休日の過ごし方 海斗編
新規のキャラもいるので確認用
羽田家
・羽田 達也(40)父
・羽田 響子(40)母
・羽田 海斗(17)
・羽田 碧【みどり】(10)妹
氷室家
・氷室 和也(40)父
・氷室 凛(40)母
・氷室 茜(17)
・氷室 悠【ゆう】(11)弟
日曜日、氷室家に羽田家の面々が集まっていた。
「宿は早々と押さえたけど、何をしましょうか?碧ちゃんと悠は何がやりたい?」
羽田響子はリビングにノートパソコンを持ち込み、ソファに座りながらそう問いかける。
響子を中心に両サイドに座っている悠と碧はPCを覗き込みながらそれぞれが意見を出し始める。
「俺はあれが良い!あの、色んな仕事が出来るやつ!」
「私は動物園行きたい!いっぱい触れるところ!」
その意見をもとに響子はレジャー施設を検索し始める。
少し離れた場所に置かれた6人掛けのダイニングテーブル、座っているのは海斗、茜、そして氷室凛であった。なお、海斗と茜が隣り合って座っており、対面に凛が座っているのは言うまでもない。
ちなみに父親二人は男同士で買い物らしく、今は不在である。
「だってよ。茜はどこか行きたいところはないのか?」
海斗はテーブルに置かれた旅行雑誌を読みながら茜に問いかける。
「私はのんびり出来ればそれで良いわ。それに悠達の意見も結構面白そうじゃない?」
「だけど職業体験って子供向けのアトラクションだろ?高校生が参加出来るのか?」
海斗がそんな疑問を口にするとソファの方から声が掛かる。
「原則中学生までだけど、保護者参加って形で出来るものもあるみたいよ」
ちょうどホームページを調べていたのであろう、響子が海斗の疑問に答える。
しかし両サイドから質問攻めにあっているようで、海斗への言葉はそれだけに止まった。
「だそうよ?」
「職業体験ねー。茜は何かやってみたい職業はあるか?施設にある職種に限らず」
「そうね……」
一瞬考え茜が何かを口にしようとした時ニヤニヤとしながら口を挟んでくる。
「茜の将来の夢は『海斗君のお嫁さんになること』よね」
昔から何度もこのネタで弄られてきたため海斗もいつものことだと思ってはいるものの、ネタにされている茜はいつまで経っても慣れる様子は無く、言われるたびに顔を真っ赤にして抗議するのだった。
「ちょっと!お母さん!」
「小っちゃい時はいつも海斗君の話ばっかりだったのよ?他に友達はいないのかと心配になっちゃうくらい」
言っても無駄と分かっているのか、茜は母を睨むばかりだった。
「いつ聞いてもはこの話は嬉しくなるな。茜が「俺のことをそこまで想っててくれたなんて」
海斗は頬杖をつくと少し意地悪く、しかし、しっかり茜を見つめながら茜へ言葉を投げかける。
「昔の話でしょう!」
「否定はしないんだな」
その言葉に茜はギクッとした様子を見せつつも、赤くした顔でそっぽを向きながら呟く。
「……否定なんてしないわよ」
そんな話が聞こえていたのか、ソファの方から碧がやってくる。
碧は茜の椅子の背もたれに手を掛け、背伸びして茜の顔を見つめて嬉しそうに言葉を紡いだ。
「茜ちゃん、お兄ちゃんのお嫁さんになるの⁉そしたら本当のお姉ちゃんだね!」
茜がその言葉に何と答えて良いのものが頭を悩ませていた。
海斗はそんな二人の様子を楽しげに眺めているだけだったが、その様子が気に入らない茜から声が飛んでくる。
「海斗も笑ってないで何とかしなさいよ!」
その言葉に「分かった」と言わんばかりに真剣な顔で頷くと、海斗は碧に話しかけた。
「碧、もうちょっと待ってろ。あと何年かしたら茜がお姉ちゃんになってくれるから」
「やったー!」
そう言って喜びを全身で表しながらソファに戻っていく。
リビングで大きな声で話していれば、当然響子の耳にも届いていたのであろう。
ニヤニヤした表情を海斗へ向けていた。
凛は微笑ましいものを見つめているような表情でこちらを見つめているのだった。
「馬鹿じゃないの⁉そういうことじゃない!」
茜は海斗の言葉が自分の求めていたものとは全く違ったために不満を露わにする。
「不満だったか?」
「当り前よ!あれじゃあ本当に私達が結婚するみたいじゃない……」
始めの勢いは良かったものの結婚という言葉を意識してしまったのか、後半になるにつれだんだんと声は小さくなり、顔も俯いてしまう。
「俺との結婚は嫌か?」
海斗は少々真面目な顔つきになるとそう切り出す。
「……その訊き方はズルいわよ」
上目遣いになりながら茜はそう呟く。
海斗はそんな茜を見て微笑むのであった。
「二人とも、私達もいることを忘れないでね?」
凛がニコニコとしながら割って入る。
海斗は分かったうえで話していたので特に何も無いが、茜はハッとすると今まで以上に顔を赤くして、耐えられないといった様子で部屋へと逃げ込んでしまった。
「いやー、青春してるわねー。私も和也君とそんな高校生活送って見たかったわー」
凛は全く悪びれた様子もなく、そんなことを口にしていた。
「凛さんと和也さん、今でも凄く仲が良いじゃん」
「私達は大学からの付き合いだからね。やっぱり好きな人と同じ教室で同じ授業受けてって憧れるじゃない」
「そんなものか?」
「そういうものよ。それと、茜のことよろしくね。今も部屋で悶えてるでしょうし、落ち着かせてあげて」
その言葉に海斗は立ち上がり、茜の部屋へと向かっていく。
一応礼儀としてノックと声は掛けるものの、茜の返事を待つことは無かった。
「茜、入るぞ」
「……入って良いなんて言ってないんだけど」
茜は眼鏡を外しテディベアを抱きしめながらベッドで横になっていた。
「茜が本当に入ってほしくない時は鍵を閉めるだろ?」
「……ふん」
茜はテディベアに顔を埋め黙ってしまう。
そんな茜の様子を見た海斗はベッドを背もたれにして床に腰を下ろす。
無言のまま、しかし穏やかな時間が過ぎていく。
しばらくすると茜が口を開いた。
「……何か言いに来たんじゃないの?」
「いや?俺が茜と居たいだけじゃダメか?」
その言葉に落ち着きかけていた茜の表情が再び赤くなってしまう。
「ホント、ここ最近の海斗はおかしいわ……」
そう言って茜はベッドを降りる。
「でも、そんなに一緒に居たいのなら居てあげる」
座っていた海斗の膝に頭を乗せそのまま横になる。
もちろん茜の顔は真っ赤だったが。
この行動には流石に海斗も少々驚いたものの、微笑むと茜の頭を撫で始める。
茜も触れられた瞬間はビクッとしたものの、その後は穏やかな顔でその行為を受け入れる。
「膝枕なんて久しぶりだな。小学生以来か?」
「……あの頃は漫画に影響されてたのよ」
「お互い膝枕し合ったよな」
海斗は小学生の頃を思い出しながら、懐かしそうにそう言った。
「……今日はしないわよ?」
「今日は、ね?」
揚げ足を取られる形になった茜はそれ以降何も言わず、頭を撫でられる感触に身を任せるのであった。




