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店長遭遇

あけましておめでとうございます。

本年も宜しくお願い致します。

四人はスーパーの中へと入っていく。

海斗と茜は何度も来ているのであろう、必要なものはあっちにあるのでは?と相談しあっていた。


「桜はこのスーパーには来たことあるのか?」

「そうだね。ちょこちょこ来てるかな。業務用っていうだけあって、大きいサイズが多いんだけど割安でね。冷蔵庫の空きに余裕があるときなんかは覗きに来るよ。帰り道に買って帰るのは大変だから、お父さんかお母さんに休みの日に車を出してもらわないといけないけどね」

「へー。俺も何か良いものがあれば買って帰ろうかな。というか、そうだよな。買った荷物を学校まで運ばないといけないのか。先生が車を出してくれないかな?」


優希は買った後のことを考えて頭を抱えた。

担任のいつもの姿を思い出すと、そういうお願いは聞いてくれないのではないかと考え、どうすれば運べるかということに思考を割いていた。


「佐藤先生?言ってみたら意外と聞いてくれるかもしれないよ?」


大丈夫なのでは?と多少楽観的に考えてるのか、桜はそう答える。


「二人ともどうしたんだ?移動するぞ?」


海斗から声が掛かり思考が中断される。

荷物のことを考えている間に、どのコーナーを見て回るのかがあらかた決まったようだった。

移動している間も優希はキョロキョロと棚に視線を送っていた。


「あれ?優希君、お店が珍しい?」

「まあな、うちの近所には無かったから。そういうスーパーがあることは知ってたけどね」

「結構珍しいものもあって、見てるだけでも楽しいんだよ。冷凍食品もたくさんあるから、優希君の晩御飯も見つかるかもね。もちろん冷凍食品だけじゃ体に悪いから、ちゃんと野菜も食べないとダメだよ?」


桜は人差し指を立て、子供に言い聞かせるように言葉を紡ぐ。


「いや、まだ買うと決めた訳でもないのに、なんで俺は怒られているのでしょうか」


優希は困ったように笑いながらも桜を見つめるのだった。



歩いているうちに海斗達は目的地に着き、足が止まった。

そこは先ほどまで桜が話題にしていた冷凍食品コーナーであった。


「あれ?冷凍食品なのか?てっきり製菓材料だと思ってたけど」

「ああ、スマホで調べたら冷凍で安く売ってるらしくてな」

「ほー、流石は業務用」


優希が感心していると、少し離れたところから茜の声がした。


「ねえ、このあたりだと思うのだけど」


茜と桜はすでに商品のチェックを始めており、その様子は普段から買い物をしていることが伺えるようなテキパキとしたものだった。

優希達が茜に近づいていく。

茜の視線の先には確かに冷凍タピオカの姿がある。しかし、いくつか種類があるようで、どれが文化祭に適しているのかは判断が難しかったようだった。


「いくつか種類があるんだね。こっちはタピオカミルクティーセット、これはタピオカだけなんだね。わっ、でもこれ安くない?300グラムで300円ちょっとだって。10人分くらいかな?」


桜がそれぞれを手に取りながら説明書きを確認する。


「全部で300人を見込むとして、仮に飲み物のオーダー半分がタピオカで150食、普通に買っても5,000円くらいで済むのか。これにミルクティーと容器代が掛かるとしても、意外と安く収まるんじゃないか?」


優希は値段を聞くと、さっそく頭の中で試算を始める。

テレビで見るような商品をイメージしていたため、原価もそれなりに掛かるのではないかと考えていた。この価格で提供できるというのは僥倖であった。


「そうね。問題はこの店に容器が売っているかということよ。今まで何度も来たことがあるけれど、食料品が多くて、そういったものを見た記憶は無いわ」

「うーん、考えても仕方がない。ちょっと聞いてくるか」


優希は少し離れたところで品出しをしている男性店員のところへと駆け寄り事情を説明し始める。

するとどうやら、どの男性は店長だったらしく、優希は店長を伴い桜たちの元へと戻ってきた。


「初めまして。店長の石井です。星ヶ丘高校の文化祭で商品を仕入れたいとのことですが。何かお困りのようで」


店長は人当たりの良い笑顔で話しかけてくる。


「初めまして。星ヶ丘高校二年二組の羽田と言います。実は……」


海斗が代表して話を始める。多少は周囲からの補足が入ったものの、海斗が中心となり、文化祭のこと、出し物、仕入れの考えを伝える。

過去にも星ヶ丘の生徒が仕入れ交渉に来たことがあるとのことで、理解を得られるまでそう時間は掛からなかった。

しかし、カップ、タピオカ用ストローは取り扱っておらず、この店では対応出来ないことが分かった。


「本日は多忙なので詳しくお話は出来ませんが、後程こちらにご連絡下さい。せっかく当店を選んで頂けた訳ですし、こちらとしても応援しますよ」


店長が名刺を取り出し海斗がそれを受け取ると、そこには電話番号、メールアドレスが書かれていた。


「電話でも構いませんが、お互い仕事と学校でしょうし、メールでご連絡頂くのが確実かと思います」

「ありがとうございます。それでは、またご連絡させて頂きます」


そういって店長は再び仕事に戻っていくのだった。


「何とか仕入れられそうで良かったな」

「海斗、あんな言葉遣いも出来るんだな」


話し合いの場に海斗が立ったことはあまり驚かなかったものの、その言葉遣いの変化は優希にとっては衝撃だった。


「驚くところはそこかよ。学年上位を舐めるなよ?こんな格好で礼儀もなってないなんて最悪だからな。そこら辺は気を付けてるよ」

「真面目か!」

「そんなことより、仕入れる商品に目星を付けるぞ。仕入れられることは決まったし、次に店長と会うときは交渉だ」


優希と海斗だけで話が進み始め、そこに桜は割って入った。


「えっ?私達で商品を決めて良いの?」

「俺達だけで決めはしないさ。ある程度商品をこっちで絞って、その中からクラスの皆に選んでもらうつもりだよ」


優希は海斗の考えを理解しており、海斗は隣で頷いていた。


「そうだよね。びっくりしちゃった」


商品を選ぶということにプレッシャーを感じていたのか、桜はホッとした様子であった。


「さてどうするか。四人で回っても仕方がないし、二人ずつで見て回るか。俺は当然茜と回るぞ」

「当然って貴方ね……」


そう言いながらも満更でもない様子の茜であった。


「構わないぞ。それじゃあ俺達も二人で回ろうか」


予定調和のような別れ方ではあったが、優希としては何の問題も無いため、海斗の言葉に賛同し桜へ声を掛けた。


「うん!」


二組に分かれ、スーパー内のチェックが始まるのだった。


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