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GWの予定

金曜日の放課後、第三回目の文化祭実行委員会が開催されていた。


「流石にこの短期間では具体的なところまで詰めているクラスはありませんか。ですが、方向性は見えているようなので良しとしましょう」


どのクラスもこれから交渉といった様子で、前回の実行委員会から大きな進展は見られなかった。

とはいえ、役割をしっかりと決めている、交渉先とのアポイントを取っているなど、一歩先に進んでいるクラスもあり、そういったクラスを見て、進展の無いクラスは少々焦りを感じるのだった。『ウチのクラスは遅れている』この短い期間で実行委員会を数度開いた理由が、そういう意識付けからであるならば、実行委員長の手腕もなかなか侮れないものがある。


「次の実行委員会はGW明けの5月8日にしましょうか。このタイミングだと文化祭まであと1か月、交渉、デザインなどきちんと話を詰めておいて下さいね。前にも言いましたが、テストがあるので準備期間は実質1か月ありませんから」


そう言って実行委員長の笹原は話をまとめていく。


「また後日、備品の申請リストを配布致します。学校からの貸し出しになりますので、数に限りがあります。暗幕など準備が難しいものは学校から借りるのが無難でしょう。これもクラスでまとめておいてくださいね。次回の実行委員会の際に申請書は回収します。何か分からないことがあれば、気兼ねなく聞きに来てください」


笹原は良かれと思っているのかもしれないが、上級生の教室に訪れるというのはなかなかにハードルが高い。ごく一部の人間を除いては。


「それでは今日はここまで。お疲れさまでした」


その言葉で一気に教室は騒がしくなる。

個別の質問のために笹原に声を掛ける者、友人同士で教室を出ていく者と様々だった。


「さて、俺達も帰るか」

「うん!」


優希と桜は並んで教室を出るのであった。

思いのほか会議は長かったようで、もうすぐ18時といったところである。


「やっぱり、結構遅くなっちゃったな。これは寄り道は無理だな」

「どこか行きたかったの?」


優希の言葉に桜は相槌を打つように訊いてみる。


「ん?ちょっと本屋に行こうかと思ってたんだけどな。参考書でもチェックしようかなと思ってね」

「わー、参考書だったかー」


まさか勉強関係とは思わなかったのか桜は驚いていた。


「意外か?」

「んー、意外ではないかも。優希君が普段から勉強してるんだなっていうのは普段から感じてたし」


人差し指を顎に添えながら、桜は普段の優希の姿を思い出し納得していた。


「まあいいさ。明日は土曜日だしのんびり探すよ」

「そっか、明日は土曜日だね。今週はバタバタしてたから何だかあっという間に感じちゃうよ」

「確かにな。だけど、これからも中間テスト、文化祭とイベントが目白押しだぞ。でもその前にGWだな。って、良く考えたらもう来週なのか」

「そうだよー。あと海斗君の誕生日だね」


優希と桜はそれぞれ思いつくイベントを挙げていく。考えれば考えるほど色々なものが浮かびあがる。


「そういえば、前に話をしてたGWに遊びに行くっていう約束、どこに行こうか?」

「んー、どうしようか。ショッピングモールは先週行ったし、次はアクティブに運動系とか?」


桜はそう言いながら、バッグを持っていない手で数度パンチを繰り出しシャドーボクシングを始めた。

その様子は優希には意外に感じられ


「ほー、桜の口から運動の提案が出てくるとは意外だな」

「あ、私が運動苦手だって思ってたでしょ?」


そう言って桜は頬を膨らませるようにしながら優希を見つめる。


「別にそうは思ってなかったけど、それじゃあ桜は運動が得意なのか?」


そう尋ねると桜はギクッとした表情になり


「得意ではないです……、人並みです……」


そう言うと優希は笑いを堪えきれず、思わず吹き出してしまった。


「ふふっ、何でいかにも運動できますみたいな感じで喋るかな」

「あーっ、笑った!ひどいよー」


桜は抗議するものの、その表情は笑顔であった。


「しかし、運動出来るスポットなんてあったっけ?」

「運動の内容によるけど、それなりにはあるんじゃないかな」


桜は立ち止まり、スマホを取り出し検索を始める。

検索結果にはプール、ボウリング、ボルダリングと様々な結果が並んでいる。


「ほらほら」


そう言って桜はスマホを見せてくるも、身長差もあり優希からは画面が見えづらかった。

画面を見ようと自然と身体の距離は近づく。当然スマホを見るためには画面に顔を近づける必要があり、桜の顔のすぐそばには優希の顔が。

優希は気にしていないのかいつも通りだが、桜は優希の顔を間近で見て恥ずかしくなってしまい、チラッと見ただけでそれ以降は画面から視線を外せずにいた。


「結構色々あるんだな」


優希は桜のスマホをスワイプさせながら検索結果を見ていく。

時折肩が触れ合っていたが、気にしているのは桜だけであった。


「ここなんてどうだ?ここならボーリング、バドミントンと色々出来るぞ」


優希が開いたサイトは全国展開している複合レジャー施設だった。スポーツをメインとしており、複数のスポーツやゲームなども楽しめる。学生にとって嬉しいのはフリータイム制もあり、一定の料金で時間を気にせず遊べる点であった。


「良いんじゃないかな。と言っても、私は行ったことないんだけどね」


桜は優希との距離の近さに未だに慣れず、簡単な返事しか出来ずにいた。


「俺は前に行ったことあるな、福岡でだけど。それじゃあここにしようか。日にちと時間はまた決めよう」


そう言うと優希は元の位置に戻った。


「そうだね」


桜は顔を赤くして、何だか不満そうな顔でそう告げる。

自分ばっかり意識して、何とも感じていない優希の態度にご立腹の様子だった。

桜は無言で優希の脇腹に向かってパンチを繰り出す。


「痛っ、え、何?」


優希の疑問に答えることなく数度パンチを繰り出すと、プイっと顔を背けて桜は一人歩き出す。

優希は不思議に思いながら桜の歩いていく姿を眺めていた。

しかし少し距離の空いたところで桜は立ち止まり、顔を赤くしたままでこちらを振り返る。


「帰らないの?」


そんな状況でも一緒に帰ろうとする桜であった。


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