表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/96

何を食べよう?

昼休み、今日もいつものように優希達は4人で学食に来ていた。

優希達は授業が少し早めに終わったため広めのテーブルを確保できていたが、時間が経てば学食は人で溢れ、空いている席を探す生徒の姿も増えてきた。


「あっ!兄ちゃん!」


声がした方を向くと、そこにはトレーを抱えた晃成と葵の姿があった。


「お、晃成か。それに葵先輩も。……ああ、良かったら座るか?」


そう言って優希は少し席を詰める。


「桜、ちょっとゴメンね」

「ううん、大丈夫だよ」


向かいの席では同様に海斗達がスペースを空けていた。

空けられたスペースに晃成と葵は腰を下ろした。


「兄ちゃんありがとう。座れるところが無くて困ってたんだよ」

「まあ、あれだけ俺の横をチラチラと見てたらな」

「えっ、そうだった?」

「……晃成は分かりやすい。でも助かった。ありがとう」


意外そうな表情を浮かべる晃成にみんなの視線が集まる。そんな視線に耐え切れなくなった晃成は話題を変えるべく話を切り出した。


「ところで、兄ちゃん達は何の話をしてたの?話を遮っちゃったみたいだけど」

「ああ、土曜日の勉強の件だよ。晃成にも連絡しただろう?」

「あの話ね。連絡した通り、俺はバイトがあるから夕方からしか行けないよ?」


晃成は優希から貰っていたメッセージのことを思い出す。


「別に構わないさ。もともと強制するつもりは無いし。そうだ。葵先輩も一緒に勉強しませんか?」

「……勉強?」


急に話を振られても事情が分かるはずもなく、葵は首を傾げた。


「いきなりじゃ分からないですよね。説明しますと、今度の土曜日にウチで勉強会をすることになってるんです。泊りで。もちろん泊りも強制じゃないし、女子が泊まるのはウチじゃなくて桜の家なのでご安心ください」


「……なるほど。仕事の都合もあるから今は返事出来ないけど、帰って確認してみるよ」


葵は優希から説明を受けながら自身の予定を思い浮かべていた。


「葵先輩も来るんですか⁉兄ちゃん。俺、絶対参加するから」


急にテンションが上がった晃成がそんな宣言をし始めた。


「参加するのは分かったから、店に迷惑だけは掛けるなよ?」


グイグイと身体を寄せてくる晃成を手で制しながら優希はそう言った。


「そういえば、ご飯ってどうするの?兄ちゃんの家、何も無いんじゃない?」

「馬鹿言ってもらっちゃ困るな。調理器具と炊飯器はあるぞ。少なくともご飯は炊ける」

「兄ちゃん、流石にこれだけ人を呼んでおいてそれはダメだよ」


得意げに優希が言い放つと、呆れたように晃成は言葉を返した。


「だけど、食事は大事な問題だな。持ち寄るのは面倒だから、優希がまとめて食材を買っておいてくれないか?もちろんお金は出すから」


海斗が思い出したように口を挟む。なぜ食事の話題が出てこなかったのかと不思議そうな表情を浮かべていた。


「それは構わないが何を食べるつもりなんだ?、それなりの人数だろ?なるべく準備に時間が掛からないほうが良いんだけど」

「その辺りは優希に任せるさ。そうだな、鍋とかどうだ?季節的には何とも言えないけど、みんなで集まった時の定番だろ?」

「まあ、一つの意見として聞いておこう」


優希はスマホを取り出しメモを残していく


「そもそも、ウチにある食器で足りるか心配になって来たぞ」


鍋にするにしても、各自の器だけではなく、準備の段階でも食器が必要となることは容易に想像できた。


「もし足りないようならウチから持ってくるよ」


そんな優希の様子に桜が助け舟を出した。橋本家は料理をする頻度も高く、自宅で使う分を差し引いても余裕があることを桜は把握していたのだ。


「それは助かる。ありがとう、桜」


安心した様に優希は優しく微笑んだ。


「それじゃあ問題無しだな。デザートくらいは買っていくから、当日はよろしくな」

「ああ。ところで何時くらいから始める?それによっては昼ごはんも考えないといけないんだけど」

「流石にそこまでは悪いから、昼飯は食べてくるわ」

「了解。また何か変更があれば言ってくれ」


ざっくりと土曜日の予定を話し合いながら昼休みは過ぎていくのだった。



放課後、優希と桜はスーパーへ来ていた。


「とりあえず、今日の晩御飯と明日の朝御飯か」


優希はいつものようにオカズを手に取っていく。


「またお惣菜だー」


何を選ぶのかと桜はその様子を伺っていた。


「仕方ないだろう。料理の練習はテストが明けてからだよ。それより、今日はもう一つ見ておきたいところがあるんだ」


優希はそう言うと、商品棚を覗くようにしながら店内を移動していく。少しすると目的のコーナーが見つかったのか、優希の足が止まった。


「お鍋の素?今度の勉強会の分かな?」

「そうそう。どんなものがあるのか気になってね」


棚には寄せ鍋、キムチ鍋といった定番のものからトマト鍋といった変わり種まで並んでいた。


「そう言えば、鍋と言えば福岡が有名じゃない?ほら、もつ鍋とか」

「なんだ、桜はもつ鍋が良いのか?」


うんうんと桜は頷くものの、優希は困ったような表情を浮かべていた。


「期待してるところ悪いが、自宅でもつ鍋はあんまりオススメしないぞ?ちゃんと処理をしないと臭いが凄いし片付けも大変だからな。ウチではもつ鍋は食べに行くものだったな」

「え、そうなの?何だか意外だよ」

「桜や菫さんみたいに料理が上手いと出来るかもしれないけどな。自宅で鍋をするならこっちだったよ」


そう言って優希は棚から一つの商品を手に取った。


「水炊きのほうが家ではやる機会が多いと思うぞ。桜は食べたことあるか?」

「ううん、無いんだよー」

「そうなのか、ふむ。それじゃあ、今度の土曜日は水炊きにするか」

「ええっ!そんなに簡単に決めて良いのかな?何だか私が決めた感じになってない?」


桜は驚いたようにしながらも、少々申し訳なさそうに言ってきた。

しかし、優希はそんな様子を気にした様子も無く、さっさと商品をかごに入れてしまう。


「良いんだよ。料理の内容は俺に任されてるんだし。食材は直前に買うから、とりあえず忘れないようにこれだけ買っておいてっと」


優希はかごの中のものを見て買い忘れが無いことを確認するとレジへと向かうのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] とても楽しく読ませて頂きました 続きが気になります!是非これからも頑張ってください
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ