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仕入れ候補

二手に分かれ店内を歩き始める。


「さて、何があるのかな?桜は普段来てるんだろ?何かオススメは無いか?」

「私?」

「ウチのクラスはデザートが中心のメニューだからな。多分女性客のほうが多いし、桜の意見は参考になると思うよ」

「それじゃあねー。こっちだよ」


桜が歩き出し後を着いて行くと、そこは冷蔵コーナーだった。

チーズやヨーグルトが並べられている中に、その商品は並べられていた。


「これ!この辺りは凄くオススメだよ!」


桜は両手に1リットル入りの紙パックを持ち、楽しそうに笑う。

しかし、それに対して優希は非常に怪訝そうな表情をしていた。


「え、飲み物?杏仁豆腐とカスタードプリンとか、飲み物としては攻め過ぎじゃないか?」

「ふふふ、優希君。それが違うのだよ」


優希が知らないことを自分が知っていることが嬉しいのか、桜はドヤ顔で杏仁豆腐と書かれた紙パックを手渡した。


「これは飲み物ではなく、デザートそのものなのだよ!」


「え、マジで⁉」


優希は渡された杏仁豆腐のパックをまじまじと確認すると、そこには確かにパックからの取り出し方が書かれており、飲み物で無いことは明らかであった。


「この量で200円……。買って帰ろう」


優希はパックに入って売られていることにも驚いたが、この量で200円という安さにも非常に驚いた。


「優希君、買うにしてもお店を出る直前に取りに来よう。持って歩くには重たいよー」

「ああ、すまない。あまりの衝撃に思考が追い付かなくてな」

「甘いものが好きだって言ってたもんね。ぜひ食べて頂きたい。これはイチオシだよ!」

「ありがとう。これは知らなかったよ」


杏仁豆腐以外にも、プリン、コーヒーゼリーといくつか種類があり、優希はそれぞれを手に取ってパッケージを興味深く眺めていた。


「あ、違うわ。俺が買うのが目的じゃなくて、文化祭に使えるかが問題だった」


完全にデザートに意識を奪われていた優希は、ようやく本題を思い出した。


「そうだね。でも、これを小分けにしてお皿に盛れば、それだけで商品に出来ると思うな。単価も安いでしょ?」

「そうだな。そのまま出してもいいし、ミントの葉とかを添えても綺麗かもな」

「いいねー!何だか、お店みたい!それじゃあ、プリンを出すとしたらカラメルソースも用意しないとね」


桜は提供される形を創造したのか、満足そうな顔をしていた。




海斗side


優希達が冷蔵コーナーを見ている一方、海斗達は通常のお菓子コーナーに来ていた。

通常のスーパーで見かけるお菓子も置いてあるが、大容量のモノや普段見かけないメーカーのモノも多数並べられている。


「優希達はあっち側に行ったみたいだし、俺たちは違うコーナーを攻めていくか」


遠目に優希たちの姿があり、海斗は一瞥すると茜へと向き直る。


「とは言っても、このコーナーだと出来ることは限られている気もするけれど」


茜は手近にあったスナック菓子を手に取り、内容量を確認していく。チップス系にありがちなのが、袋ばかり大きくて、中身はあまり入っていないということがある。茜はそのことを気にしていた。


「そうだな。いくつかの商品を一皿にまとめて、『お菓子盛り合わせ』みたいな感じで良いんじゃないか?甘いものが好きな人ばっかりじゃないから、塩気のあるお菓子なんかを混ぜると食べやすいだろう。茜、客層はどの辺りになると思う?」

「そうね……。良く考えると難しいわね。私達が誰を招待するかに掛かってはいるのだけど、家族連れが多いかも。普通のカフェみたいにカップルや友達で来店する可能性のほうが低いかもしれないわ」


問われ話し出せば、見えていなかった部分も浮き彫りになる。


「やっぱり茜もそう思うか。弟や妹に連れられて大人が来店するケースもあるだろうし、大人、特に父親が好みそうなものを一つは入れておきたいところではある。母親はデザートでも大丈夫だと思うけどな」

「でも、お酒のおつまみになるようなものは出さないわよ。お店の雰囲気にそぐわないわ」


そうこう話ながら、それぞれが良いと思う商品をいくつか手に取る。


「この辺りの商品かしら」


茜は手に持っていたポテトチップス、近くにあったトルティーヤのチップスを海斗に見せる。


「そうそう、こういうやつ。それと、一口チョコレートも加えておくか。個別に包装されていたら分けやすいだろう」

「そうね。ところで、これはどうすればいいのかしら?買って帰るわけにもいかないし、名前と値段だけ控えておく?」

「んー、流石にホームページに商品紹介は無いだろうからなー」


そう言いつつも、念のためにとスマホでホームページを確認していると、そこには一部の商品ではあるものの画像とともに商品が掲載されていた。


「いくつかは載ってるな。値段は載ってないし、名前も併せて控えておくか。一応優希にも連絡して…っと」


そのまま優希へと電話をして同様に対応しておくように伝える。また、軽く状況を確認する。優希達はある程度目星は付けたらしく、値段を再度確認したら合流する運びとなった。


「優希達はもうすぐこっちに来るってさ」

「そう。私たちもいくつか候補は上げておきましょう」


二人は手早く相談しながら、お菓子を見繕っていく。程なくすると優希と桜の姿が見えてきたのだった。




優希side


優希と桜は海斗達と合流する。

目星を付けた商品はスマホにメモをしており、優希と海斗が交換することでお互いのピックアップした商品を確認する。


「茜、どう思う?」

「そうね。冷蔵のものが多いのが気になるわね。当日の保存はどうするのかしら?」


茜の疑問に桜は困ったような表情を浮かべる。


「保存かー。それは考えてなかったね」


桜がそう言って視線を優希に向けるも、優希はそこまで困った様子ではなかった。


「んー、冷蔵庫は無いだろうし、発泡スチロールに氷を入れてその中にいれておけば大丈夫だろう。これも交渉次第だけど、このお店で発砲スチロールと氷を貰えればラッキーだな、とは思ってるよ。入口の傍に製氷機があったけど、多分冷凍食品が解けないように準備されてるんだろ?」

「誰が運ぶんだ?」


海斗が問えば、そこまで詰められるとは思っていなかったのか、少し驚いた表情をしつつも優希は話し出す。


「佐藤先生とか車出してくれないかな?当日の朝だけど」

「まあ、今度先生に聞いてみるか。それじゃあ、逆にそっちから訊きたいことはあるか?」

「ほら、桜」


優希が唐突に桜へ話をパスすると、桜は自分に振られるとは思っていなかったのか慌ててしまう。


「えっ!私?えっとねー、お菓子のチョイスがカフェ向きじゃない気がするけど、これで良いのかな?」


海斗は桜がそこに切り込んでくるとは思わず、意外そうな顔をする。

そこは先ほど茜と話をしたところであり、同様の説明を桜にも行う。それを聞き、桜も納得した様子であった。

その後は四人で簡単に店内を見て回り、飲み物の価格をチェックしていく。

確認を終え、そのまま店を出ようとしたところで優希は買うものがあったことを思い出す。

一言声を掛け離れると、しばらくしてパック入りのプリンと杏仁豆腐を買って現れた。


「おまたせ。ちょっと個人的に買ってきた」


海斗達に袋の中身を見せると、その反応も好ましいものだった。


「あら、良いチョイスね。ウチでもたまに買う商品だわ」

「あー、確かに茜の家で食べさせてもらったことあるわ。結構美味いよな」


その反応に満足すると四人は店の外に出る。


「それじゃあ、また明日。確認することも多いから、話し合いの時間を貰えるように先生に言わないとな」

「だな。あんまり授業が潰れるのも困るから、さっさと決めてしまおうぜ。そうだ、そこにバス停があるから、バスで帰ると楽だぞ」


海斗が指刺す先には確かにバス停があり、待っている人も数人いた。

そのまま、また明日と声を掛け、海斗と茜は徒歩で帰っていくのだった。

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