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モノクロの旋律の中で  作者: 暁 楓
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モノクロの出会い

初めまして。

暁 楓と申します。

初のオリジナル小説なので拙い文書もあると思いますが

皆さんの感性で楽しんで頂けたら幸いです。

これはある少女の

筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう)ー別名ALSー

と診断され病と闘う少女、(たちばな) 雪乃(ゆきの)

の物語


少女はごくありふれた一般家庭に生まれた。

父と母、年の離れた姉が2人。

大人の中で少女は育った。

物心ついた頃には年の離れた姉と同じ事をする事が多かった。


月日が流れ少女が小学校2年生になった頃から

クラスメイトからいじめを受ける様になった。

初めは無視など軽いものだったが

小学校6年生になった頃から悪化しクラスメイト全員が遊びの様に少女の心を蝕んだ。

両親に言っても、教師に言っても一向に良くならない環境で少女は教室に行かなくなった。

毎日、保健室に行って教室に行っては早退する。

そんな少女を養護教諭の先生が声をかけた。


「最近ここに来ては早退するけど何かあったの?」

その言葉は孤独と闘い続けていた少女の心を開かせた。

少女はぽつりぽつり話し始めた。

「いじめられてるの。初めはあの子だけだったのに、皆んな面白がって菌呼ばわりする。

先生に言っても親も聞いてくれなくて学校が嫌だ。」

泣き噦る少女に養護教諭の先生は保健室に通う事を提案した。

少女は保健室で勉強し時には校長先生と話もした。

少女は大人の中で育ったが故に視野が広く校長先生との話が好きで笑顔が戻り始めた。


しかし少女をいじめる子は近所の同級生。

登校は班が同じの為少女にとっては地獄の様だった。

気軽に話しかけてくるが癪に触ると質問攻めで

日に日に少女の中で殺意が芽生えた。

いじめの張本人を殺す事、家族全員を殺す事

そして自殺する事。

そんな事を考えてたある日姉が聞いていた音楽に涙が止まらなかった。

嘘偽りがない歌詞に胸を打たれ、自分が変わるのではなく手段を変える事、周りに協力を求める事時には利用する事全てを音楽に教わり救われた。


周りの協力を得て少女のいじめはなくなった。

そして自分を救ってくれた音楽に憧れ始めた。

少女は高校、専門学校を卒業し自分と同じ境遇もしくはそれ以上の人の光になりたいとミュージシャンを目指す様になる。

アルバイトをしながらボイストレーニング教室に通い

バイト先の上司にパワハラを受けながらも少女は音楽を糧に闘った。

その頃に自律神経失調症になりかけてる事を知らずに。


月日は流れ少女が25歳になったある日、父親が病気により他界する。

少女の心は崩れた。

年の離れた姉、話が合わない母親

居心地の悪い家の中で唯一の話し相手の父が亡くなったのだ。

少女は夢を諦めた。

そして仕事に没頭した。

その結果少女は身体表現性障害(しんたいひょうげんせいしょうがい)になってしまった。

会社を退職し少女は音楽をまた目指す事を決めた。


オーディションを受け事務所に所属したがグランプリではない

少女に金銭的な支援はなく金銭面で1年で事務所を去る事を決意した。

声は良いと、根性はあるから戻ってきて欲しいと言われ

少女はトレーニングを欠かさず戻る日まで仕事に専念する事にした。


時はさらに流れ少女が31歳になったある日

ストレスで13キロも痩せ物を良く落とし始めた。

元々、握力は弱く何とも思わなかった。

それが筋萎縮性側索硬化症の初期症状とも思わずに。


少女が筋萎縮性側索硬化症を疑い始めたのは初期症状が出始めて半年が経った頃だった。

文字が書きにくくなったのだ。

3行も文字が書けない。書けても読み辛い字しか書けなくなっていた。


そして脳神経外科に行った。

先生がパソコンから目を離し

「ご家族の方を呼んで下さい。」

と言った時、少女は悟った。


少女は姉は仕事中、母親はまるで話にならないと呼ばないと拒否する。

なのでそのまま自分にだけ話してもらう様言った。

「どんな結果にしても私は受け止め驚く事はありません。

どうか私だけに話してくれませんか?」

少女の言葉に迷った医師は言葉を発した。


「橘さん、貴方の病気は筋萎縮性側索硬化症と言うものです。」

その病名を聞き少女は説明を待たずに言った。

「別名ALS、高齢者に多く運動神経に異常が出て筋肉が痩せやがて呼吸が出来なくなる。

特定指定難病でしたよね?」


医師はゆっくりと頷き入院をする様少女に言った。

だが少女は拒んだ。

「入院する気はありません。私の計算が合っていれば後1年ぐらいしか生きられない。

それなら働いてお金を残したい。先生の前で言う事ではないですが私は死を望んでます。怖くありません。」


そう、父を失った少女はいつの間にか死を望んでいた。

医師は説得し、そしてある提案をした。

「筋萎縮性側索硬化症を研究している大学病院がある。

そこに入院をするのはどうだろう?

その病院は君の様に難病を抱えた患者さんが入院する特別病棟がある。」


少女は無条件ではないだろうと思い意地悪な質問をした。

「私にモルモットになれと?」

医師は困った顔をした。

「モルモットなんてそんな人権がなくなることはないよ。」

少女は笑いながら

「冗談ですよ。ただし条件が合えばの話ですけどね。」

笑顔で答えそして少女は入院をした。


少女は普段通りの生活と行きたい所に行けるまで

生活に支障が出る薬物投与をしない事。

全てが終われば来世に残せる研究をして良いと条件を出した。


入院初日、担当医師から紹介したい人がいると言われた。

「橘さんはニュースを見たりクラシックを聴いたりするのかな?」

「いいえ。ここ数年はアニメばかり見てますし聴く曲もアニソンばかりですね。」

その言葉に担当医師は笑った。


「そうか、それなら問題ないだろう。今から紹介する人は少し変わっててね。

騒いだりする人が嫌いなんだ。」

と意味深な事を言った。

「そうですか。」と言い

行けばわかるだろうと思いそれ以上は聞かなかった。

そして担当医師が足を止めた。


「僕が開けたらすぐ入ってね。」

不思議に思い上を見るとそこは「音楽室」と書かれていた。

担当医師がノックをして少ししてから男性の声がした。

「どうぞ。」

扉が開かれ少女はサッと入った。


担当医師は明るく話しかけた。

「どう?(あゆむ)くん。進み具合は?」

歩と呼ばれた男性は顔を上げ首を横に振った。

「担当外なんだ。進むわけないですよ。それでその子は?」

少女を見て尋ねた。

「ああ、彼女は今日から入院する橘さんだよ。歌ったりピアノを弾いたりするから、ここの場所と歩くんを紹介しようと思ってね。」


担当医師の言葉に眉間に皺を寄せ少女を見る。

慌てて自己紹介をした。

「今日から入院する橘 雪乃です。歌いに来ることが多いと思うので宜しくお願いします。」

少ししてから歩と呼ばれた男性が口を開いた。

神瀨(かんぜ) (あゆむ)です。朝からピアノを弾いてる事が多いから。」


簡単な自己紹介。

まあ、他人だしそれに患者同士。明日どうなるか分からない者に優しくはないかと少女は思った。

「神瀨さんがピアノを弾くなら私が歌ってたら邪魔ですね。」


その言葉に神瀨さんは睨んだ。

「苗字で呼ばれるのは嫌いなんだ。名前で呼んで。」

「はぁ、では(あゆむ)さんとお呼びします。」

まるで何かを拒絶する様な淡々とした言い方だった。


その言葉に歩さんは頷き尋ねた。

「俺の事は知らないのか?それとも知っていて遠慮してるのか?」


担当医師は笑って答えた。

「彼女はアニソンが殆どでアニメを見る事が多いそうだ。

だから歩くんの事も知らないよ。」

少女は失礼な事をしたのかと思い担当医師と歩さんを交互に見る。

「神瀨 歩 『天界の音』と呼ばれる現役ピアニストで君とは1歳しか変わらないよ。」


少女は納得した。

そんな有名人が苗字で呼ばれたくない訳

ファンも沢山いるだろう。騒がれると嫌だと思う。


だって彼は病気で入院しているのだから。

仮にも芸能事務所に所属していたから分かる。


「それなら余計私がいたら邪魔ですよね。他に歌える場所はありますか?」

少女の問いに「騒がれなかったのは君が初めてだ。ねぇ、何でも良いから今から歌って。」

と歩は言った。


「アニソンしか歌えないですし

ええっと。それにさっき少しピアノ弾いてましたよね?

聴いた事のない曲ですが、少し迷いがある音ですね。」

初対面のそれも現役ピアニストに言う事ではないだろうが

少女は話を逸らすのに精一杯だった。

そしてその言葉にガタッと立ち上がり歩さんは少女の両肩を掴んだ。


「ピアノを弾くって言ってたね。音楽経験があるのか?」

勢いよく言われ少女は混乱した。

「ええっと、、ピアノは幼い頃少しだけで今は音符は読めません。

なので弾けるかと言われれば弾けませんが、歌う時に音が分からないので確認でピアノを触ります。」

歩さんは少し考えて

「ピアノはこの際良いから歌ってくれる?」


全く引き下がる気がない歩さんに呆れ少女は

パッと思い付いた好きな曲をワンコーラス歌った。

歌い終わると歩さんは

「今までデビューとか考えなかったのか?デビューしてないのが不思議だ。」

とボソッと呟いた。


ハッキリ聞こえたその言葉に少女は観念したかの様に

「1年間所属してましたけど金銭援助がなかったので契約更新はしなかったんです。

でも諦めてもないから、ボイトレだけじゃなく作詞も出来る様になりたいと、思った事を書き留めてます。」


現役ピアニストの前で胸を張って言える事ではないだろう。

少女は困った様に笑いながら

「でも書き方を教わったわけではないので歌詞と呼べはか分かりませんけど。」

あははっと軽く笑う雪乃に歩は

「思った事を書き留めて書き続けるのは簡単じゃない。

それこそ言葉に意味を込めてるからじゃないのか?」

そう言いながら

「取り敢えず見せてもらっても良いかな?」

「傍若無人」と言うのはこう言う人の事を指すのだろうか?と思いつつもスマホのメモに全てを書いた歌詞を見せた。


目を通した歩さんはピアノの上に散らばった楽譜を手に取り少女のスマホと交互に見た。

そして勢い良く顔を上げ

「見つけた‼︎俺の言葉‼︎雪乃、俺と一緒に曲を作ってくれないか?」

突然告げられた言葉に少女は

「はい?」と一言


そう、この出会いこそのちに音楽業界を騒がせるグループの誕生だった。

ここまで読んで下さってありがとうございます。

最初は短編として書く予定でしたが

病気をテーマにし難病と闘う方達

それぞれの人生。始まりと終わり、そして始まり

それらを書くにあたって短編では収まりきらなかったので

3部ぐらいで書こうと思ってます。


果たしてこれから難病を抱えた彼女らが何を思い、何を残し

何を見るのか、最後までお付き合い頂ければ幸いです。


それではまた次回お会いしましょう。

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