王女殿下の休日
セスカはアンリエット王女に根掘り葉掘り質問したらしい。アンリエットは市内見物をさせてもらう約束で、すべてを話したらしい。
セスカはその情報をもとに、計画を立て直している。その間俺は邪魔らしい。
で、俺は市内見物の付き添いらしい。アンリエットはセスカに借りた服で、ボーイッシュな女性市民の変装をしている。俺も一応市民に変装した。
「お嬢様はどこに行ってみたいですか?
「泥棒さんのギルドを見てみたいですわ」
「シーフギルドは一般人の方には秘密になっています」
「レオナさんは泥棒さんじゃないのですか?」
「……よろしければお連れ致します。しかし、入り口は別の店でギルドホールは秘密の扉の奥です。ギルドホールまではお連れしかねますが」
「ざんねんですわ。でも、入り口のお店まで連れて行っていただけませんか?」
「わかりました。ついてきてください」
俺はシーフギルドに向けて歩き出した。
「レオナさんレオナさん。市民の方からは、私たちはどう見えているんでしょうね」
「友達か……、兄妹か。そんな感じじゃないですか」
「恋人同士に見えるにはどうしたらいいでしょう?」
「恋人同士に見られたいんですか?」
アンリエットは満面の笑みを浮かべて言った。
「はい」
すごくかわいい子だ。
「じゃ、じゃぁ、腕を組んでください」
「まあっ。貴族も平民も一緒ですのね」
アンリエットは俺の腕に自分の腕をからめてきた。
「これで、恋人同士ですね」
本当にかわいい。セスカもこのくらい可愛げがあればなぁ。
シーフギルドでは意外なことが起こっていた。
五十人くらいの衛兵が、ギルドの入り口である古本屋を捜索している。
「お嬢様、大変です。衛兵がギルドの捜索をしています」
「何が起こっているんですの?」
「わかりません」
古本屋からは、手かせをつけられたシーフと思われる人物が次々と出てきた。彼らは衛兵に連れられて、馬車に乗せられている。
俺はヒアノイズを使った。
シーフや衛兵の声を総合すると魔術師ギルドの要請でシーフギルドを捜索し、シーフは全員拘束し、ギルドは閉鎖するとのことだ。
シーフの拘束は終わったのか、古本屋には火が放たれた。いくらシーフが憎くても、ここまでするものなのか。
捜索の指揮をとっているのは魔術師の「シロツグ」という人物らしい。衛兵が逐一状況をシロツグに伝えている。
シーフギルドに登録しているすべてのシーフが拘束の対象になるようだ。登録簿がシロツグに渡されている。
これには心あたりがあった。
俺が魔術師ギルドからマジックアイテムを盗んだことが原因だろう。手口はシーフのもので間違いないからだ。
どうやら、シーフを全員逮捕してその中から犯人を見つけようということらしい。いくら何でもやり方がめちゃくちゃだ。
「お嬢様、あそこのシロツグという魔術師に見覚えはありますか?」
「ええ、いつもお城にいる魔術師ですわ」
魔術師ギルドのギルドマスターにして宮廷魔術師の「シロツグ」だ。
「ここはまずいです。離れましょう」
「はい」
俺は冒険者ギルドに向かって歩いていた。冒険者の情報が集まる冒険者ギルドならば、今回のことも詳しく分かると考えたからだ。
「お嬢様、あそこで何が起こっているのかお分かりですか?」
「あの魔術師――シロツグは気が短いので有名ですわ。泥棒さんに何かされて、腹いせにシーフギルドごとつぶそうとしているんだと思いますわ」
「するどいですね。もう少し考えてみるとどうなりますか?」
「シロツグは宮廷魔術師ですわ。シロツグから何かを盗んだり、だましたりすることは難しいと思いますわ。でも私、それをできる泥棒さんに心当たりがありますわ。宮中の庭までやすやすと侵入した泥棒さん。王女をさらって逃げた泥棒さん。それは、レオナさんじゃありませんこと?」
「あいかわらず冴えていらっしゃる。このピンチを切り抜けるためにはどうすればいいと思いますか?」
「まず、情報を集めましょう。シロツグが次にやりたい事が分かれば、次に打つ一手も見つかるかもしれません」
「そうですね。情報収集しましょう。少し先を急ぎますね」
「はい」




