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仕入れ先を考えよう

翌日の月曜日、この日も優希と桜は一緒に登校し、自分の机に荷物を置くと海斗達が声を掛けてきた。


「おはよう、二人とも」

「おう、おはよう。今日も相変わらず仲が宜しいようで」

「おはよう。仲が良いのは海斗達もだろ?お互い様だよ」

「茜ちゃんも、海斗君もおはよう!」


桜は笑顔で挨拶を交わす。

海斗はおや?といった様子で桜に訊いてみる。


「珍しいな、からかっても桜が慌てないなんて。この二日間で何かあったか?」

「私だって、いつまでもからかわれてばかりじゃないんだよ!」


少し自慢げに桜が話しだす。


「桜にどんな心境の変化があったかは知らないけど、土曜日は一緒に出掛けたな。この前言ってただろ?」

「親父さんのプレゼントを買うって話な。ま、桜が否定しなくなっただけでも進展があったと思っておくさ」


そう言って海斗は笑う。

桜と茜は別の話題に移っており


「桜、英語の課題はちゃんとやってきた?」

「ふふふ、今回はバッチリだよ!ほら!」


鞄から課題を取り出し、茜に見せる。


「ふむ」


茜は眺めたものの、それが合っているかどうか分からないため、自分以外の人間に任せることにした。


「海斗、パス」

「ん?どうした?」


茜から桜の課題を受け取ると、ざっと目を通した。


「特に問題は無いみたいだけど、これがどうかしたのか?」

「良かったわね、桜」

「これ、桜の課題か。一年の時にも同じような課題が出てたけど、その時と比べたら随分と良くなってるな」


桜に課題を返しつつ海斗が褒めちぎる。


「でしょー!優希君に教えてもらったんだ!」


えへへといった様子で嬉しそうに桜が答えた。

わざわざ言う必要は無いと思っていた優希は、まさか桜が自分の名前を出すとは思っておらず、少々面食らってしまう。


「ほー、優希もなかなか勉強が出来ると見た!」

「人並みだと思うけどな。中間テストをお楽しみにってことで」


そんな話をしているとチャイムが鳴り、皆が席に着き始める。

程なくすると担任の佐藤静香が入ってくる。


「みんなおはよう。今日の一時限目は私の授業だが、予定を変更して文化祭に関する話し合いの時間にしようと思う。異論は無いな?」


異論は無いようで、あちらこちらから同意の声が上がる。


「今日の連絡事項は無いが、先日出していた英語の課題だけは提出してもらおう。後ろから回して、先頭の者がまとめて持ってきてくれ」


鞄から課題を取り出し、前の席の生徒へと回す。

課題を忘れているような生徒はいないようで、きちんと人数分集まっていた。


「ふむ、全員きちんとやってきたようだな。内容を確認して今日明日中には返却するとしよう」


静香はパラパラといくつかの課題を確認しながら、そのように約束をする。


「まだSHRの時間だが、このまま始めてしまうか。伊藤、橋本、進行を任せた」


時計を確認し静香はそう言うと、教室の隅に立てかけてあるパイプ椅子を広げ腰を下ろす。

完全に進行を委ねてしまうつもりの様だった。

指名を受けて優希、桜は教壇へ立ち、前回と同様に優希がメインで司会を進めていく。


「それでは始めます。先週金曜日に実行委員会が開かれていますので、そのフィードバックからです。桜、書記を頼む。」


桜はその声に頷き、チョークを片手に黒板の前で待機する。


「まず、各クラスの出し物が決定しました」


そのまま出し物を読み上げ、桜が板書していく。

そうして出し物一覧が出来上がる。


「中には明確に提供するものが決まっているクラスがあります。ドーナツやタピオカですね。対してウチのクラスは男装喫茶をメインに据えていますので、提供するものが決まっていません。今日はこの点を詰めていきたいと思います。とりあえずは自由に提供したいものを考えてみて下さい。ただ、自分たちで交渉をするということをお忘れなく。今回は周りと相談可としますので、今から10分ほど検討してみて下さい」


優希のその声を皮切りにして一気にクラスの中が騒がしくなる。

椅子ごと移動して話しだす者や、数人で集まり話し始める者様々だった。

こういったものを見ていると、クラス内でいくつものグループが出来上がっていることが一目瞭然であった。

そんな風にクラスを俯瞰で見ていると、海斗から声が掛かった。


「二人も一緒に考えようぜ。別に実行委員が意見を出したらいけないって決まりは無いんだろ?」


海斗と茜は優希達の机の周りに自分たちの椅子を持ってきており、そこで話し合う気満々であった。

優希達は自分の机に戻ると、早速話し合いを開始する。


「さて、話し合いとは言ったもののまとまるかね?」

「さあな。とりあえず意見が出れば、その中から単価、交渉のしやすさとかを鑑みて、選択肢を絞っていくさ。問題はどれだけ仕入れるかだな。少なすぎてもダメだし、余ると利益が減ってしまう」

「あら、ウチの学校の文化祭は招待制なのよ?生徒と招待者で最高4人ということを考えれば、全校生徒が600人×4人、教職員を合わせても最高2500人といったところでしょう。クラスの半分が飲食店なのだから、一日目、二日目を合わせると1クラス300~400人程度が目安じゃないかしら」


スラスラと茜が頭の中で人数を計算していく。


「そうだな。平均はそんなところなんだろうが、ウチは喫茶店だからな。あまり長居をされて回転数が上がらないようだと、捌ける数が減るんだよなー」

「そこは時間制限を設けるしかないね。もしくはテイクアウトもありにしてお客さんを増やすとかかな?」


優希と桜も自分の意見を述べるが、海斗だけは沈黙していた。


「みんな、話が変わってきてるぞ。まだ仕入れ先も決まってないのに、その話は気が早すぎるだろう?」


海斗はやれやれといった様子で話を元の路線に戻すのだった。


「しかし、仕入れ先か。この前駅前を見て回ったんだけど、なかなか難しそうだと思ったんだよな。売値しか分からないから高く見えるし」


優希は腕を組み、思案顔で先週金曜日のことを思い出す。


「改めて考えると結構難しいものね。仕入れに全てが掛かってというのは」


茜も桜も、うーんといった様子で悩んでいた。


「とりあえず何か意見は出さないとな。飲み物やちょっとしたお菓子も必要だろう。このあたりのものなら業務用のスーパーで安く揃えられるんじゃないか?」


時間が迫っていることもあり、海斗がまとめにかかる。


「そんなスーパーあったか?」


優希は少ない知識を総動員して地理を思い出しにかかる。しかし、優希の知識の中には存在しないスーパーだった。


「優希たちが帰る方向じゃないからな。俺と茜が帰る方向にあるんだ」

「なるほどね。時間も無いし、俺たちの意見はそれでいい?」


桜と茜にも了解を取り頷いたことを確認すると、優希と桜は席を立ち、再び教壇へと戻るのだった。


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