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知り合い?

休みも明け月曜日。

優希が家を出ると今日も桜と鉢合わせた。


「おはよう桜。何だか朝はよく会うな」

「おはよう、優希君。学校まで同じ距離なんだし、出る時間も似通っちゃうのかもね」

「それはそうだな」


二人は他愛もない会話をしながら通学路を歩いてゆく。

ふと優希は思い出した。


「そうだ。この前はから揚げありがとな。すごく美味しかった」

「そう?それなら良かった。だけど、ちゃんと野菜食べてる?お肉ばっかりじゃ身体壊しちゃうよ?」

「ポテチはジャガイモに入らない?」

「入りません!」


桜は小さく指で×印を作り、ちょっと怒ってみせる。

優希も分かって訊いただけなので、あえてオーバーなリアクションを取るのだった。


「ダメかー。まあ、男の一人暮らしなんてそんなものだよ。どうしてもっていう時は適当にサラダでも買って食べるさ」


優希はその話は終わりとばかりに、少し話題を変えて


「しかし、桜は結構世話焼きだよな。弟か妹でもいそうな雰囲気」

「そうかな?あ、もしかして迷惑だったかな……」


桜はハッと気付いたような仕草を見せると、分かりやすく落ち込んだ。


「まさか。すごく嬉しかったよ。むしろ、俺が気を遣わせて迷惑かけてるかもって思ってたくらいだ」

「迷惑なんて。こっちが勝手にやってるだけなんだから、嫌ならしてないよ」

「そうか?いつもしてもらってばかりだと悪いから、そのうちお礼でも……、って同じ話をこの前したな」


そういえば、といった感じで優希は土曜日に送られてきたメッセージを思い出す。


「そういえば、土曜日のメッセージの件、行きたいところとか決まったか?」

「メッセージ?ああ、あれね……」


送った内容とその時の状況を思い出し、桜は少々顔が赤くなってしまう。


「えっとね。もうすぐお父さんが誕生日なの。毎年プレゼントをあげてるんだけど、男の人が何を喜ぶのかイマイチ分からなくて。ハンカチとかネクタイは前にあげちゃったし」

「なるほど。それを一緒に探して欲しいってことね。了解」


優希はパッといくつか候補を考える。


「この辺の地理には明るくないが、駅前よりはショッピングモールの方がいいかな。チェーン店も多いし学生でも買えるやつがありそうだ」

「なるほど。それじゃあそうしよう!今年のプレゼントは優希君に掛かってるからよろしくね」


そういって桜は微笑む。


「これはプレシャーが半端ないな。ちゃんと考えないと」


わざとらしく考えるふりをしつつオーバーなリアクションを取ると、桜と顔を見合わせ二人笑いあうのだった。



午前の授業も終わり昼食の時間になる。優希は弁当を持っていないため、今日もみんなで食堂に行くことになった。

教室を出るとそこには晃成の姿があった。


「あ、兄ちゃん!」

「晃成じゃないか。どうかしたか?」


上級生の視線を受けながらも平然と待っている晃成、意外と肝が据わっているようだった。


「兄ちゃんとお昼食べようと思って。授業が早く終わったから待ってたんだ」

「俺は構わないけど、クラスの友達とは食べなくていいのか?もしかして……、いや、何でもない」

「ちょっと!それは心外だ!友達はちゃんといるんだからね」


まったく……、といった感じで晃成は腕を組みソッポを向いてしまう。


「晃成、悪いな。優希は俺達と昼飯を食べるんだ。二人きりじゃなくてもいいなら一緒に来るか?」

「羽田先輩、良いんですか!?」

「構わないわ。ただ、行くなら早く行かないと席が埋まるわよ」


海斗と茜が会話に割り込み、先を急がせる。確かにここで話していては昼食もままならない。


「桜も大丈夫だったか?」

「うん、構わないよ。それじゃあ、食堂に急ごう!」



食堂に着くとすでに多くの人が席に着いていた。


「あちゃー。この人数で座れるとこあるかな?」


優希がそういうと、同様に食堂を眺めていた海斗がとある席を指差した。そこには一人の女生徒が座って居た。早めに来たのか、はたまた微妙な時間に入ったためなのか六人掛けのテーブルに一人で座り食事をしていた。


「あの席なら座れるぞ。相席できるか訊いてくるわ」


そう言って海斗はさっさと女生徒のもとへ向かい交渉を済ませて戻ってくる。


「良いってさ。茜と桜、晃成は席に行っててくれ。他の人が座るかもしれないし。俺と優希は食券買いに並ぶぞ」


特に異論もなくそれぞれが指定された役割をこなしていく。優希と海斗の二人は頼まれていたものを席に運ぶ。


「おまたせ。早速食べようか」

相席を許可してくれた女生徒へ軽く会釈をすると優希たちも席に着く。

いつものように海斗と茜が二人で並び、対面に桜を挟む形で三人が座った。

しかし、どうにも晃成の様子がおかしい。


「兄ちゃん、前」


晃成は緊張した様子でチラチラと視線を正面に座る女性へ視線を送る。

しかし女性は気にした様子もなくマイペースに食事を続けていく。

優希も視線を送ると気付いた。先日、カフェ葵で給仕をしていた女性だということに。

それは当然、晃成の一目惚れした女性である。


「ああ、この前の」


二人の様子を不思議そうに見ていた桜が声を掛ける。


「二人は三条先輩と知り合い?」

「え、橋本先輩、ご存じなんですか!?」


晃成が驚いたように桜へ視線を向ける。

三条と呼ばれた生徒も不思議そうに顔を上げ、晃成へと視線を向ける。


「私たちはカフェ葵に良くお世話になってるから、自然とね」


女性とは目の前の男性のことを思い出した様子で


「……ああ、一昨日のお客さんだ……」

「覚えててくれたんですね!俺、伊藤晃成って言います。よろしくお願いします!」


覚えてて貰えたことが嬉しかったのだろう。晃成は笑顔で自己紹介を行った。


「……三条葵」


対して葵は淡々と名前だけを告げる。


「葵先輩ですね!よろしくお願いします!」

「……よろしく」


そこで葵は優希の存在に気付いた。


「君も一昨日のお客さん……」

「ええ、先日はごちそうさまでした。二年の伊藤優希です。三条先輩、よろしくお願いします」

「……よろしく。君も伊藤……。これは名前を呼ぶときに困った……」


とても困ったようには見えないが、葵は首をコテンと傾げる。


「俺のことは優希で良いですよ」

「兄ちゃんずるい!俺のことも晃成って呼んでください!」

「……優希、晃成」


それぞれを指差しながら確認する。

名前を呼ばれ、晃成は嬉しそうに微笑んでいた。


「自己紹介は終わったか?それじゃあ、いただきます」


律儀に待っていたのであろう、海斗が声を掛け食事が始まるのだった。

晃成は時折葵に話しかけながら食事を楽しんでいた。

葵の返事は相変わらず淡々としたものであったが。

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