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誕生日は?

昼休みも終わりが近づき、晃成達と別れ教室へ向かう優希達。

ふと思い出したように優希が桜に声を掛ける。


「そういえば、桜。明後日の土曜日はどうするんだ?結局時間とか決めてないけど」


その言葉に桜よりも先に海斗が反応を示す。


「お、何?二人でデートか?」

「違いますー。お父さんの誕生日プレゼントを選んでもらうの。自分ではもうネタ切れになっちゃって」

「毎年桜はマメだよな」


流石にこの流れは想像できたのか、桜は慌てることなく事情を話す。

海斗も桜が毎年プレゼントを準備していることを把握しており、なるほどというように頷いた。


「そういえば、優希君の誕生日っていつなの?」

「9月25日だけど、何で俺だけ?」

「他の皆の誕生日は把握してるからね!」


少し自慢げに桜が胸を張る。そして思い出したように言葉を繋ぐ。


「というか、9月25日って私と一日違いだね!何で言ってくれないのー!」

「いや、流石に無理だろ」


何を言っているんだというような表情を作り優希がそう突っ込む。

そしてふと浮かんだことを聞いてみた。


「三人はお互いの誕生日って把握してるんだ?」

「まあな。その日は一緒に食事したり、何かをすることが多かったからな」

「へー。ちなみに一番誕生日が近いのって誰なんだ?」


それぞれの誕生日に集まると聞き、改めて三人の仲の良さを再確認した優希はちょっとした疑問を口にする。


「それは俺だな。5月5日だ」

「結構すぐなんだな。今年も集まるのか?」

「どうだろう?俺は別に無くても気にしないんだが、特に桜がな。この性格だから」


どういうことだろうかと桜に視線を送れば、当然といった表情で


「自分の誕生日に祝ってもらったのに、何もしないなんて、そんなのはダメです」


指でバツ印を作り、桜がそう訴えてくる。


「ほらな、律儀だろ?」


海斗はそう言いながらも、嫌なわけではなく声色は優しいものだった。


「だけど、今年は難しいかもな」


優希がそう切り出せば、桜は疑問に思ったようで


「どうして?」

「だって、海斗は茜と旅行だろ?日程次第では5日はこっちにいないんじゃないか?」


そう言われると海斗は先日の本屋での出来事を思い出した。


「旅行?ああ、この間の本屋での話か。あれは家族旅行だけどな。それに絶対5日に何かをする訳じゃないし。場合によっては多少早めたり、遅くしたりしてるぞ。そもそも、俺の誕生日は祝日だからな。わざわざそのためだけに外に出るのも申し訳無いだろう?」

「なるほど。というか家族旅行って、二人の家族全員で?」

「そうだな。昔から年に一回くらいのペースで旅行に行ってるぞ」


優希が無言で茜に視線を送ると平然と答える。


「家族ぐるみの付き合いよ?前に言わなかったかしら」

「家族公認ってやつか」


含みを持たせ優希が発言すると海斗がそれに乗っかってきた。


「凛さん、茜の母さんな。凛さんからは『いつになったら茜を貰ってくれるのかしら』って、ずっと言われてるくらいには認められてるんじゃないか?」

「ほー。茜も凛さんから何か言われてそうだな」


優希は意地悪くそう言うと、茜の表情は少し赤くなっているようだった。


「ノーコメントよ。それよりも話が逸れたのではなくて?桜との待ち合わせはどうなったの?」


茜は自分から注目を逸らすように軌道修正を図る。


「そうだった。桜、結局どうするんだ?俺は何時でも構わないぞ」

「うーん、優希君、お昼はどうするの?」

「適当にコンビニか買い置きのカップ麺かな」

「それじゃあ、お昼前に出掛けよう!そしてそのまま外食!そんな食生活は見過ごせません」


桜は優希の方を向き人差し指を立てて、決定と言わんばかりにそう言ってきた。


「それじゃあ、昼前に迎えに行くわ。家隣だし」


そうこう話をしているうちに教室まで来ており、それぞれの席に着く。

もっとも優希と桜は隣同士のため、そのまましばらく会話は続行されていたのだった。



桜side


その日の夜、自室でパジャマ姿のまま桜は困っていた。それは土曜日の服装をどうするかという問題だ。

夕食を終え、お風呂に入ってから、かれこれ二時間近く悩んでいた。


「どうしよう。友達と出掛けるだけとはいえ、普通の格好もなんか嫌だし、気合入れすぎても変に思われちゃうし……」


鏡を前に服を自分に当ててイメージしてみたり、ベッドにいくつかの服を並べ見比べてみたりしてみるものの、桜はなかなか決められずにいた。

そんなことを続けていると、なかなか部屋から出てこない桜を心配してか、菫が部屋を訪ねてきた。


「桜、全然部屋から出来ないけどどうかしたの?」


一応ノックをするものの返事を待たずに扉を開けて部屋を覗く。


「あら、どこかにお出掛けかしら?」

「お母さん、ノック位してよー」

「ちゃんとノックしたわよ。桜は集中してて気付かなかったみたいだけど」


一応言っただけで桜はあまり気にしていないようだった。


「そんなに服選びに時間を掛けるなんてデートかしら?」


我が娘ながら意外だと菫は思った。しかし、最近の娘の様子を見ていれば自然と相手が誰なのかは想像がつく。海斗の存在はもちろん知っているが、その可能性は限りなく低いと考えていた。


「相手はズバリ優希君ね」


桜は言い当てられたことに驚きながらも一応否定を口にする。


「デートじゃないよ。ちょっと買い物に行くだけだし。……相手は優希君だけど」


こういった時に誤魔化せばいいものの、素直に答えてしまうのも桜の美点といえば美点なのかもしれない。


「男女が二人で出掛ければそれはデートよ!」


菫が力説してくる。


「……どっちでもいいよ」


桜は顔を赤くしてプイッと顔を背けてしまう。


「それで?どんな服で会えばいいか悩んでるのね」

「……そう。何を着ても変な想像しちゃって」

「これから付き合いが長くなれば、一緒に出掛けることも増えるでしょう。そんなことじゃ身が持たないわよ?困った時は自分を信じて、自分が好きな格好をしていきなさい。相手が好きな格好に合わせていてもしんどいわよ?」


優希君の好みなんて知らないんだけど、とは思っていても口には出さず、桜は黙って頷く。


「それじゃあ、こっち!」


何だかんだで菫のアドバイスで吹っ切れたのか、ベッドの上で合わせていた服を指差し決定する。


「良いんじゃない?桜は可愛いんだし、自信持って!」

「もう!お母さん、出掛けるだけなんだからね!」


出掛ける前にはそんな一幕もあったとか。


更新が開いちゃいましたね。リアルがちょっと多忙なの。

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