プレゼント決定
二人は書店へと到着すると中へと足を踏み入れた。
以前晃成と訪れた書店ほどの大きさは無いが、買い物ついでの客が入りやすいよう、通路から見える位置に新刊や話題の本を並べており、他の店の袋を持ったお客さんの姿も多く見られた。
「さて、一応書店に来てみたけど、お父さんはどんなジャンルを読んでるんだ?」
「うーん、結構ミーハーだから、○○大賞みたいな本を買ってるみたい。ジャンルはバラバラだね」
「なるほど。それじゃあ、この辺の本に手を付けるのは被る可能性が高いな」
優希は『話題の本』とポップの書かれたコーナーに視線を向ける。
「そうだね。自分で買っちゃうかも」
「いっそのこと自分じゃ買わないような本をプレゼントするとか。これは結構ギャンブルだけどな」
「確かに、普段触れないジャンルはこういう機会でも無いと読まないとは思うけど。まあ、せっかく来たんだし色々見てみようよ!」
そう言って二人は様々なコーナーを冷かして回る。
漫画コーナーに立ち寄れば
「お、新刊出てるのか」
優希が少女漫画の新刊コーナーで立ち止まる。
それは少し前に映像化もされた作品で、当時話題の俳優が主役を演じたことでも話題になったものだった。
「あ!その本、私も集めてるよ。優希君も読んでるの?少女漫画も読むんだね。ちょっと意外だよー」
「そうか?良い作品に男女は関係ないからな」
優希はそう言ってあとで買えるように、コミックを手に取った。
さらにほかのコーナーへ移動すると、心理テストやサブカルチャーが並ぶコーナーへ辿り着く。
「最近はクイズ番組が多いせいか、クイズ本も増えたな」
そう言って優希は棚から本を取り出し、パラパラとめくりだす。
「問題!音楽の歴史において、ドイツの3Bと呼ばれる音楽家と言えば、バッハ、ベートーヴェンともう一人は誰!」
唐突に優希が桜に向けて問題を出す。
突然問題を出された桜は少々慌てたものの、思考をクイズの方へとシフトさせた。
「えっと、えっと……。ブラームス!」
「正解!」
「急に問題を出すからビックリだよ!知ってる問題で良かったー」
安心したようにホッと一息つくと桜も棚に手を伸ばし、おもむろに一冊手に取って、適当に開いたページを読み上げる。
「問題!あなたは森の中に居ます。お腹が空いているため、木に生っている果実を採ろうと考えています。しかし、そのままでは手が届きません。どうやって採りますか。次の選択肢から選べ。って心理テストだこれ!」
「そうだな。出だしでそうだとは思ってたよ。でもせっかくだから、選択肢を教えて」
「1.木に登る、2.木の棒など道具を探す、3.自然と落ちるのを待つ」
「その中なら2番かな」
「ふむふむ、あなたの恋愛に対する姿勢を表わしています、だって。2番はすぐに告白することなく、外堀を埋めて成功確実な状態で告白する」
「ほー、当たってるのか?自分じゃよく分からないな」
「当たってない気がするよ。だって、初めて会った時に私に可愛い……とか……」
今までのことを思い出し、桜は顔を赤くしてしまう。
「恥ずかしがるくらいなら言わなきゃいいのに。顔が赤くなってるぞ」
優希が意地悪く言いながら、頬を指で突っつく。
「もう!優希君が悪いんだよ!」
顔を赤くしたまま、指に噛みつくふりをしてきたため、優希はスッと指を桜の頬から離すのだった。
一通り書店の中を巡るもこれだと言える本は見つからず、優希がコミックを一冊買っただけで書店を後にする。
「桜、どうする?一応酒屋も見る予定だったけど、グラスだったらさっきの雑貨屋で良い気もするんだが」
「そうだね。良いグラスが見つかったことだし、このまま決めちゃおうか」
「了解。それじゃあ戻ろう」
二人は再び雑貨店に戻ってくると、先程見ていたグラスコーナーを訪れた。
「さっきは二択まで絞ったんだよね。どっちが良いかな?」
桜は決めていた二つのグラスを手に取り、マジマジと見比べる。
「どっちも良いものだとは思うんだけど、桜が選んだ物の方がお父さんは喜ぶんじゃないか?」
「そうかな?せっかく優希君に来てもらったのに、私が選んじゃったら来てもらった意味が無い気がするよー」
「グラスっていうところまでは俺が選んだんだし、役には立てたと思ってるよ。それに、プレゼント選びっていう口実で桜と買い物に来れたんだし役得でしかないわ」
「またそういうことを言う!」
両手がグラスで塞がっている桜は、少し顔を赤く染め、肩をぶつけることで抗議してくる。
「ほらほら、結局どっちを買うんだ?」
「優希君のアドバイスを信じて、私が選んだ方を買ってくるよ!買ってくるからちょっと待っててね」
そう言って桜はグラスを持ってレジへと向かって行った。
優希は周りを見渡すと文房具コーナーが目に入る。そのままそのコーナーへと移動する。
「海斗の誕生日プレゼントもあったな。なにか良いものあるかな?」
「優希君見つけた!戻ったらいないんだから、ビックリしちゃったよ!」
「悪い悪い。海斗へのプレゼントをどうするか考えててな」
「そうだったね。それで文房具?」
「学生だしな。間違いなく使ってもらえるだろう?」
優希は一本のシャープペンを手に取り桜に見せる。
「これなんてどう?俺も使ってるんだけど、芯が折れにくいシャープペンシル。俺たちの学校は勉強が多いし、ノートに書くことも多いからな」
「テレビで見たことあるよ。私は道具にこだわってないから、使ったことは無いんだけど」
「長時間使うものだからな。ちょっとこだわると、結構楽になったりするんだよ」
「なるほど!せっかくだし、私も一本買っていくよ」
そう言って桜は自分用に一本選ぶのだった。
「桜はプレゼントどうするんだ?」
「じゃあ私はこれ!」
桜は可愛い猫のイラストが描かれた付箋タイプのメモ紙を手に取った。
「可愛くない?」
「ああ、可愛いな。桜は猫が好きなのか?」
「猫に限らず動物全般好き!触った時のもふもふ感とか最高だよね!」
過去に触った時のことを思い出しているのか、桜はえへへーといった感じで笑顔を浮かべていた。
「よしプレゼントも決まったし、さっそく買ってくるか」
「うん!」
今度は二人でレジに並び、海斗用のプレゼントを買うのだった。
心理テストは自分で考えましたが、似たようなものがあったらごめんなさい




