表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/33

使い魔

 俺はまだ踏み込まれていないだろう宿屋を発見した。その宿屋は、客が出入りの際にごく普通の顔色をしていた。会話の内容も他愛ないものだ。宿屋の内部の声も同様だ。

 踏み込まれた宿屋ならば、嫌な経験をしたはずだ。顔色に陰りがあってしかるべきだし、恨み言の一つも言っているだろう。


 俺はハイド状態で、隣の建物の屋上にのぼった。ここなら、カラスが来ようが黒猫が来ようが丸見えだ。


 俺は辛抱強く待った。

 三時間ほど待ったところで、衛兵の鎧の音が聞こえてきた。横柄な態度の会話も聞こえてきた。衛兵の数は十数人。取り締まりにしては結構な人数だ。

 彼らは宿屋の周囲を取り囲み、窓から逃げる人間を警戒している。そして、三人が宿屋に踏み込んだ。

 宿屋の中からは衛兵が剣を抜く音が聞こえた。主人との会話が聞こえてくる。衛兵は「レオナ」という人物を探しているらしい。

 なんで俺の名前が割れてるんだよ。怖いよ。ホラーだよ。

 しばらくすると、衛兵が客室を改め始めた。ドアを開けると全員に動かないように指示し、部屋を荒らし始めた。

 客の荷物をことごとく床にぶちまけている音がする。

 こんなやり方では衛兵へのヘイトがたまるばかりで、いいことは一つもない。衛兵のボスは衛兵に特権を持たせて忠誠心を得ているのかもしれない。理由はどうあれ、彼らのボスはろくでもない人物だ。ひょっとすると、シロツグがボスかもしれない。

 しばらくすると、踏み込まれた部屋の窓が開いた。そしてどこからともなくカラスがやってきてその窓に吸い込まれていった。

 これは偶々というわけではなさそうだ。今のカラスがシロツグの使い魔だという可能性は高い。

 衛兵が急に丁寧な口調で話し始めた。その相手の声は聞こえない。相手はおそらくカラスだ。このカラスとカラスの主――シロツグ――が彼らのボスに違いない。

 俺が魔術師だったら使い魔の正体は誰にも明かさないだろう。使い魔は正体がわからないからこそ、偵察の任務に向いている。正体をオープンにしているということは、自分のウイークポイントをさらしているということだ。シロツグは、おそらくよほどの自信家なのだろう。

 ここが正念場だ。使い魔を殺すには今しかない!

 使い魔はファイアーボールを撃てるかもしれないが、その隙も与えず殺せれば問題ない。衛兵の方は雑兵だから、俺をとらえることはできまい。

 俺は、ハイド状態でダガープラス五を握りしめ、宿屋のこちら向きの窓が開くのを待った。


 衛兵がこちら向きの部屋のドアを開ける。

 客の荷物を床にぶちまける。

 衛兵が窓を開ける……。

 カラスが飛んできて窓から向かいの部屋に入る。今だ!


 俺は向かいの部屋まで飛ぶと、音もなく窓枠を蹴った。

 カラスも衛兵もまだ俺に気づいていない。

 部屋の中に一歩踏み込みバックスタブでカラスにダガーを突き刺した。


 カラスの肉片が音もなく爆散する。


 すぐに入ってきた窓から飛び降りる。

 部屋の中の衛兵たちは何も言っていないようだ。突然のことに言葉を失っているに違いない。

 包囲している衛兵もまだ反応できていない。


 俺は衛兵たちを振り切って全力で走った。

 逃げて逃げて逃げまくった。

 二キロくらい逃げた。


 そして、適当な裏路地に入って少し休むことにした。


 ついにやった。シロツグの使い魔を殺した。

 胸に手を置いて、荒くなった呼吸を落ち着ける。

 やればできるじゃないか。


 だが、冷静に考えなければいけない。

 使い魔を殺したことで、完全にシロツグの怒りを買ったことだろう。これからは本気のシロツグと戦わなければならない。

 ウイッシュを使ったシロツグが目の前に出現する可能性もゼロではない。

 魔術にも耐性があるハイド状態を日常生活でもキープし続ける必要がありそうだ。

 寝るときは……どうしたらいいんだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ