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ケーキ確定

「おかえり、桜。何だか顔が赤いようだけれど?……また優希ね?」


茜は戻ってきた桜に声を掛けると、その様子を見て隣にいる優希にやれやれといった様子で視線を向ける。


「また、とは心外だな。まるで俺がいつもやってるみたいじゃないか。これでも抑えてるほうだよ?」

「はいはい、ごちそうさま。そんなことより、優希にお客さんよ」


自分の席に戻るとクラスメイトの男女二人が立っていた。

それは文化祭でケーキの仕入れを依頼したグループの二人だった。


昼休みが終わるまであと五分といったところだが、用件だけでも聞こうと優希は考えた。


「二人が俺のところに話っていうことは、文化祭に関することかな?」

「ああ、一応交渉してきたから、その報告と確認だ」

「ちょっと待って」


優希はノートを取り出すとメモを取りながら話を聞き始める。


「仕入れられるケーキの数は最大150個、苺ショート、チーズケーキ、ガトーショコラの3種類各50個ずつだ」

「結構たくさん仕入れられるんだな」

「過去にも同じように学校に卸したことがあるんだってさ。お陰で交渉も思いのほかスムーズだったよ」


その割には少々難しい顔をしている男子生徒の言葉を女生徒が引き継ぐ。


「それがね。条件を二つ出されちゃって。一つは価格をお店側で決めさせて欲しいこと。二つ目はお店のチラシをケーキを頼んだお客さんに渡して欲しいんだって」

「ふむ。値段は卸値?それとも売値?」

「どっちも。学校行事で利益を取るつもりはないってことだから卸値は高くはないと思うんだけど。売値までって言われるとね。ちなみに卸値が150円で売値が250円だって」


優希は様々なケースを思案しながら


「理由は聞いてる?」

「実際の店舗と価格差が大きすぎると困るみたい」

「それもそうか。原価も想像ついちゃうし、お店としては避けたいところだよね。二人はどう思う?この条件を受け入れるべきだと思うかな?」


二人は顔を見合わせると、男子生徒のほうが口を開いた。


「受け入れて良いんじゃないかと思う。協力をお願いしたのはこっちなんだし、譲る部分があるのは仕方が無いだろう」

「それじゃあ、そのまま仕入れの方向で動いてほしい。マックスの150個ね」


その言葉に女生徒が少々驚いたようにしながら口を挟んだ。


「そんな簡単に決めて良いの?」

「ケーキの仕入れに関しては基本的に信頼して任せてるからな。検討したうえで仕入れるというのなら、それに従うまでさ。それにこのタイミングで相談に来たってことは、休みの日にわざわざ交渉しに行ってくれたんだろう?その努力は無駄に出来ないさ」


男子生徒が意外そうな顔をして優希に言葉を掛ける。


「確かにそうだけど、そんな風に言ってもらえるとは思わなかったな」


優希が口を開こうとすると、扉の方から声が掛かった。


「授業始めるぞー。みんな席に着けー」


次の授業が始まるようだった。

優希は席へと戻る男子生徒に改めて声を掛ける。


「そんなわけだから、仕入れの件はそのまま進めて良いよ」

「了解」



帰りのHRの時間になった。

担任の佐藤静香が教室に入ってくると、優希に席へと近づいてくる。


「伊藤、午前中に渡したものは差し替えになった」


そう言って差し出されたクリアファイルには、新しい貸し出しリストが入れられていた。


「ありがとうございます」


そう言って資料を確認すると、昼休みに話し合った内容が追加されていた。


「伊藤、それじゃあ前に出て話すと良い」


同様に立ち上がろうとした桜を手で制して、優希は一人教壇に立つ。


「文化祭関係で一点連絡です。学校から貸し出し可能な備品のリストが来ました。役割ごとに必要なものは違うでしょうから、各自確認してください。それでは代表の人は用紙を取りに来てください」


そう言うと、何人かが席を立ち用紙を受け取りに集まる。

全員が席に戻ったのを確認して優希は再び話し出す。


「GW明けの金曜日には集計して提出しないといけません。休みを挟むので時間はありませんが、何が必要か検討をお願いします。それと同様に、それぞれ交渉や店舗レイアウトなどはGW明けまでにある程度形を作っておいてください。思いのほか時間はありませんがよろしくお願いします」


質問は無いようだったので、優希はそのまま席へと戻るのだった。


「ということだ。それぞれ抜かりが無いようにな」


優希の言葉を引き継ぐようにして、静香が話をまとめるのだった。



HRも終わり放課後、いつもの4人はカフェ葵に集まっていた。


「さて、集まってもらったのはほかでもない。文化祭の仕入れについてだ」


優希がもったいぶったように話す姿を眺めながら、それぞれ飲み物に口を付ける。


「あれ?聞いてる?」


みんなはうんうんと頷きながら続きを促す。


「ケーキの仕入れ数が決まった。全部で150個。300食用意する計画だからちょうど半分だね。残りの150食を俺達が仕入れないといけない」

「そうだな。仕入れるものは、この前ざっくり調べただろう?あとはいつ交渉するかっていうところか?」

「そうなんだよ。出来れば休み明けの金曜日には間に合わせたいだけど、時間が無いだろう?下手するとGW中にどうだって言われかねないし」


それを聞くと一同はうーんと思案し始める。


「とはいえ、明後日からGWだからな。一日でまとまらない可能性もあるし、休み明けの木曜日じゃリスキーだろ?休みの日でも仕方ないんじゃないか?丸一日使う訳じゃあるまいし、終わった後はみんなで遊ぼうぜ。せっかくのGWなんだし」


海斗がそう提案してくる。優希としても休みの日でも仕方ないとは考えていた。


「まあ、向こうの都合次第だな。とりあえずはこっちの予定を確認しようか。GWは4月29日から5月6日までだろう?海斗と茜の旅行がいつなんだ?」


優希の言葉を受け、海斗が茜に視線を送る。


「いつだっけ?」

「何で覚えてないのよ。3日から5日までね」


茜が突っ込みを入れつつ答える。


「桜はこの日はダメっていうところはあるか?」


優希は桜にも確認を取る。


「遊びに行く日はあるけど、日にちまでは決まってないからいつでも大丈夫だよ」

「そっか。俺も同じだから、そこを外した日程で依頼してみようか。一応明日から2日までと、6日で問題無い?」


みんなはその言葉に頷く。


「海斗、店長への連絡は任せて良い?」

「構わないぞ。帰ったらやっておく」

「よろしくな」


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