初訪問 (桜編)
前話には入れ辛かったので別にしました。
短いです。
「優希君の家でやるの……?」
そう呟くと、慌てて自宅へ戻る。
「あら、早かったのね。優希君は喜んでくれたかしら?」
菫は戻ってきた桜に声を掛ける。
当然、桜がおかずを優希に届けたことは知っており、その時の反応が気になっていた。
「うん!喜んでもらえたみたい」
「良かったわね。私としても、最近は積極的に料理を手伝ってくれて助かるわー」
菫は含みがあるような言い方で、うふふと笑う。
「たまたまだよー!私が料理好きなのは知ってるでしょ!」
「はいはい」
悪びれる様子も無く、桜の言葉を受け流す。
そんなやりとりに父である恭介は入っていけず、ソファでテレビを見る振りをしながら、二人の会話に耳を傾けるのだった。
「そうだ!優希君と勉強することになったから、ちょっと出てくるね」
「あら、良いことじゃない。あんまり遅くならないようにね。気を付けて行くのよ?」
「うん!……大丈夫」
桜が一瞬視線を逸らすと、それを見逃さなかった菫が顔を寄せ小声で訊いてくる。
「場所はどこなの?」
「隣……」
桜が少し顔を赤らめてそう答えると、菫は一層笑顔になる。
「うふふ、優希君ってホント積極的なのね」
「今回はホントに何も考えてなかった気がするけどね」
桜は自分が変に勘ぐり過ぎたのでは?と思い、深く考えることを止めるのだった。
自室に戻るとバッグに勉強道具を詰める。
「お邪魔するのに変な格好なのは失礼だよね。念のためだし……」
姿見の前に立ち自分の姿をチェックする。
軽く髪を整え、服装に乱れが無いことを確認するするのだった。
自室から出てきたところで、恭介と鉢合わせた。
「桜、どこか出掛けるのか?」
「うん、友達と勉強してくるよ」
「そうか、せっかくの時間だからしっかり勉強するんだぞ」
「はーい!」
玄関を出るところで菫が見送ってくれる。
「それじゃあ、お勉強頑張ってね」
「うん、行ってくるね!」
見送られ家を出て徒歩一秒、目的地へ着いてしまう。
勝手に入って良いとはいうものの、初訪問の家でそれは緊張してしまう。
ドアノブに手を掛けるもなかなか扉を開けられない。
「よし!」
ひとつ気合を入れて扉を開くのだった。
 




