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初登校

何だかんだで優しいのであろう。怒っているかと思えば、次の瞬間には普通に話しかけてきて、会話を続けながらマンションから高校までの徒歩20分という道のりを進んでいく。

高校まであと五分というところで


「桜、今日は彼氏と一緒に登校か?というか、いつの間に彼氏なんて作ってたんだよ」


身長は優希よりも少し高いくらいだろうか180cm程度、多少茶髪がかった髪、制服を多少着崩した格好の人物が、これは良いものを見たと言わんばかりに声を掛けてくる。

隣には同様に興味深そうにこちらを伺う女生徒が立っている。眼鏡に黒髪ロングの知的美人といった印象だ。


「初めまして。桜の彼氏、伊藤優希です。よろしく」


当然といったように挨拶をして、微笑み、握手を求めるように男子生徒へ手を伸ばす。

男子生徒も何か感じるものがあったのであろう


「俺は羽田海斗。よろしくな」


握手に応じ、笑顔で挨拶を返す。


「ちょっと、二人だけで挨拶してないで私も混ぜなさいよ」


そう女生徒が言いながら一歩近づいてくる。


「私は氷室茜。よろしく。それでふたりはどうやって知り合ったの?」


簡単に自己紹介を済ませ、話を進めようとすると


「ちょっとちょっと!誰が誰の彼氏なのよ!」


フリーズしていた桜が再起動し、顔を赤くして声を荒らげる。


「俺が、桜の、彼氏」


優希は自分を指刺し、次に桜を指しながら当然のように言った。


「はあっ?意味わかんないんですけど。というか、さっきまで桜って名前で呼ばなかったじゃん!」


真っ赤になり否定していると、優希、海斗がこちらを見てニヤニヤしていることに気付いて。茜も当然分かった上で話に乗っかっていたのだ。


「もう!みんなして私をからかうなんて信じられない!」


こぶしを握り、優希のわき腹を小突きながら。


「まあ、冗談はこれくらいにして」


笑いながらも、話を仕切り直すように海斗が言葉を発して


「それで、ホントのところはどうしたんだ?彼氏じゃないにしても男と一緒に登校なんて初めてじゃないか?」

「伊藤君がウチの隣に引っ越してきたのよ。家を出るときにばったり会って、挨拶してそのまま一緒に来たってわけ」

「それじゃあ、初めて会って1時間も経ってないって訳?その割には随分と仲が宜しい様で」


茜が表情はそのままに、淡々とツッコミを入れていく。


「もう!あんまり変なこと言わないの。伊藤君にも迷惑が掛かっちゃうでしょ」


桜が窘めるように茜へと釘を刺す。


「いや、別に迷惑じゃないけど?橋本さんみたいに可愛い子が彼女なら嬉しいな」


そう言いながらも意地悪く微笑むと桜もからかわれたことに気付き、もう知らない、と顔を赤くして早足で学校へと歩き出す。

残された三人は顔を見合わせると桜の後を追い、学校へと歩みを進めていくのだった。



「さて、職員室はどこかな」


始業の時間も迫っていたため、桜から口頭で場所を聞き廊下を歩いていく。

去年通っていた学校よりも新しいのか、随分と建物が綺麗に見える。探検するかのように校舎の中を歩いていくと職員室と書かれた札が掛かった部屋を見つける。

三度ノックをして、失礼しますと声を掛けながら入室していく。

近くにいた教師へと声を掛け、編入生であることを告げると、担当教師を呼びに席を離れる。

そうして待っていると、スーツ姿の似合う、いかにも女教師といったクールな出で立ちの女性を伴い戻ってきた。


「君が伊藤優希君か。担任の佐藤静香だ。これから教室に行ってもらうことになるが準備は良いか?」


優希のことが記載された資料に目を通しながら問いかける。


「ええ、大丈夫です。」

「そう。それじゃあ着いて来て」


そう言うと、扉を開け歩いてゆく。

職員室は二階にあり、二年生の教室も同じく二階にあるようだ。もしかしてと思い静香に訊いてみると、一階は三年生の教室、三階は一年生の教室となっているようだ。


教室の前に着くと静香がこちらを確認し、応えるように優希が頷く。

ドアに手を掛け、教室へと入っていく。

視線を感じつつも静香とともに壇上にあがり教室を見回す。

その中には桜、通学路で会った海斗、茜の姿があった。


「みんな静かに。それではホームルームを始める。今日は新しい学年の初日でもあるし、まずは自己紹介といこう。伊藤は最初と最後のどっちがいい?」

「え、俺はその二択なんですか?」


少々驚いたように返して。


「それじゃあ最初でお願いします」


一歩前へ進み姿勢を正すと


「今日からこの学校でお世話になる伊藤優希です。初めての土地で分からないことも多いので、美味しいお店とか教えてくれると嬉しいです。よろしくお願いします」


笑顔を浮かべながらも無難な挨拶でまとめる。


「ん?もう終わりか?伊藤に質問がある人はいるか?」

「はい!」


その声に反応し勢いよく手が挙がる。


「はい、羽田」

「彼女はいますか?」


男子生徒から出るには少々予想外の質問だったが


「いません」


何事も無かったように淡々と答えて。

その後もいくつか質問が来るも、最初以上に回答に困る質問はなく無難にこなしていく。

次に教室の端から順に簡単に自己紹介を行い、特に問題もなく時間が過ぎていく。


「よし、全員揃ってるな。最後になるが私が担任の佐藤静香だ。一年間よろしく頼む。伊藤の席は橋本の隣だ。ちょうど空いているようだしな」


そう促され、席に向かい椅子に座る。


「同じクラスなんてビックリだね。」

「ああ、俺も入って来たときに橋本さんの姿を見て驚いたよ」


荷物を置きながら苦笑していると、先程よりも小さな声で再び声が掛かる。


「マンションだけじゃなくて、学校でもお隣さんだね」


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