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GW初日終了

「私は疲れちゃったから寝るわね。二人とも、おやすみなさい」


夕食ののち風呂に入った麻衣は、軽く雑談をするとそう言って寝室へと入っていった。


「流石に福岡から移動してくるのって疲れるんだろうね」

「分かるわー。俺も引っ越してきた日はそんな感じだった。晃成はどうする?もう寝るか?」

「流石にまだ早いかな」


晃成がスマホを確認すると、高校生が眠るにはまだ早いであろう時間を示していた。

すると二人のスマホにメッセージの通知が届いた。


「茜か」

「お昼に言ってたグループの件みたいだね」


二人はお昼に写真を撮ったメンバーのグループへ招待された。もちろん拒否する理由は無いため参加する。

みんなスマホの側にいたのであろう。あっという間に全員がグループへと参加する。

それを待っていたのか、茜が一言メッセージを乗せた後、次々に今日撮影した写真がアップされた。


「良く撮れてる。ふむ、俺もフォトフレーム買っておこうかな」


優希が写真を見ながらそう呟いた。

そんな時新しくグループにメッセージが届いた。


『今日はウチのお店を使ってくれてありがとう。ケーキもごちそうさまでした』


それは葵からのメッセージだった。


「葵先輩、律儀だな。気にしなくていいのに」


そうは言いながらも、こういった気遣いが出来ることで優希からの評価は上がっていくのだった。

そんなことを言っていると、新しくメッセージが届いた。

それは晃成からのものであり、それぞれがコメントをするとやり取りが一段落した。

しかし、優希のスマホはまだ休まることは無かった。メッセージが途絶えたかと思えば、次は茜からの着信音が鳴り響く。


「よう、どうしたんだ?」

『夜分に悪いわね。海斗のバースデーケーキっていくらしたのか知りたくて電話したわ』

「ん?気にしなくていいぞ。俺が勝手に買ったんだし」

『気にするわよ。良いから教えなさい』


優希の言葉にも全く引く様子が無いため、優希はケーキの値段を伝えることにした。


「3,000円だよ」

『分かったわ。半分出すから、学校が始まったら渡すわね』

「ああ。だけど、一緒に居るときに言ってくれたら二度手間にならなかったのに」


優希がそう言うと、電話越しにでもため息をついたのが分かった。


『あなた、分かって訊いてるでしょ?祝われてる本人の前でお金の話をするわけないじゃない』

「あれ、バレた?」

『優希って結構性格悪いわよね』

「良く言われる」

『まったく……』


そんな話をしていると、晃成が席を立ち歩き出した。てっきりトイレにでも行ったのかと思い見送っていると玄関のドアが開く音がした。不思議に思っているとすぐに晃成が戻ってくる。桜を連れて。


「桜?」

『桜?何?あなた、こんな時間に桜を家に連れ込んでるんじゃないでしょうね?』


桜は電話をしているのもお構いなしに、ニコニコしながら『貸して』と手を差し出してくる。


なんとなく断れる雰囲気ではなく、優希は桜にスマホを渡す。


『優希、聞いてるの?』

「もしもし、茜ちゃん?」


茜はまさか桜が電話に出るとは思わず驚いていしまった。


『桜、いくら隣同士とはいえ、こんな時間に一人暮らしの男子の家に居るのは感心しないわよ?』

「今来たばっかりだから大丈夫だよ。それよりもケーキ代の件、なんで私にも教えてくれなかったのかな?」

『そう高いものでもないし、お金を出してなんて厚かましいことをわざわざ言う必要は無いじゃない。それに、もしも桜が私の立場だったら、私にお金を出すように言うのかしら?』

「……言わないけど」


勢い込んで話し始めたものの、徐々に会話のぺースを茜に持って行かれる桜であった。


『そういうことよ』

「でもでも、やっぱり私にも教えて欲しかったな。みんなでお祝いしてるって感じがするし。気付けなかった私が悪いんだけどね」

『分かったわ。これからは相談するから』

「約束だからね!」


桜は満足したのか、そう言って優希にスマホを戻した。

そしてそのまま帰ろうとしていたため、優希が慌てて桜の手を握り引き止める。


「もしもし?電話代わったけど。それじゃあ三人で割って一人1,000円ってことで良いな?」

『ええ、それで構わないわ。それじゃあ、またね。おやすみなさい』

「ああ、おやすみ」


通話を終えると優希は桜に声を掛ける。

改めて桜の姿を見てみると、パジャマの上にパーカーを羽織った格好で顔を赤くして立っていた。


「それで?何で桜がいるんだ?」


そう問いかけるも、桜は握られた手が気になってしまい、それどころではなかった。


「優希君…!手、手……」


言いながらも桜は自分から振り払うようなことはしない。


「手がどうかした?」


気にした様子もなく言うと、所謂恋人繋ぎに変えてみせ、キュッと握る。


「そうじゃないよ……。分かってるでしょ……?」


顔を赤くしながらも上目遣いで睨んでくる。

それは優希としても予想できた反応だった。


「嫌だった?」


優しく微笑んで見せると、桜は優希の顔を直視することが出来ず俯いてしまう。


「嫌じゃないけど、恥ずかしいよ……」


そんなやり取りをしてるを呆れた顔で見つめる人間がいた。


「……ラブコメの波動を感じる」


晃成のその声に桜はハッとして、優希の手を振り払う。

恥ずかしさのあまり晃成に背を向けるようにして、優希に握られていた手を抱きしめてしまう。


「兄ちゃん、桜先輩は俺が声を掛けたんだよ。なんかお金の話をしてたし、桜先輩にも言っておいた方が良いかなと思って。おせっかいだとは思ったけど」


桜は振り返ると、


「ありがとね、晃成君。教えてくれて助かったよ。優希君も教えてくれないと嫌だよ?」


笑顔で晃成にお礼を言ったかと思えば、人差し指を立て不満そうにふくれて見せた。


「茜も何か言ってただろ?多分同じ理由だよ」

「むー、そもそも、ケーキを頼むこと自体教えて欲しかったよー」

「自分が好きなケーキを選べるから?」


意地悪く訊いてみれば、桜は図星を突かれたような表情になる。


「……それも無いとは言い切れない。でも、選ぶ過程が楽しいんだよー!あれが良いんじゃない?いやこっちが……、みたいに一緒に悩んだりしたかったー!」

「ゴメンゴメン、次からは気を付けるよ」


観念したように優希は微笑むと、桜の頭を撫でながらそう言った。


「絶対だよ?」


撫でられることに慣れてきている桜は、少し顔を赤らめつつも振り払うことなく、上目遣いでそう言うのだった。




「桜、せっかく来たんだし、何か食べるか?と言っても、この前買ったプリンくらいしかないが」


桜の頭をひとしきり撫でた優希は満足したのか、手を離しそう聞いてみる。

しかし、桜は思い出したようにハッとして。


「ゴメン!お母さんにはちょっと用事を思い出したって言って出てきたんだった。あんまり長居すると心配かけちゃう。はい、これはケーキ代ね」


財布から千円札を取り出すと優希に渡した。


「そっか、それじゃあまた今度な。あ、母さんで思い出した。ウチの母さんが明後日までいるみたいなんだ。だから、出掛けるのはそれ以降になるけど大丈夫か?」

「大丈夫だよ。ということは2日以降だね。うーん、3日なんてどう?」

「構わないぞ。それじゃあ少し早めに出て、向こうで昼ごはんも食べようか」


もともと予定を開けている優希は考える素振りも無く即答する。


「分かったよ。それじゃあ楽しみにしてるね!」


そう言って桜は足早に自宅へと帰っていくのだった。




二人は少し早いが優希の自室に移動し、就寝の準備をすることにした。

床に客用の布団を敷き晃成が横になる。


「兄ちゃん、桜先輩とデートなの?」

「まあな。向こうがデートだと思ってるかは分からないけど。晃成は葵先輩と出掛けたりしないのか?」


「ふふふ、よくぞ訊いてくれました」


暗がりで二人とも横になっているため表情は分からなかったが、得意げな表情をしていることは声色からもすぐに分かった。


「俺も3日に葵先輩と出掛けるんだよ。一緒にご飯食べて勉強してって感じ」

「勉強?」

「やっぱりバイトしながらだから、勉強に付いて行けてるか心配してくれてるみたい」

「なるほどね。どこで勉強するかは分からないけど、良い場所見つけておけよ?お昼を食べてそのまま勉強ってことも考えられるし。気分を変えて違う場所で勉強するのもアリだけど。とりあえず、いくつか候補を見つけて葵先輩に相談してると良いんじゃないか?」


優希はつい先程の経験を活かして、そうアドバイスをする。


「桜先輩みたいに、選ぶことを楽しむんだね」

「そうなんだけど、人から言われると微妙だな……」

「なにそれ」


そんな会話をしながら、二人はいつの間にか眠りにつくのだった。

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