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臨検

 俺は変装して魔術師ギルドの張り込みを始めた。ハイド状態をキープしながらシロツグの塔を監視している。

 このハイド状態は見破りの魔術を使っても暴けないということが実験の結果分かっている。俺は路傍の石となった。


 俺は塔を出入りする人々を見て、あれこれ考えていた。特に、シロツグが次にとる一手について考えていた。シロツグは俺をおびき出すために、何かやるだろう。その何かが分からない。


 シロツグは俺たちが全面対決を望んでいると考えていないだろう。高レベルの魔術師がたかがシーフを恐れることなどあるはずがない。だから、俺たちが逃げることを予想しているだろう。

 だが、昨日のシーフの公開処刑は、明らかに俺を意識してのことだ。俺がまだこの街にいることを見越して処刑を公開したはずだ。


 俺がまだこの街にとどまっていることは、どうやって知ったのだろうか。そう考えるとオーガの一件が思い当たる。

 あの時オーガに傷を負わせたダガーが盗品であるとばれたのかもしれない。ダガーはやや派手なデザインで、直接見た人なら間違いなく覚えているだろう。

 すると、これらの情報は衛兵から得たものに間違いない。それに加えて、オーガを尋問すれば、戦っていたのがシーフだと容易にわかるだろう。


 悪く悪く考えてしまうが、オーガの一件に俺が関与しているとバレている可能性はある。オーガと戦っていたということは、盗みの直後に逃げていないということだ。まだこの街にとどまっている可能性は高い。

 そこで俺を挑発するために公開処刑をしたというわけか。


 衛兵には俺とさっきゅんの素顔がわれている。俺が素顔でのこのこ出て行ったら、即座に逮捕されていただろう。いや、手配書には人相書きはなかった。衛兵には俺の顔は思い出せなかったのかもしれない。


 だめだ。一人でいると悲観的な考えしか出てこない。


 シロツグは俺たちにウイッシュリングを奪われている。だから、俺たちがウイッシュリングに何を願うかも想定済みだろう。そのうえで、使い魔を出してくる可能性はあるだろうか。それは未知数だ。


 俺だったら、シーフに対する弾圧を強めつつ、使い魔で情報収集をするだろう。使い魔は自律型で魔術も使えるらしい。視力や聴力をあげる魔術を使われたらどうだろう。宿屋での打ち合わせも筒抜けになっているかもしれない。


 同時にシロツグを追い詰めすぎてもまずいと感じていた。

 シロツグのもとにはウイッシュリングがまさに売るほどある。ウイッシュを使って来られると厄介なことになる。



 近くでカラスがごみをあさっている。カラスを見るだけで、シロツグの使い魔ではないかとかんぐってしまう。

 やはり、ウイッシュで「魔術を見破る目を永続的に手に入れる」と望んだ方がいいんじゃないだろうか。



 そうして長時間張り込みをしたが、使い魔もシロツグも衛兵の出入りもなかった。

 昼過ぎまで粘っていると、俺を呼ぶ声がした。アンリエット殿下のささやき声だ。地獄耳の俺には小さな声でも聞こえてくる。

「レオナさん。宿屋が衛兵に踏み込まれましたわ」

 それは大変だ。俺はハイド状態のまま移動し、アンリエット殿下の姿を探した。

 殿下は近くの商店で買い物をするふりをしている。

 俺はハイド状態のまま殿下の腕をつかみ、ゆっくりと路地裏へと誘導する。

「さすがレオナさん。全く気配がしませんのね。腕をつかまれるまで全く気付きませんでしたわ」

「ああ、ハイドを使ってるときは人の目を引き付けにくくなるらしいです。その辺の石ころ程度の存在感らしいです。……それより、宿屋が踏み込まれたっていうのは本当ですか?」

「本当ですわ。私は向かいの酒場で昼食をとっていたので難を逃れましたが、荷物は荒らされているでしょうね。宿屋に戻るのはまずいと思ったので、直接ここまで来ましてよ」

「ありがとう。衛兵はどうやって俺たちの宿屋を突き止めたんでしょう。それともすべての宿屋をしらみつぶしに踏み込んでいるんでしょうか」

「それはわかりませんわ」

「衛兵が踏み込むときに、近くに使い魔の姿はありませんでしたか」

「カラスがいましたわ。使い魔かどうかはわかりませんが、衛兵が次々と部屋の窓を開け、そのたびに窓からカラスが出入りしていましたわ」

「わかりました。衛兵はすべての宿屋に踏み込んでいて、それをカラス型の使い魔が見張っていると考えましょう。ここの見張りは中断して、どこか踏み込まれていない宿屋を見張ります。カラスが来たら俺が始末します」

「はい。私はどうすればいいでしょう」

「昼食をとった酒場で、セスカとさっきゅんが宿屋に入らないように見張っていてくれませんか」

 異世界には携帯がない。なんと不便な世の中か。

「わかりました。合点承知の助ですわ」

 殿下のユーモアだ。

「ありがとうございます。力が抜けました。まだまだ戦えそうです」

「ご武運、お祈りしておりますわ」

「それじゃ……」

 俺はハイド状態になり、まだ踏み込まれていない宿屋を探した。

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