出会いとは時にどんな物より貴重
文化祭から1週間後
朝から訓練して、学院に行き、授業を受け、そして放課後だ。
「では、魔術詠唱研究会と実践戦闘研究会の合同引退式を行います。まずは代表して、私マルクが先輩方に言葉を」
「よー」
「リック先輩、マイル先輩、今までありがとうございました。未熟な部長で、ダメなところもありましたが、先輩方が陰で支えてくれたおかげで、何とか部を運営できました。先輩方はこれから騎士学院に進まれると聞いています。どうぞ、ここでの日々を忘れずに頑張ってください」
「「ああ」」
ついで、ルーナがミリア先輩に言葉を紡ぐ。
「ミリア先輩、本当にお疲れ様でした。先輩には助けられてばかりで、魔法詠唱研究会に入ってよかったです。先輩のおかげでこんなに楽しい日々を過ごせています。ありがとうございました」
「うん」
二人は抱き合った。
それから皆から先輩方に言葉をかける。そしてリア先生
「ミリアさん、お疲れ様でした。魔法詠唱研究会があるのは貴方のおかげです。苦しい時も一人投げ出さずにここに残ったこと、それが今につながります。顧問として、OGとして感謝を申し上げます。ありがとうございました」
「はい」
二人は抱き合い、泣いていた。
今度はシグルソン教官
「リック、マイル、お前たちには教えを伝えた。俺の教え子として、恥じぬよう努力を重ねろ。お前らは強くなれる。いくらでも。可能性の塊だ。諦めるな。弱さに挫けるな」
「「はい」」
そしてロドリス先生が
「では私も。リック君、マイル君、卒業までは少しあります。卒業するその時まで、生徒です。
貴方達は三年生になっても一年生から学ぼうとする強さがあります。それは誰でも持てるものではないです。どうか大事にしてください。卒業するその時まで、いつでも教えを聞きに来てください」
「「はい」」
「では、最後に先輩方からお言葉をもらいます。リック先輩」
「ああ、マルク、ありがとう。みんなもありがとう。俺は三年生で入っていいのか?って思っていたけど、ここに来たらマルクがすんなり入れてくれた。マルクの噂は色々と聞いた。でもシグルソン教官の教えを聞ける。マルクは強いらしいと聞いたら、最後の数ヶ月を無駄にしたくないと思ってここに来た。
入ってみたら驚くことばかりで、学ぶことばかりだった。それまでよりもずっと学んだし、強くなった。だからまだ弱いと思っている奴、諦めるな。今は弱いだけだ。お前の可能性はいくらでもある。マルクを見ろ。あのスキルで諦めなかったから今があるんだ。それを最後のお前らへの言葉にする。ありがとう」
・・・みんなが涙する。
「・・では、マイル先輩」
「ああ、マルクありがとう。リックも言っていたが、俺が入っていいかとは思った。でも入れてくれた以上は部のために頑張ると思った。でもそれ以上に俺のためになった。ここは学ぶことが多くある。俺は卒業したら、実践戦闘研究会の卒業生だったって誇る。
いつかできる子供にも孫にも。きっとここはそうなる。だから、みんな強くなれ。お前らはできる。そう信じてる。自分を信じられない時は仲間を信じろ。いつでもお前を助けてくれる。この部のメンバーはいい仲間だ。本当にありがとう」
・・・もうみんなの涙腺は崩壊した。
「あ、あ、ミリア先輩」
「うん、・・・私は話すのは苦手。人と付き合うのも苦手。だからエルカ様に憧れた。あの人は喋らないのに、誰とも自由に関わる。それでいて凄い事もいっぱいして来た。だから、エルカ様のいたこの魔術詠唱研究会に入った」
ミリア先輩は一生懸命に言葉を紡ぐ。
「・・・私が入った時にも先輩は二人で、いつ潰れるかっていう状態だった。でも潰したくない。そう思ってここまで来た。・・・そしたら、エルカ様の弟のマルクが、頑張り屋で引っ込み思案のルーナが来た。嬉しかった。私に似たルーナと、大好きなエルカ様の弟のマルクが入ったことが」
あぁ、ミリア先輩の言葉を聞くと、出会った頃を思い出す。部室で初めて会った日や、書類に埋まっていた事。
「・・・でも二人ともすごかった。私ができない事を簡単にやるマルクとそれを支えるルーナが誇らしい。だからできる限り、二人にいい状態でこの部を渡すって思って、ここまで来た」
思い出は本当に多い。先輩にはどれだけ助けられたか。出会えて良かった。本当にそう思う。
「やっと私のやる事は終わった。本当はサリーもいて欲しかったけど。でもいい。後は二人に任す。頑張ってね。二人ならできる。きっと歴代最高の魔術詠唱研究会になる。今までありがとう」
ああ、俺も涙腺が壊れた。言葉が言えそうにない。
みんなで泣いて、今日は終わった。
今日はきっと忘れられない。きっとこういう瞬間がこの前、レア先生に言われた俺の努力が芽吹く瞬間だ。あの時諦めなくてよかった。いろんな人に認められていく。俺の表面ではなく、心を見れくれる。




