マルクと流星
前世の記憶と今世の物語のプロローグです。
はぁ。はぁ。はぁ。
もう自分で息をする力もない。喉に直接チューブが繋がれ、声も出せない。
窓の外を見る力もない。もう顔を上げる力もない。
最近は病院のベットから動くことすらできないでいる。
最近の母も、父も悲しそうな顔をしていた。
もう声も出す力もない。感謝の言葉も伝えられない。
俺の人生は不幸だ。そして、親不孝だ。心配しかさせてない。
ただ、普通に元気に暮らしたかった。
父や母の願いを叶えたかった。2人の笑顔を見たかった。姉さんと遊びたかった。
美味しいものを食べたかった。
運動もしたかった。
喧嘩もしてみたかった。
したかったことは沢山あるのに、そのうち、できた事は1つもない。人生のほぼ全てをベットの上にいた。できるのは本を読むこと。せっかく集めた知識も使えないでは意味がない。
病院以外のどこかに行きたい。
病院以外のどこかで生きたい。
もうダメだ。
体が自分のものじゃないみたいだ。
体が遠く感じる。あぁ、昔の記憶を思い出す。
母さんも父さんもいつも心配そうな顔だ。これじゃない。俺が見たいのは。
夢なら、違う夢を。物語みたいに輝く夢を。
どこだ。
気がつくと、屋敷のようなところで寝てた。
体は小さい。
病院のベットで読んだ本に似ている。あぁ、夢で見てるんだな。最後に見たいと願ったから。
でも死んだはずだ。そう死んだ。多分あれは死んだ。なのに夢を見るのか?
なんだ。なんなんだ。
いや、違う。俺はマルク・ドンナルナだ。
なんだ、あの世界は?
この国では見たこともないものばかりだ。
病院だと思う。でもあれは何だ?
俺は病弱だったのか?
いや、俺はマルク・ドンナルナだ。
ドンナルナ家の次男だ。体も大きく強い。
あれは前世の記憶か?何で今なんだ?
理由がわからないが、俺は前世の記憶を思い出したようだ。この世界とは異なる知識を持つ前世を。
自分がよくわからない。
いや、俺はマルクだ。マルク・ドンナルナだ。
違う。あんな病院で寝てる体の弱い者じゃない。
武の貴族、ドンナルナ子爵家の次男だ。
英雄、『王国の風壁』ラルク・ドンナルナの息子だ。
『聖女』で、『大賢者』 リネア・ドンナルナの息子だ。
そうだ。この世界で俺は生きてるんだ。父上も母上も俺に期待してくれている。
そして強い体で産んでくれた。楽しんで生きるんだ。
あれは、俺だけど俺じゃない。そう今の俺じゃない。今の俺はマルク・ドンナルナなんだ。
初日に数話を投稿します。