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女の子になった王子様からは逃げられない!  作者: 佐々木尽左


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幕間 暗き者

※前話「戦う前の相談」と同時更新しています。ご注意ください。

 王家の宝物は基本的に宝物庫で保管されている。ここには価値の高い品々が多数あるが、その価値とは歴史的価値、金銭的価値、そして希少価値が高いという意味でだ。この中にはもちろん魔法の道具も多数含まれる。


 ただし、王家の所有する宝物がすべて安全とは限らない。様々な経緯があって手放せない危険な宝物もある。そういった曰く付きの宝物はどれも王宮の地下に保管されていた。


 もちろん、そんな保管庫なので警戒も厳重だ。警備の騎士は出入り口の扉をしっかりと固めており、魔法による仕掛けも設置されていた。


「ふむ、あの女の話は本当であったか」


 誰もいないはずの王宮地下の保管庫に、ぬるりと影が浮かび上がる。それは最初一塊であったがすぐに人型となり、しばしその場で動かずに呟く。


「どのような強力な仕掛けであろうとも、タネさえわかっていれば対策も対抗も可能。それを王族から訊けるとは、屈辱にまみれても仕えてみるものだな」


 顎に手をやりながらゆっくりとその黒い人が歩き始める。


「ネベルとドゥンケルは逝ってしまったが、ここに侵入できるのならばその死を慰めることもできよう」


 かつて人の身でありながら魔王軍へと寝返った者達がいる。理由は様々だが、こうした者達は、主に人間側の情報を収集したり暗殺や破壊工作をしたりしていた。そして、魔王軍崩壊後は討ち取られたり姿を消したりしている。


 シャトゥン達三人もそうした者達だった。人間側にも後ろめたい者達がいることを知っていたので、かつてのコネを活かしてバールケ家への登用の機会を得たのだ。


 もちろん扱いは最低である。雇用主が自分達を使い潰す気でいることは明白だった。それを承知の上で仕えたのだ。目的を果たすために。


「魔王様を討ち取ったクリストフを直接討ち取ることができなかったのは残念だが、ここに入ることができるのならばまだ手はある」


 安置されている危険な宝物に視線をやりながら、シャトゥンは思いを口にする。目的の物はまだ見つからない。


「まさか息子かわいさに保管庫へ忍び込めと自ら指示するとは、正直驚いた」


 今回シャトゥンが受けた指示は、王宮地下の保管庫から指輪を拝借せよ、というものだった。本来ならば国王の許可を得てからでないと入れないが、雇い主の都合上、正規の手順は踏めない。そのため今回この犯行を命じられたのだ。


 やがてとある場所で立ち止まる。びっしりと文字が刻まれた小さい指輪入れの箱をシャトゥンが手に取った。そして、じっと見つめながら教えられた解封の呪文を呟いて箱を開ける。中には、金と銀の針金を結い合わせたような指輪があった。


「あの女、これが本来どういった物か実は知らんか、勘違いしておるのであろうな」


 この指輪は激情の指輪と呼ばれ、己の感情を糧に身体能力を向上させるものだ。もちろん感情が強いほど能力も上がる。ただし、長時間使い続けると精神を病み、最悪廃人になってしまう。


「この保管庫には便利な魔法の道具も眠っているという認識か」


 こぼれる笑みを隠そうともせず、シャトゥンは指輪を目の前の棚に置いた。そして、懐から取り出した小袋を開け、小さい黒い球を取り出し、指輪に押しつける。しばらくして手を離すと、黒い球は指輪に付いたままとなっていた。


「我等が偉大な主よ、仮初めの依り代を受け取り給え」


 シャトゥンが呟くと、黒い球は波打ち始め、徐々に指輪へと溶け込んでゆく。やがて黒い球は完全に消えてなくなり、何事もないような様子で指輪が箱の中に鎮座していた。


「これでよし。あとは届けるだけ」


 箱の蓋を閉じ、シャトゥンは懐へそれをしまう。


「ククク、愚かな女め。憎きブランケンハイムめ。これですべてを失うがよい」


 静かに憎しみのこもった笑いを顔に浮かべながら、シャトゥンは再び人型から黒い塊となり、やがて影となって保管庫から消えた。

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