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会議という名の食事

翌日、朝のHRが終わり、担任である静香が教室を出ていくところに優希が声を掛ける。


「先生、少し良いですか?」

「どうした、何か質問か?」


教室を出たところで静香が立ち止まる。


「いえ、質問ではなくお願いなのですが、文化祭の件で話し合いの時間を頂きたくて」

「昨日やったばかりだろう。何か進展でもあったか?」

「進展という訳ではないですが、まだまだ決めないといけない役割があるので、それを割り振っていければと思いまして。やっぱり難しいですか?」


静香は話を聞きながら、いろいろと考えている様子だった。


「うーむ。今日は午後に私の授業が入っていたな。そこに時間を充てるか検討はしてみよう。授業計画もあるから確約は出来ないがな。ただ、そう何度も授業時間を使うことは出来ないから、無駄が無いように話し合う内容はまとめておけよ」

「ありがとうございます」


それじゃあ、といって静香は職員室へと戻っていくのだった。



優希が教室へと戻ると海斗から声が掛かる。


「優希、今のって昨日言ってた文化祭の?」

「そうだよ。もしかしたら、今日の午後に時間が貰えるかも」

「そうか。さっさと決めようぜ。授業が潰れるのは俺の望むところでは無いからな」

「海斗ってホントに顔に似合わず真面目だよな」


意外だと言わんばかりに優希が言えば


「優希だってそうだろ。大体この学校に来てる時点で、授業が減って喜んでるようじゃレベルが低すぎるだろ」


そういって海斗は笑い飛ばした。


「大方、授業の時間を使えるのも限られてるから、内容をまとめておけとでも言われたんじゃないか?」

「正解!そこまで分かってるなら、昼休みに一緒に考えようぜ」

「まあ、良いだろう。それじゃあ、今日は教室で昼飯だな。優希はちゃんと昼飯買っておけよ」

「了解。悪いな」



そうこう話していると、キリの良いタイミングで教師が教室へと入ってきた。

二人はそれを見て、自分の席へと戻るのだった。



そして昼休み、優希と桜の机に海斗と茜が集まってくる。

机にはそれぞれの弁当と授業の合間に購買で買ってきたパンが並んでいた。


「それでは会議を始めます」

「え、そんな感じ?」


桜は思いがけず堅苦しく始まった昼食に驚きを隠せなかった。


「というのは冗談だけど、気軽に意見をくれ。決めることは買い出し班を増やすこと、接客係を決めることと、他に何かある?」

「デザイン関係はどうするのかしら?その辺りが何も決まってないじゃない。店のレイアウト、看板、案内板、案内用のチラシとやることは目白押しよ。作業自体は全員でやるとしても、デザインを考える人間を決めておかないと何も進まないわよ」


茜は箸を進めつつ、そう提案してくる。茜の提案はもっともであり、その点を完全に失念していたことを優希は思い出した。


「デザインか。完全に忘れてたな。これはそういうのが得意な人間に割り振ろう。ほかには?」

「まだ聞いてない気がするんだが、そもそもの予算はいくらなんだ?」


海斗が今まで疑問に思っていたことを切り出した。


「あれ?説明してなかったっけ?クラスで8万円。1人2千円だな」

「8万円かー。それが多いのか少ないのか分からないよ」


桜は金額を聞いてもいまいちピンと来ていない様子で、視線を上に向け、その金額が妥当なのか考えていた。


「そういうと思って、概算してみました」


優希は鞄の中からクリアファイルを取り出し、一枚の紙を取り出した。そこには商品名、個数、金額等が並べられていた。


「何これ⁉昨日下見したばっかりなのに、もうこんなの作ったの?」

「まあな。とはいっても、昨日チェックしたやつと、容器とかは100均で買うことを前提にしてるし、ケーキの値段も適当だけどな」


確かにそこには、昨日スーパーで見た売値で書かれていた。ケーキも1つ200円と仮の価格で試算されていた。


「俺が勝手に試算しただけなんだけど、飲食関係で7万円くらいで収まる予定なんだよね。価格交渉次第ではもっと安くなるかも」

「だけど、残り1万円で内装は足りるのかしら?それに備品もあるでしょう?この内容だと少なくともクーラーボックスくらいは要るんじゃないかしら」


茜が言うことももっともである。しかし優希には考えがあるらしく動じた様子は無い。


「これはクラスの皆に訊いてみないと何とも言えないけど、備品は皆に持ってきてもらえないか頼もうと思ってるんだよ。実行委員の会議でも持ち込みアリって言ってたしね」

「そうなのね。それはそれで、何が家にあるのか確認しないといけないから時間が必要ね」


茜は納得した様子で、弁当を食べ進める。


「あとは接客か?」

「だな。これは希望者を募るしかないな。とはいえ、あまりに希望者が少ないと推薦せざるを得ないけど。途中で交代させないと文化祭を楽しめないからな」


そこで思い出したように桜が口を開く。


「そういえば、結局制服の予備ってあるんだっけ?」

「先生に訊いてみたんだけど、2着しか無いらしい。これも誰かから借りるしかないな。俺も予備の制服が新品であるし、それを貸してもいいかなと思ってるよ」

「そうなんだ。とりあえずは接客の人数を決めなきゃね。でも、それよりは内装を決めるのが先かな」


うーん、といった様子で桜が考えていると海斗も同じ考えだったようで同意してきた。


「だな。しかし、考えてみると意外と決めることが多いんだな。仕入値が決まれば売値が決まるだろうし、考えてたらキリがないな」

「他の人からも意見が出るかもしれないしな。まあ、例年やってるイベントだし、何かあれば先生達に訊いたらアドバイスしてくれるだろう」


話し合いも一段落したところで時計を見ると、あまり時間が残っていなかった。優希以外はすでに食べ終わっていたが、優希が中心となって話していたため、机にはいくつかパンが残されていたのだった。



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