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交渉は大変?

晃成のアピールが届かなかったことにより話が一段落したため、話題が切り替わった。


「葵先輩と晃成のクラスは文化祭の出し物決まった?」


優希が問いかければ、二人は少し思い出すような素振りを見せて


「……お化け屋敷」

「俺のところはドーナツだったかな」

「なるほどね」

「そう言う兄ちゃんたちのクラスは何をするの?」

「男装喫茶」


その出し物の名前を聞き、晃成だけでなく葵までも少々驚いた顔を見せる。


「え、普通の喫茶店じゃないの?」

「やることは普通の喫茶店と変わらないと思うけど、接客を女子が男装でやるよ」

「うーん、なんだか凄く気になるから、当日は兄ちゃんのクラスに遊びに行くよ!葵先輩も一緒に行きましょう!」

「……休憩時間が重なれば、別に構わない……」


ちゃっかりと一緒に回る約束を取り付ける晃成だった。


「そうだ、葵先輩。先輩が一年の時の文化祭はどうでした?」


葵は思い出すように視線を彷徨わせると


「……特に今回と変わらないと思う……。参加人数も上限は決まってるし。招待券を渡す相手は選べるから、大きなトラブルも起き辛い……」

「結構、身内でワイワイするイメージが強そうですね」

「……そうかも。だから、当日よりも準備が大変。ウチの文化祭は調理不可だから、外と交渉しないといけない。……ちなみに、ウチのクラスはそれが面倒で飲食店は避けた……」

「やっぱり、交渉は面倒なのか」


海斗が頭の後ろで手を組みながら言葉を発した。


「……地元のお店は文化祭のことを知ってるから、話も結構融通が利く。大変なのはチェーン店を選んだクラス……。店舗の一存では決められないこともあるから、時間が掛かるかもしれない……」


葵の言葉に晃成が天を仰いだ。


「ウチのクラス、チェーンのドーナツ店なんですけど……」

「どんまい」


隣に座っていた優希が晃成の肩を叩く。しかしその顔は意地悪く笑っており、全く同情している様子は見られなかった。

その後は楽しく雑談しつつ、あっという間に昼休みが終わるのだった。



授業も終わり放課後になる。いつものように四人で校門のところまで歩くと、ふと海斗が提案する。


「そうだ、優希と桜に時間があるようだったら、ちょっと業務用のスーパーを覗いてみないか?必要なものが売ってなければ、仕入れも何も無いからな」

「俺は構わないぞ」

「私は、……ちょっと待ってね」


すこし離れてスマホを取り出すと、菫へ連絡しているようだった。


「……うん、うん。晩御飯は帰ってから食べるね!はーい」


みんなのところへ戻ってくると


「私も大丈夫だよ!」

「それじゃあ行きましょう」



海斗と茜が先を歩き、その後を優希と桜が追う形で歩いていく。

自然とそれぞれ1対1で話す形になるが、あまり気にした様子も無く話しながら歩く。


「桜、菫さんは何か言ってたか?」

「ううん、特には。晩御飯は食べてくるの?とか。あー、優希君は一緒なの?って訊かれたよー」


困ったような顔で桜は笑って言うのだった。


「そうなのか。確かに桜と一緒に帰らなかった日って無いよな。転校してきてから、ずっと一緒な気がする」

「そうだねー。お互い部活もしてないから、用事が無いと帰るだけだし」

「去年はどうしてたんだ?海斗達とは家が逆方向だろう?」

「うーん、本屋さんに寄ったり、買い物して帰ったりって感じかな?」

「一人で?」

「もちろん。……なんだ、ぼっちだとでも言いたいのかー?」


桜はジト目で優希を見つめると、肩をぶつけてくる。

もちろん冗談で、えへへと笑う。ツボにはまったのか、えい、えい、と言いながら何度も肩をぶつけるのだった。


そんなやりとりをしつつ歩き続けふと海斗達の方を見ると、茜の顔には笑顔が浮かんでいた。普段あまり表情を変えないと思っていた優希からすると、その表情は驚くべき変化であった。


「茜が笑ってる……!」

「茜ちゃんって、海斗君と二人で話してる時は結構表情が変わるんだよ。もちろん私と話すときも笑ってくれるし、表情は変わるんだけど、なんか質が違うというか」

「後ろの二人、聞こえてるわよ?」


茜が振り返り、ジト目で優希と桜へ視線を送る。


「いえ、非常に可愛らしい笑顔で良いのではないでしょうか?」


隣では桜がうん、うんと頷いてた。

茜はふぅ……とため息をつくと視線を少し先へと向けた。


「馬鹿なこと言ってないで。ほら、着いたわよ」


話しながら歩くと、その距離もあまり苦にはならず、いつの間にか目的地のスーパーに到着していた。





海斗side


いつもの帰り道に自分たち以外がいるというのは少し不思議な感じがしながらも、それはそれで良しという感じで、海斗と茜は帰り道を歩く。


「そうだ、茜」

「何かしら?」

「文化祭でウチのクラスは男装喫茶をやるだろ?必然的に接客は女子がやることになる訳だが」

「ええ、そうでしょうね」

「茜は接客側に立候補するのか?」

「する訳無いじゃない。面倒だし、私が接客するより他の子が表に立った方が需要があるでしょう?」


何を分かりきったことをといった表情で淡々と海斗の言葉を否定する。


「それは残念」

「何?海斗は私に接客をしろというのかしら?」

「いや、単純に色々な姿の茜が見てみたいと思ってな。……いや、茜の接客を俺が受けてみるというのも良いかもしれないな」


名案とばかりに提案してくるものの、茜はその意見を一蹴した。


「嫌よ。興味本位で見られるのは好きじゃないわ。それに、貴方この間から変よ?メイドとか男装とか。海斗ってそんなにコスプレ趣味だったかしら?」

「いいや?趣味という程の興味は無いかな。大事なのは誰が衣装を着ているかっていうことだよ」


海斗は当然のように笑顔で答える。

その意味を茜はすぐに理解すると顔を赤くしてしまう。


「何だか海斗、少し変わったわ。優希に影響され過ぎなんじゃない?」


茜は俯きがちにそう呟く。

海斗は一度茜から視線を切って正面を向く。


「そうかもしれないな。でも、言わなきゃ伝わらないっていうのは本当だろう?俺ももう少し思ってることは言っていこうと思ってな。嫌だったか?」

「嫌……じゃないけど、その、困るわ……」


茜はどう反応したらいいのか分からず困惑してしまう。


「悪い悪い。困らせるつもりは無いよ。あんまり深く考えるな。いつも通りでいてくれ」


海斗はそう言って、茜の頭をポンポンと撫でる。

茜は少々驚いたものの、撫でられたこと自体は満更でもないのか、その顔には笑顔が浮かんでいるのだった。


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