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モノクロの旋律の中で  作者: 暁 楓
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モノクロの連鎖

何度目のため息か分からないため息を吐き鏡を見る。

ビジネスでもデートでも問題ない服装、化粧

それなのにため息を吐く少女、(たちばな) 雪乃(ゆきの)


ため息の発端は先日ある青年に会い音楽に関わる才能を認められた事。

「あんな世界で活躍してはピアニストから『一緒に曲を作らないか?』何て嬉しい通り越して恐ろしいよね。」


また「はぁ、、」とため息を吐きながら鏡の前から動かないでいる。

それは青年、神瀬(かんぜ) (あゆむ)の言葉だった。

雪乃の歌声、歌詞それらを目の当たりにした彼は何かしらの可能性を感じたのだろうか?

どちらにせよ嬉しいが断りたい様なやりたい様な

しかし半端な気持ちでやって良い、入って良い業界でもない。

半分入った業界、戻れない現実、戻れる未来それら全てが雪乃のため息が止まらない原因。

「よし‼︎」

と言い看護師に行き先を伝え音楽室に向かった。


「音楽室」

その前に立つ雪乃の顔はまるで討ち入りの様な顔をしていた。

だがかれこれ10分以上立っている。

その理由は先客がいたからだ。

それもただの先客ではない。

少しだけ漏れる声に、言葉に耳を傾けると

どうやらマネージャーと思われる人と歩が、楽曲提供に関して議論してる様だった。

そんな所に自分が入ったら歩の事だ、あれこれ自分の事を話すかもしれない。

いや、時間を指定してる以上、マネージャーと合わせる段取りだったのかもしれない。

あの人ならやりかねない。

そう意を決してノックをしてすぐ中に入った。


「しっ、、しっしつれぇいしまふ。」

言葉は噛み声は裏返り、それだけで緊張が伝わる挨拶で入った雪乃は、今すぐ出たい気持ちでいっぱいだった。

そんな雪乃を他所に歩はピアノの前から大股で雪乃に近付いた。

「入るのが遅い‼︎社会人なら5分前行動‼︎」

そう言う歩に対して「歩さんだけには言われたくない」

と雪乃は返し靴を脱ぎ歩の先に座っている男性に挨拶をした。


男性は柳田(やなぎだ)と名乗り歩を始め他のアーティストの面倒を見ているマネージャーだった。

柳田はにこりと笑い

「君が歩くんから聞いた翼のないヴォーカリストかな?」

うん、どうしたら昨日の今日でそんな尾びれが付くのだろう。


突っ込みたかったがグッと飲み込み嫌味の様に

「ただのヴォーカリストに成り損ねた者です。」

そう言う雪乃の言葉も「謙遜だ」と柳田は言いながらソファーに座る様言う。

「歩くんの話だと作詞もしてるみたいだね。すぐ契約するとか、サインとか言わないから軽く話そう。」


明るく物腰の柔らかい言い方だが

歩とは違った圧力のある発言に雪乃は

「歩さんから聞いていると思いますが、作詞は歌詞とは呼べるレベルではありません。

誰かさんは「一緒に曲を作らないか」とか言ってますけど私はそんな評価をもらえる者ではありません。」

歩をキッと睨みながら、自分は用無しと言わんばかりに席を立とうとした。


誰だってそんな態度を取られたら相手にしないだろう。

しかし柳田はCDを3枚雪乃の前に出した。

「ウチの新しいアイドルなんだけど売れなくてね。

シングルも3曲出してるのに全くヒットしなくて解散寸前なんだけど橘さんはアイドルに興味はあるかな?」

とニコニコしながら半ば強引にCDを押し付けた。

流石は傍若無人、神瀬 歩のマネージャーだ。


「シリウス」ー3人組の女性アイドル

全員が星が好きな事からその名がつき暗闇で1番輝ける様願いが込められている。

だが名前を裏切る様な現実。

アイドルは2次元しか興味がない雪乃は、受け取ったCDを柳田に返した。

「ここCDプレイヤーないんで自分ので聴きます。」

そう言いながら雪乃は自分のスマホでシリウスの曲を聴き始めた。


シングル3曲ー最低でも15分はかかる。

それに雪乃の事だカップリングも聴くに違いないと思い

歩は部屋に置いているコーヒーマシーンを操作し3人分のコーヒーを用意し始めた。

2人分を入れ終わるかぐらいで突然大きな声が聞こえた。

その声の主は雪乃であった。


彼女はたったの5分弱でイヤホンを引き剥がす様に取り柳田を見ていた。

「シリウスのボイトレのトレーナーは何してるんですか⁉︎

こんなの売れる歌でも、そもそも唄でもない‼︎聞くに耐えない‼︎ボイトレを録音して再度持ってきて下さい‼︎」


決定権は雪乃にはない。そもそも作詞が決まったわけでも契約しているわけでもない。

しかし、ワザと諦めてもらう様に雪乃が言ってないのは

柳田も歩も分かっていた。

それこそ柳田が曲を聴かせた目的だった。


雪乃が事務所に所属し新人育成としてプロのトレーナーに教育されていたのは、歩から聞いていた。

そして彼女が唄った曲を録音していた歩から聞かされていた。

仮にもマネージャーだ。

色んな才能を持つ者と関わる。

自ずと才ある者も分かってしまう。


雪乃の才能を逃したくはなかった。

歩とは正反対だが良い化学反応が起きると予想していた。

柳田はCDを鞄に納めながら

「僕は今日、これから東京に帰って社長とトレーナーと話してくるから契約書はその時に。」


完全にはめられたと言わんばかりの雪乃に怒られる前に柳田は部屋を出た。

新しい予感にワクワクしながらクッションを投げられてるであろう歩を想像し柳田は東京に向かった。

やっと続きが書けました。

この後も2人の物語は続きます。

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