言葉や概念にない。だから前世の知識に頼ろうと思い、竜巻について考えをまとめている。竜巻は上昇気流、暖められた空気が上空との寒暖差によって上に上昇気流によってできる。それがロート状になり、渦巻くようになっていく。


こう考えると、生活魔法の乾燥が使える。風魔法の塊を温めて、上に上昇させる詠唱を試みる。すると風は上に向かって上がっていく。それが暖まり下の風がより早く、上の風が遅くなる。だんだんと渦巻く。うん、渦巻きはできた。


今度はそれを早く鋭くする。そこであの魔法式に戻るんだ。ここを改良するのに、さっきのところだ。組み合わせるのが難しいなぁ。もう少しだ。頑張ろう。


その後、いいところで切り上げて実践戦闘研究会の訓練場に行く。リオル先輩らがいる。シグルソン教官と訓練中だ。俺も参加しよう。


「すみません。俺も参加してもいいですか?」

「ああ、マルクか。いいぞ」

「よい。参加しろ」

「はっ」

こうして、先輩らと共に訓練する。着替えてから、まずは端で素振りをして体を温める。そして、だんだんと動きけるようになったところで、模擬戦に入っていく。最初はリオル先輩と模擬戦だ。リオル先輩はさらに駆け引きがうまくなった。


なかなか、間合いに入って行けない。入ろうと一歩詰めると一気に間合いを縮められ、得意な間合いにされる。これは厳しい。間合いは捨てるか。小さい間合いでなんとか対応するか。それしかない。魔法と槍で上手く対応しよう。


少し間合いを詰める。するとリオル先輩が詰める。逆にこれを利用して、魔法で対応する。風で相手の動きを遅らせる。これで少しは間合いに有利さが出た。ここで右腕に打ち落とし。


リオル先輩が半身になって、避ける。これを待っていた。一気に突き、槍を回して切りおろし、そこから体を反転させて切り上げへとつなぐ。これで完全に主導権を得た。


しかし、リオル先輩が魔法で形成を覆そうとする。俺はそれを避けながら魔法で足元に水に粘り加えたものをリオル先輩の足元に置く。リオル先輩は少し足を滑らせ、体勢を崩す。そこに一気に突きを行う。

決まった。


「そこまで。マルク、対応力が良くなった。魔法を使うことも視野に入れたことがさらに戦いを上手くした。リオル、間合いの使い方が良くなっている。その方向で行け。それを突き詰めれば、一対一の戦い方では負け難くなる。まだ甘いがな」

「「はい」」


どんどんと模擬戦が続く。俺は、今度はジンダ先輩、そしてジュライ先輩のパワー型と戦う。今度は正攻法だから、力の勝負で勝つ。難しい戦いになるが、これはいい勉強だ。


そして、ジュライ先輩には正攻法での打ち合いから勝機を見つけ勝った。ジンダ先輩とは力比べで相手の力を使って勝ち、怯んだところを一気に決めた。


どちらも相手の土俵で勝負して勝った。どんな状況からでも対応する。これが俺の戦い方だ。


「マルク、お前の対応力は素晴らしい。しかし、自分の型に持ち込んで勝つ方法も極めろ」

「はっ」

そうか。自分の良さを対応力と決めつけて、そればかりに着目すれば、それはそれで、視野が狭くなる。ああ、調子に乗っていた。俺は俺の戦い方を見失っていたのか。


「リオル先輩、ジンダ先輩、ジュライ先輩、ありがとうございます。そしてすみません。自分を見失っていました。対応力に固執するばかりに自分の型を見失うなんて」

「ああ、大丈夫だ。力任せに行くばかりではダメだと気づいた。いい戦いになった。レオナの回を俺は頑張る」


「俺も力比べで、俺の力を逆に使われる戦いもあるとわかった。それで収穫がある」

「俺も、マルクの戦法を使って、間合いを使う方法を学んだ。それでいい。対応力はマルクの方が一つの上だ。でもそれに固執するな。マルクの強さは万能さ。そしてそれは苦しい場面で発揮される。そうじゃない時は自分に有利な戦法にする。戦術の基礎だな」


「ええ、必要なことを完全に忘れていました。シグルソン教官や先輩方がいらっしゃることが本当に嬉しいです。力の近い者との戦いは自分を強くする。そう師匠に言われています。本当にそうですね」

「ああ。力の近い者か。マルクに言われると嬉しいな」


「ああ、今度は力勝負でも、勝負でも勝つ」

「ああ、正攻法に持ち込み。そこでマルクに勝つ」


「マルク、あの滑りやすい水の魔法を教えてくれ」

「ああ俺も」

「俺も、俺も」

「「「「俺も」」」

「いいですよ」


その後は魔法を教えたり、模擬戦したりで訓練に励んだ。午後からはアレスやマークたちが来て盛り上がった。


で放課後だ。


「これからシグルソン教官に訓練をしてもらいます」

「よし、今日は素振りからだ。お前たちの基礎がどれだけできているかを見る。基礎を蔑ろにする奴は強くならない。よし素振りを始めろ」

「「「「「「はい」」」」」


大体の活動が終わり休憩に入る。教官がケビンに話しかけた。

「ケビンだったか、槍術のスキルはあるのか?」

「ないです」

なかったんだ。


「そうか、ほかの武術は?」

「ないです」

「そうか。じゃあ魔法スキルか?」


「はい。でも武術も、魔法も使えるようになりたいのです。父上が槍術家だったので」

「そうか。険しいがやるか?」

「はい」


「そうか。では、突きの前に足から入る。お前は突きの右手が悪い。それをマルクに言われて、突きの瞬間の握りを指摘されたんじゃないか?」

「はい」


「それで、右腕に集中力がいくあまりに足が疎かになっている。マルクの指摘は正しい。足はできているが右腕の使い方、特に握りが良くない。だがその前にお前はもっと形を一つずつ固めるところからが必要になる。先輩の優しさで、地味な訓練を避けたと思うが、それではお前はダメだ。


まあ、ゼルやマルクに型は習え。ただ、練習方法は教えてやる。まずお前は足を固めろ。正しい踏み込みをいつでもできるようにしろ。父親はもういないのか?」

「はい」


「だろう。正しい型は習い、しっかりと把握しているが、それをできているかを見てくれる人がいないか。俺の授業は取ったか?」

「はい」


「じゃあ、その日は朝早くから来い。守衛には言っておく。俺が見てやる。光の日にゼルに見てもらって、正しい動きを知ったら、俺のところに来い。いくらでも見てやる。そして体に叩き込め。さらに、それを何度も家で訓練しろ。それができれば、右腕の問題を解決できる。やるか?」

「はい」


「厳しいぞ」

「はい」

よかった。スキルは関係ない。これがこの部活のいいところだ。ケビンが部長になればいいな。


他の生徒にもシグルソン教官は教えていく。俺も足の動きを見てあげたいが、未熟者の俺が教えるより、シグルソン教官やゼルがいいだろう。二人の教え方を学んで頑張ろう。


人に教えられるくらい強くなれば、もっと強くなれる。まぁその前に自分をもっとコントロールできないとな。


そして、シグルソン教官に素振りを見て貰った。みんなはやるべきことがわかり、より励んでいく。俺ら先輩たちが教えたことと同じことをダメだといい、どうするかも同じ事を言うが、そこの鍛え方がもっと的確だ。


はあ、まだまだ、俺も勉強だ。


そしてシグルソン教官の講義は終わった。俺ら2、3年生はそれから自主練だ。


「ケビン、俺がもっと的確な訓練方法を思いついていれば」

「いいえ。家族の事を言えば、部長も気づいたんだと思うんです。でも言えなかった俺の弱さです。シグルソン教官はそこさえ気づいて言ってくれました。部長は俺の型をまた見てください」


ケビンはまっすぐ俺を見つめて言う

「そして部長の型を見せてください。俺にとって、マルク・ドンナルナは英雄です。スキルなしに槍の名手になった部長がいるから、俺はこの道をいけるんです。スキルのない者にとって、部長は英雄なんです。部長の存在が自分の道しるべです。よろしくお願いします」


そうか、スキルなしと言われたものや、欲しいスキルがない者にとって、俺は道しるべか。頑張らないとな。


そして、今日の部活を終え、家に帰り、訓練する。まだ強くなる。


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